松本クラフトフェアは三度目になる。前日の雨が見事に上がって少し暑いくらいの日差しだ。大体どこに何があるか分かってきたけれど、人が多くなっているので思うように見るのは難しい。グルグルと広い公園を巡っていると、ある木工作家のブースに桜の樹の盆があった。随分前から盆を探していたものの丁度良いものがなかったから手にとって眺めているとなかなか良い塩梅に見えてきた。展示してある2枚の盆を見比べていると、見知らぬ女性が買うのかと尋ねてきた。買うつもりで見比べていることを伝えると、「他にはないのか」とブースにいた作家らしき人に言った。まだ完全に乾いていないのだけれどと、付け加えながら数枚の盆が出てきた。そして自分が手に取っている盆を差して「それを買うのか」と訊かれた。ほぼ買うつもりになってはいたものの、訊ねられると余計に良いものに思えてきた。悩んでいるふりもせずに作家に買う旨を伝えると、その女性も他の盆の中から1枚を選んで買った。別れ際に「このお盆は兄弟ね」と言って笑いながら別れた。何だか良い買い物をした気になる。
クラフトフェアの会場を後にして、松本市内を散策していると道の反対側を件の女性が歩いていた。女性が我々に気付いて手を振りながら近づいてきた。道を横切ろうとした女性に自動車が急ブレーキをかけた。あわや交通事故というところだったが、意に介していない様子で「ごきげんよう」と大きな声で手を振っている。手を振り返しながら、凄い兄弟ができたものだと複雑な気分になった。
クラフトフェアの会場を後にして、松本市内を散策していると道の反対側を件の女性が歩いていた。女性が我々に気付いて手を振りながら近づいてきた。道を横切ろうとした女性に自動車が急ブレーキをかけた。あわや交通事故というところだったが、意に介していない様子で「ごきげんよう」と大きな声で手を振っている。手を振り返しながら、凄い兄弟ができたものだと複雑な気分になった。