金曜日の夜から続いていた悪寒が漸く治まってパソコンに向かったものの、今ひとつ調子が出ない。寝込んでいたから損をした気になっても良いものだけれど、発熱というのも滅多にない経験なのか、随分と遠くまで行ってきたような気がする。勿論、三途の河を見るほどの熱でもなければ、例のインフルエンザでもない。ごく普通の風邪だったのだけれど、不思議な気分だ。しかし、こんな気分はひと冬に1度で充分だ。
先週の日曜日に新酒を買いに埼玉の毛呂山まで出かけた。わざわざ遠回りをして八王子から八高線で北へ向かう。内田百間(正しくは、門構えに月)や吉田健一、そして宮脇俊三も著したその路線は、電化されてその面影を見つけられぬまま、高麗川駅に到着した。その先は非電化区間になるから、乗換えの待ち時間に一旦下車して改札を出た。駅の構内の地図には近くにあるセメント工場へ向かう引込線があったから、線路が外された砂利道を見つけて工場へ向かって歩いてみる。しばらく歩くと石灰で真っ白な配管がグルグルと廻らされた大きなセメント工場に突き当たった。酒を買いに少し遠出をしたつもりが、思いのほか遠くに来てしまったような気になる。来た道を引き返して駅が見えたとほぼ同時に踏切が鳴り、乗るべき列車が目の前を通り過ぎていった。駅に戻って時刻表を見ると次の列車は1時間30分後。やはり、ずいぶん遠くに来たことを改めて思い知った。