原野の言霊

風が流れて木の葉が囁く。鳥たちが囀り虫が羽音を揺らす。そのすべてが言葉となって届く。本当の原野はそんなところだ。

面白い!かな?

2011年12月02日 08時18分19秒 | ニュース/出来事

 11月28日(新聞では29日に掲載)にニュースが流れた。「白い恋人」で人気となった菓子メーカー「石屋製菓」が大阪の吉本興業とそのグループを提訴したという。白い恋人をもじった菓子「面白い恋人」の発売停止を求めたものである。なんとも大阪人らしい発想の商品開発であった。洒落や冗談がDNAに埋め込まれ、それが大阪人の体質とまで言い切る彼らにとって、この程度の冗談は無害という判断だったのだろう。「道産子よ、こんなことで角立てるな、洒落の分からない田舎モンやの!」という大阪の声が聞こえそうだ。だが、冗談も過ぎると、やはり問題だ。大阪人の常識は決して全国的でないことを、もっと自覚すべきだ。

たしかに、大阪の冗談は面白い。だからこそお笑い王国と呼ばれ、吉本芸人をはじめたくさんのお笑いスターを生みだしている。だが、お笑いと言うのはいろいろな幅があり、奥が深い。大阪の笑いと東京の笑いでは全く質が違う。落語一つでも立川談志と柳家小さんでは、師弟といえども全く違う。東京では受け入れられない大阪の笑いもたくさんある。とくに吉本系の笑いは毒があって危険だ。自虐ネタでも売れればいいという根性の据わり方があるとも言えるが、眉をひそめる人も多い。ものすごく面白いと感じる人の数と同じくらいの数が嫌だなと言う人がいるということ。人気が全国的になったからと言って、すべてに受け入れられた、というわけではない。

お笑いの世界とビジネス界を同じ範疇にとらえるのは、やり過ぎ。毒はときに薬にもなるが、毒は毒。使い方を間違えるとアウトだ。今回の場合、明らかに冗談の範疇を逸脱していた。図に乗りすぎた、としか思えない。

根拠がある。「面白い恋人」は商標登録を申請したにも拘らず、今年の2月に「白い恋人」と同一と言う理由で特許庁から拒否されている。ビジネス界は吉本流の冗談や洒落が通る世界ではない。ここで気づくべきであった。にもかかわらず、関西に限らず東京へと販路を拡大したから訴訟となったのである。世話になった暴力団と軽い気持ちで付き合って追放された芸人同様、一般社会では洒落は通用しない。いろいろ常識的におかしくなっている日本ではあるが、あまり見くびらない方がいい。

そんな折も折、この石屋製菓の訴訟にクレームをつけた人物がいた。カレーで街おこしを仕掛ける面白経営コンサルタントと言う肩書の人物だ。名前はO氏(本名を出したいくらいなのだが)。彼の言い分は、

そもそも白い恋人の名前はグルノーブル冬季オリンピックの映画「白い恋人たち」のパクリだから、オリジナル性がない。自分たちは賞味期限切れの商品を出していた過去がある(これは、えらそうに訴訟できる企業か、という意味なのか)。訴訟する前に一言吉本に連絡すべきだった。

要約するとこういう内容である。

言論の自由と言うのは、こういう暴言もふりまかれるということなのだろう。まともな人ならこの言い分のおかしさはすぐに分かる。まず名前のパクリだが、映画のタイトルを利用して、それを商品名にすることは法律的には何の問題はない(本人もそう言っているが、それならあげつらう必要もない)。ジャンルが違って同じ名前の商品だってたくさんある。それをあえて取り上げる論法がまず陳腐。しかも面白い恋人は特許庁から拒否されている名前だ。この違いも分からない経営コンサルでは、実力も知れる。

賞味期限切れ違反はあくまで社内規定。一般的な賞味期限切れ違反などこの会社はしていない。それでもコンプライアンスに添い、発売停止を決めたのである。むしろやり過ぎであったくらいだ。こんなことも知らないらしい。

