楽々雑記

「楽しむ」と書いて「らく」と読むように日々の雑事を記録します。

上野界隈。

2009-01-28 00:44:01 | Weblog
「美しくないもの 役に立たないと思うものを 家に置いてはならない」という駅貼り広告を見て思わずメモ帖を取り出さずにはいられなかったけれども、そのウィリアム・モリスの言葉が引用された『アーツ・アンド・クラフト展』が開かれている東京都美術館を横目に見ながら芸大美術館に『山本正道展』を見に行った。その数日前に新聞で紹介されている記事を読んでどうしても気になっていたのだ。
いつもならばインフォメーションでチケットを購入するはずが、今回はそのまま展示室に入れるらしい。エレベータを降りて目に入った立て札にしたがって展示を眺めた。主にニューメキシコが主題となっている数点の彫刻と素描が展示されている。それを見てニューメキシコ、それもオキーフの家がいかに魅力的かという話を思い出した。果たしてこの展示を見たら何と言うだろうか。展示点数は少ないけれど、それはそれで良いと思いながら進んでいくと反対側にも展示があった。「ごあいさつ」があるからこっちが正しい順路だと気付いたけど構わずに見続けた。正直、先に見た展示の方が好みだったから、必ずしも順路が自分にとって正しいとは限らない。
日が暮れて寒くなる中を谷中まで歩いてから湯島まで戻り、寒くなったことを言い訳にしてシンスケで燗酒を飲んだ。突き出しはひじきの五目煮。脂が乗りつつも身の締った寒ブリの刺身と塩辛、ラクレットを頼んで軽く飲むつもりで飲み始めた。カウンターの中を行ったり来たりしている料理が気になってバラ肉の煮物を追加した。両関の樽酒の匂いの良さに、気付けば杯を重ねていた。
店の人が高名な写真家に集合写真を撮ってもらったらしく隣客にチラっとアルバムを見せていた。どうも自分の右手にはその写真家がいるらしい。相方の左隣でその写真を見せてもらっている人にも見覚えがある。著名なコラムニストであることに気付いたのは、その独特な風貌の写真家に挨拶に行ったからだ。有名人が来る店、というのはきっと苦手と思っていたけれども、そもそもシンスケを知ったのもニューメキシコの話をしてくれた人のおかげだ。きれいな物も美味しい物も思い込みのせいでたくさん見逃してきたのかもしれない。そう思いながらお茶漬けをかき込んだ。

野毛の居酒屋。

2009-01-26 23:53:01 | Weblog
横浜で仕事を終えたけれど、少し早いので折角だから一杯飲んで行こうと思い立った。KSKに野毛が如何に楽しいかを聞かされていたので、どうやっていくのか尋ねると「今日はむり」という返信が戻ってきた。場所だけ聞きたいのだけれど、と思っていると「桜木町へ行くように」と間髪を入れずに電話がかかってきた。帰宅ラッシュの京浜東北線に乗って二駅目で下車する。駅前にある「野毛への近道」と書かれた地下道を抜けて暗くなった道をトボトボと歩くがそれらしい場所に辿り着かない。諦めようと思いながら大きい道へ出ると看板が立派な古本屋が目に入った。飲めないのならば、と店に入り棚をひとしきり眺めた。なかなか面白い。佐野繁次郎が装丁を手がけた武田泰淳『士魂商才』は安価で気になるが状態の悪さに諦めると、すぐ近くに色川武大『喰いたい放題』を見つけた。こちらは値段が折り合わないと思いながら中を捲っているうちに一杯飲みたくなってきた。
本屋の交差点の近くにある古い一軒屋の前を通ると少しだけ賑やかだ。間違いなく中では人が酒を飲んでいるのだけれど、暖簾もかかっていない扉を開けるのはいかがなものか、と思いつつも結局引き戸を開けると中では楽しげに酒を酌み交わされていた。一つだけ空いていた席に腰を下ろして酒を注文するとつまみが出てきた。なるほどそういうシステムかと感心していると、卯の花にたまねぎの酢漬け、鱈豆腐と納豆が間を置いて出てきた。ゆっくりとコップの酒を飲み干すと鉄瓶から注ぎ足される。2杯飲んで二千円でお釣りがきた。何だか楽しくなってきたが、相方との約束を思い出して東急線に乗るために日本大通り駅へ向かうと本来の目的地だった野毛が見えた。次は間違うことはないだろう。いや、今日も間違いではなかったな、と思い返しながらガランとしたみなとみらいを早足で駅へ急いだ。

