楽々雑記

「楽しむ」と書いて「らく」と読むように日々の雑事を記録します。

タクシーと小銭。

2006-11-03 11:44:01 | Weblog
訳もわからないまま働いてました。


タクシーに乗る機会が多かった。以前は酒に酔って下車駅を乗り過ごしてはタクシーに乗り、終電を乗り逃してはタクシーに乗り、残業してはタクシーに乗って帰宅した。東京から50キロ離れた住まいまでの道のりは遠かったけれど今はずいぶんと近くなった、その代わりにタクシーを電話で呼ぶこともビルの前で客待ちをしている車に乗ることも憚られるようになった。もっぱら流しているタクシーに向かって手を挙げる。

池波正太郎にならって気持ちの良い運転手にはほんの少しだけお釣りを返すようにしている。それこそコーヒーを一杯も飲めるか飲めないかという程度。小銭を貰っても嬉しくはないだろうが、嬉しくさせようと思って渡してはいないのでそれで良い、渡すことによって偉そうにしたいとも思わなければ施しの気持ちもない。

先週の金曜日の夜、仕事帰りに新高輪プリンスホテルで飲む機会があった。遅い時間だったのでメインバーの「あさま」で一杯だけと思いながら数杯。60年代な雰囲気が漂う空間、高い天井に壁のレリーフ、革張りのラウンジチェア、バーカウンターとその奥に浮かび上がる棚に酒が並んでいる感じも古い邦画に出てくるような感じだ、少しだけくたびれている感じがさらに良い。後で調べてみたら村野藤吾の設計だったことがわかった。なるほど納得、知らないことばかりだ。

外に出ると既に時間も遅く車寄せにタクシーもいないので駅に向かって歩いているとタクシーが1台やってきたから手を挙げた。深夜の東京を走る車に乗るのは楽しい、築地市場に沢山のトラックが集まりつつあるのを眺めながら家につく。お金を払おうと思ったら運転手が「小銭はいいですよ」と言う。恐縮しながら小銭をサイフに戻しながら昨日乗ったタクシーの運転手に「おつりはいいですよ」と言った金額と同じであることに気付いた。仕事でいい加減疲れていたのに少し嬉しくなりながらエレベータに乗った。