楽々雑記

「楽しむ」と書いて「らく」と読むように日々の雑事を記録します。

ジョアン・ジルベルト。

2006-11-09 23:01:26 | Weblog
レア盤にしか良い音楽がないわけではない。


Verveの『BossaNova PerfectCollection』という編集盤をその昔に池袋の八勝堂書店という古本屋兼中古レコード屋で購入した。きっと当時流行っていたブラジル音楽がちょっと気になってよくわからないままに知っている名前があったので買ってみたのだろう。レアでもなければ「使える」盤でもないボサの有名曲が沢山入っているレコード。今となってはそれが良い。変にレアなレコードのこととかを知ってしまった今ではきっと買うことはないだろう。

昨夜、東京国際フォーラムにジョアン・ジルベルトを聴きに行った。「最後の奇跡」というコンサートの副題はいかがなものかと思いながらも初めて入った国際フォーラムのホールは本当に大きい、37列目に座って待つ。しばらく待つとジョアン・ジルベルトが到着したというアナウンスがようやく入る、入ってそのまま演奏を開始するのか、確かに1人でギターを弾いて歌うだけだからリハーサルも不要というのならわかなくもない。暗くなってスポットライトがステージに照らされるとギターを抱えたジョアンがスタスタとやってきて一礼する。しばし考えている様子、そしてステージが始まる。

ホール中が緊張しているのがわかる、その緊張の中にするりと流れていくギターと声。聴きたいのに眠くなる。距離があるのでステージを見ようとするよりは音を聴こうと思って目を瞑る、眠い。退屈で眠いというのではなく気持ちよくて眠いのだ。流れに抗うことなく自然に身を任せる、やはり眠い。

一旦袖に引っ込んだと思ったら再度登場、一気に演奏する。力強く歌い上げるわけでもないし、派手なパフォーマンスが繰り広げられるわけでもない。スツールに腰掛けたおじいさんがギターを弾いて歌うだけ、けれども音にはおかしみと哀しみが混じっていて皆が共感させられている。全ての演奏が終わるといままで聞いたこともないような拍手が鳴り響いた。どうやって書いてもうまく表現できない、けれどキチンと記録しておきたいので書いてはみたがやはりこの程度にしか書けない。残念だけれども「きっと良かったんだろうなあ」と思ってもらえればありがたい。まさにそうだったのだ。