タマダの言葉。

2009-01-25 23:59:59 | 気になる。
上野伊三郎+リチ コレクション展 ウィーンから京都へ、建築から工芸へ
2009年4月11日~5月31日
目黒区美術館
※京都国立近代美術館(2月8日まで)の同展のページは以下のURL
(http://www.momak.go.jp/Japanese/exhibitionArchive/2008/370.html)

日曜日は朝にコーヒーを飲みながら、ぼんやりと教育テレビの「新日曜美術館」を見ていた。ニコ・ピロスマニについて特集している。絵には見覚えがあったけれど作者については何の知識もなかったので楽しく眺めていた。特集が終わったので朝食を片付けようとしていると、開催中の展覧会の告知が目に入った。上野伊三郎もリチについても全く知らない。知らないだけに余計に気になる。京都には行けそうもないと決めつけていたら目黒区美術館に巡回するようだ。
ピロスマニの祖国グルジアでは、酒宴の際に乾杯の音頭を取る「タマダ」という役目があるらしい。そして乾杯の言葉は「ガウマルジョス(私たちに勝利を)」だ。この偶然の巡り合わせに早速乾杯したい気持ちだけれど、まずは4月までお預けだ。

休日の新聞。

2009-01-18 22:12:14 | Weblog
仕事のない日は新聞を最終面から読む。テレビ欄がある面が1面ではないと知ってからも暫くは新聞を最終面から読んでいたが、いつのまにかきちんと1面から読むようになったのは必要な情報が変わってきたからか、それとも単に正しい大人のフリをしたくなったのか。そう言えば、テレビをあまり見なくなってから久しい。
休みの日であっても当然世の中は動いているけれど、少しだけ知るタイミングが遅れても構わないとゆったりしているようでは本当の大人とはいえないかもしれない。まあ、なろうと思っていないというのが正直なところだから休みの日には新聞を最終面から読む。成人の日も、いつものように最終面の文化欄を眺めてから少し期待しながら社会面に移る。毎年楽しみにしているサントリーの新成人向けの広告がきっとあるに違いない。
いつもと変わらず伊集院静氏のエッセイと長友啓典氏のイラストがある。『世界を見よう。真実を知ろう』と題された文章はシンプルだけれども本当に真っ直ぐな内容。何度か読み返してから、改めてじっくりと読みたくなり、全文を手帳に書き写した。
最後の「さあ外へ出よう。世界を見よう。真実を知ろう。歩き疲れたら一杯のウイスキーでこころを休めて、また歩き出そう。二十歳の君に乾杯。」まで書き写したら、どこかへ出かけたくなった。家にあるウイスキーが少なくなっていたことを思い出した。まずは一杯飲んでから出かけよう。

梅の花、梅の餅。

2009-01-14 23:25:28 | Weblog
昨年末の出張帰りの福岡空港で探して買った梅が枝餅を冷凍庫から出した。売店で買ったときは温かく、その日は羽田から実家まで戻ることを思うと、その場で食べてしまいたい誘惑に駆られたが、何とか実家まで手をつけずに持ち帰り、僅かに温もりの残った餅を食べた。その時だって十分に美味しかったから、これを冷凍してしまうなどもってのほかではないかと思いながらも、冷凍で取り寄せも可能という案内書きを見て冷凍庫に入れる決心をした。
冷凍庫から出した梅が枝餅を箱の中の指示書きに従って、電子レンジで解凍してからトースターに乗せた。2分とかけずにトースターから出した餅を頬張ると、昨年食べたのと変わらぬ味がした。これならば、残りの梅が枝餅もすぐに食べて無くなってしまうだろう。次に福岡に行くのはいつのだったか、とすぐに手帳のスケジュールを確かめた。
団子より花、という訳でもないが、正月に近所で蝋梅を買った。随分と長い枝だったので、余分を切り落として花器代わりに使っている小鹿田の掛け流しのビアマグに挿していたが、正月もすっかり過ぎてさすがに花もくたびれてきた。そろそろ正月気分でもないということか。それでは、と先週末に買ってきた小さな椅子の上に花を乗せてみた。やはり枯れ木に花は咲かないけれど、正月早々良い買い物をしたなとボンヤリと眺めていると、少し腹が減った。冷凍庫の梅が枝餅のことを思いながら、あと残りはいくつあっただろうかと心配になってきた。