少し前に渋谷のギャラリーに型染の展覧会を見に行った。少し蒸し暑い会場で見た作品は昨秋にパリで受けた印象とは随分と異なる。会場に置いてあったパンフレットを読むと「昨年の秋の展示では思うようなものができなかったので、改めて挑戦した」ということが書かれていた。パリでは旧作が多かったけれども、今秋の展示に向けて新作を作っているようだ。パリでお会いしたスタッフも顔を覚えていてくれたようで嬉しい。やはり顔が分かるというのは気持ちが良い。
大きくない会場の展示なので、それほど時間もかからずに見終えてしまったが、少し奥に談話室のようなスペースがあるのが見えた。「もしよろしければ」と声をかけていただいたので、奥の部屋に入って振り向くと紺色の布が壁にかかっていた。大きな作品ではないけれども、その日の展示で最も気になる作品だ。じっくりと眺めていると以前にも見たような気がしてきた。あまりに気になるので尋ねると展示されているものの中で唯一、昨秋のパリでも展示していたという。「やはり」と思いながら、前回見たときもとても気になる作品だったから、これはただの偶然ではない。そう思い始めると気になって仕方がなくなってきた。改めてじっくり眺めながら懐を考える。談話室のような場所でサラリと掛けてあるのを見ると売り物ではないかもしれない。しかし、この偶然を逃したらと思ったら二度と会うこともないだろう。手に入れなくても困る物ではないけれども、何かの縁を勝手に感じてしまったのだから、このまま帰るのも惜しい。気付けば値段を尋ねていた。決して手の出ない値段ではないけれども、安い買い物ではない。いくつかの言い訳を頭の中で拵えながら、思い切って購入することにした。
談話室を出ると、風にあおられないようにと閉め切っていたホールの窓が開いていた。その横で涼をとっていた作家が「風が涼しいですね」と言う。作品を手に入れたお礼を言いながら改めてぐるりと展示を眺めた。風で大きな型染めがふわりと浮かんだ。
大きくない会場の展示なので、それほど時間もかからずに見終えてしまったが、少し奥に談話室のようなスペースがあるのが見えた。「もしよろしければ」と声をかけていただいたので、奥の部屋に入って振り向くと紺色の布が壁にかかっていた。大きな作品ではないけれども、その日の展示で最も気になる作品だ。じっくりと眺めていると以前にも見たような気がしてきた。あまりに気になるので尋ねると展示されているものの中で唯一、昨秋のパリでも展示していたという。「やはり」と思いながら、前回見たときもとても気になる作品だったから、これはただの偶然ではない。そう思い始めると気になって仕方がなくなってきた。改めてじっくり眺めながら懐を考える。談話室のような場所でサラリと掛けてあるのを見ると売り物ではないかもしれない。しかし、この偶然を逃したらと思ったら二度と会うこともないだろう。手に入れなくても困る物ではないけれども、何かの縁を勝手に感じてしまったのだから、このまま帰るのも惜しい。気付けば値段を尋ねていた。決して手の出ない値段ではないけれども、安い買い物ではない。いくつかの言い訳を頭の中で拵えながら、思い切って購入することにした。
談話室を出ると、風にあおられないようにと閉め切っていたホールの窓が開いていた。その横で涼をとっていた作家が「風が涼しいですね」と言う。作品を手に入れたお礼を言いながら改めてぐるりと展示を眺めた。風で大きな型染めがふわりと浮かんだ。