横道車庫は牡丹江から100km、ハルピンから200kmの位置にあり、周囲には全く何も無い。
週末まで出番の無い私は、ここであと3日待機する羽目になってしまった。
宿舎になった山荘は山の麓に孤立していて、近隣の集落まで10kmあり、正面の湖に掛かる細長い橋と、それに連なる1本道だけが唯一の出入り口になっている。
その外観も、まるでアガサ・クリスティの小説に登場するサスペンスドラマの舞台の様な建物だが、暖房の効きが悪く、恐ろしいほど寒い。
TVは3チャンネルしか映らず、ネット環境も無く、娯楽施設といえば、でこぼこのボールと、ところどころ欠けたキューだけがあるビリアード台のある娯楽室だけだ。
その上食事は、共演者の誰かが精進料理と言っていたほど質素なものだった。
台詞の練習にはもってこいの環境だ。