訴訟の前に一言吉本に連絡するのが筋だ、と言うのにはあきれた。全く逆の話で、本来、このようなパロディー商品を出すけれど、商圏を侵しませんのでお許しくださいと、発売前に吉本が石屋製菓に連絡しなければいけなかった。間違っていたのはどちらか、考えれば分かるはず。それがビジネス界のモラルだ。ジャンルが違ってもそうすべきなのに、同じ菓子食品ならなおさらだ。商標登録ができないほど明確な違反をしている。こんな常識もないコンサルタントとは、情けないの一言。

この騒動に対して、面白い恋人では面白くない。どうせなら「白い変人」にすべきなど、勝手なコメントも流れている。世の中は一つの方向にエスカレートするから怖い。どこかで歯止めをすることが肝心なのだ。

吉本は横浜の「鳩サブレ」をもじった「東京カブレ」と言うお菓子も発売している。ここまで来ると、俗悪テレビ番組並み(テレビを悪くしたのも吉本流の毒の蔓延とも言えるが)。低俗そのもの。毒をまき散らしていると言って過言ではない。

冗談やパロディと言うのは利害関係がないうちはいいが、境界線を越えるとやはりダメージとなる。訴訟の判断は正しい。相手を無視して勝手なことをするのは、やはり犯罪だからだ。

大阪の人は面白く、やさしい。馴染む人には大変心地よい土地柄でもある。しかし、どこか自分勝手なところが時々垣間見える。これが弱点なのかも。それが表われたとも言える。せっかくダブル選挙で、中央にいい風を起こしたのだから、これ以上流れに水を差さない方がいい。

北海道人としては石屋製菓の訴訟は当然だし、遅すぎたくらいだと思う。ただ、うまく収束することを望む(あくまでも相手の出方次第だが)。問題がこじれ、話題になればなるほど、面白い恋人が売れてしまうという効果も生まれるからだ。評判が悪くても売り上げがあればそれでもいいという大阪商人独特の感性がある。なかなか始末に負えない。

昨日(12月1日)のニュースでは、福岡から「赤い恋人」と言う商品が売り出されたらしい。便乗はここまで拡大している。ただこの商品は明太子。同じ食品でもまだ逃げ道はあるようだ。


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4 コメント

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一億総白痴化! (numapy)
2011-12-02 15:20:01
「おもろいやないか、おもろけりゃ良いやないか」
そんな吉本の本音が透けて見えますね。
いまは、差別用語と言われそうですが55年近く前に、大宅壮一が喝破した「一億総白痴化」現象が現実のものになりつつありますね。吉本はその中心的存在。
TVも陵辱してしまった。その中に自分もいると思うと、何だか情けなくなります。
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吉本的なるもの (原野人)
2011-12-02 17:15:55
ま、何かのはやりなんでしょう。目くじら立てるのも大人げないとは思うけど、この吉本的なやり方はやはり度が過ぎると思いますね。
悪乗りも過ぎると、冗談ではすまされない。
どうも、大阪の人はその限界線があまり分からないように思います。
それが吉本的なのかも。いやはやです。
若い人ののりにもそんなことを感じるこの頃です。歳かなやはり。
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売りにいく (ぽけっと)
2011-12-03 08:35:15
売れ筋の商品をまねて売ろうというのは
どこかに修行に行き 名前を変えて同じ商品
を売る お菓子屋の弟子にも似ているような気がします
どこの世界にもあることだと思います
メディアってすごい力持ちだと思います
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真似は一過性の効果しかない (原野人)
2011-12-03 10:00:45
>ポケットさんへ

メディアは確かに伝播力はありますが、常に一過性の効果しかありません。真似して生まれた商品も同じです。基本はやはり商品力になりますね。自力で開発した本当に優れたものでなければ生き残れないのが世の常です。
真似にも、パロディや冗談、いろいろありますが、いずれにしても当初の話題だけで、長続きしないものです。白い恋人が長い間人気なのは、その商品力があるからだと思います。
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