ポケットの中で映画を温めて

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キム・ギドクの『ブレス』を観て

2015年09月21日 | 2000年代映画(外国)
韓国映画の『サマリア』(キム・ギドク監督、2004年)が劇場上映されて観た時、その斬新な作りに感銘を受けて、
それ以後この監督の作品は意識するようにしている。
しかし、まだまだ観ていない作品も結構あり、それで今回『ブレス』(2007年)を借りてきた。

死刑囚のチャン・ジンは生きる希望もなく、鋭くした歯ブラシの柄で自分の首を刺して自殺しようとした。
娘が一人いる主婦のヨンは、偶然に夫の浮気の証拠となる髪留めを車の中で見つけた。
そのヨンが、テレビで死刑囚チャンのニュースを見、憐憫の情のためか彼に興味がわき、面会を求めて刑務所に行く。
面会を許されたヨンは、チャンに何をしてやれるかと考え、その後、何度も刑務所に行く。
チャンの方も徐々に生きることにぬくもりを感じ、やがて二人は愛を抱き始めるようになった。
しかし、二人の関係を夫が知ることになり・・・・

自殺未遂で声を失ってしまったチャン。
夫に対して、決してしゃべらないヨン。
しゃべらないことで、その二人の心理を表現する映像。
この会話のない愛し方、接し方は『うつせみ』(2004年)と共通する。
『うつせみ』の場合は、もっと究極的な愛の表現方法だったとしても。

それにしても、最初は小さな穴が開いているガラス越しの面会だったのが、
2回、3回と面会が重なると、チャンは手錠をかけられたままで係員も同席していたとしても、部屋の中での面会となる。
そして、最後にはとうとう身体を求めあうようにもなってしまう。

韓国の刑務所って本当にこんな風なのかな。
保安課長の権限でそれが許されてしまうなんて、何が何でもチョットやり過ぎではないかな。
おまけに、監視カメラのモニターを覗いているこの保安課長は、顔が写らないだけに異常な悪趣味の持ち主みたいで不気味な印象を与える。
と言っても、作品には何の影響も与えないけど。

ラストが甘いというか、突っ込みの足りなさが作品の評価を下げていると思うけど、
私は「それでもまあいいか」と満足してしまう。
さすがにキム・ギドクらしい映像だな、またひとつギドクを観てしまったなという余韻が感想として残る。

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