顎鬚仙人残日録

日残りて昏るるに未だ遠し…

梅花繚乱 ②

2018年03月16日 | 水戸の観光
例年より低い温度が続き、咲き遅れていた水戸の梅まつりですが、ここへきて暖かい日が続いたので遅れを一気に取り戻し満開を迎えました。びっしりと隙間なく咲く桜は離れても楽しめますが、梅は近くでそれぞれ違った咲き方の一輪一輪を眺める楽しさもあります。

「玉英」は、良質な実を収穫する実梅です。青梅市原産で、ゆかりの河合玉堂と吉川英治の名前をとって名付けられたと聞いたことがあります。(偕楽園)

「古金襴」と言うのは、室町中期に中国から渡来した豪華な織物・金襴のことです。紅筆性で、蕾や花弁の先が紅色を帯びます。(弘道館)

大きい花で知られる「白牡丹」と「黒田」を500円玉(直径26ミリ)と一緒に撮ってみました。「武蔵野」、「滄溟の月」「江南所無」 などが、大輪の代表です。(偕楽園)

小さい花の代表が、「米良(めら)」と「矮性冬至(ちゃぼとうじ)」、米良は江戸時代から梅花最小輪とされてきました。どちらも野梅系で結実品種です。(偕楽園)

「八重唐梅」はスモモ系梅でも結実します。日本に導入された紅材性梅の初期の品種と図鑑には載っています。(偕楽園)

裏紅という咲き方の「内裏」は、三重の花弁の外側ほどより紅くなり、ほんのりと透き通って繊細な美しさを醸し出します。さすがに花梅の代表、ほとんど結実しないようです。(弘道館)

紅色の濃い梅は、「本紅」といいます。「鹿児島紅」はその代表的な梅、スモモ系の紅材性、結実しません。(弘道館)

「八重茶青」は野梅系、梅田操「ウメの品種図鑑」では八重茶青(Ⅰ)と(Ⅱ)に分かれており、こちらは(Ⅰ)、梅花集、梅花名品集に伝わる名品と載っています。(弘道館)

紅色と白色が同じ花の中や、隣同士の花や、枝ごとなどで咲き分ける品種の代表が、「思いのまま」、「輪違い」ともいい最近の園内の名札はそうなっています。「思いのまま」の方がいいと言われたこともありましたが、確かにその意見に賛成です。(偕楽園)

紅白咲分けの品種は他にもあり、この「五色梅」は枝に黄色い筋が入る特徴があります。野梅性八重、五色の色に咲き分けるとでもいう名前にしたのでしょうか。(偕楽園)

底紅という咲き方は花弁の中心が赤くなります。「関守(せきのもり)」はさらに赤い筋が入り、よく似た「東雲」も偕楽園にあります。「鈴鹿の関」も同じスモモ系の紅材性、いずれも結実します。どちらも名前に「関」が付く理由を、名を付けた人に聞いてみたいものです。(偕楽園)

筋入りとは、本来の枝の色のほかに黄色などが枝に長い筋となってあらわれることをいい何種類かの品種があります。弘道館の白壁外の通路にある垣に囲まれて完全に横たわった梅は、「筋入り春日野」ではないかという庭の花たちと野の花散策記ブログの雑草さんの見立てです。確かに筋と紅い絞りが見えています。(弘道館)

※雑草さんからコメントがあり、横たわった梅(臥龍梅)は枯れており、その跡に植えた梅が「筋入り春日野」ということでした。先代を肥料にして、新しい品種が育っている写真を添付しました。

番外編。梅林の下ではイヌフグリの群落が青く染めています。可憐な花で数個では目につきませんが、まとまって梅に負けじと咲き誇り歓声を浴びています。(偕楽園)

1月から咲き始めた梅花も「雪裡春を占む天下の魁」の役目を全うして散り始め、世の話題は桜に移り始めました。

白梅や老子無心の旅に住む  金子兜太
万蕾の白梅にして紅きざす  鷹羽狩行
むすめらは嫁ぎ紅梅さかりなり  山口青邨