行ったことがあるような気になって行ったことがない場所はいくつもある。聴いたことはないけれど、きっと良いと思う音楽を他人に薦めるのと同じ。東京都庭園美術館もそんな場所のひとつだ。何度もその前を通り、入口近くのカフェで酒を飲んだ記憶もある。過去に興味引かれる展示もあったと思うが、結局は行かずじまいで今に至っている。そんな場所がまだまだたくさんあることを恥ずかしく思う。
晴れた日曜日に白金台で下車し「建築の記憶」展を見に行った。咲き始めた桜を見ながら歩くと、じきに美術館に着いた。休日だけに人が多い。建物の中に入るとその多さは更に際立っていた。どこに行っても人だかりだから、ゆっくり見ることは諦めて、気になる物だけを眺めて歩くことにしよう。勿論、写真は興味深かったが、やはり初めて見た旧朝香邸の内装に目が行く。照明や空調周りのレリーフやタイルの設えは、今まで自分がイメージしていたアールデコとは随分違って見えた。そもそもアールデコについて自分がきちんと理解してはいないことを確認したに過ぎないのだが。
上階に登って進んでいくと庭を見下ろすテラスに出た。それほど大きくはないけれど、建物とはちょうど良いバランスの庭。展示を見なくても庭には入れるから、家族連れやカップルがのんびりと日曜の昼下がりを過ごしていた。幸せな風景だと思っていると、独りの男性が目に入った。庭をバックに携帯電話で写真を撮りたいのだろうか、必死にアングルを調整するために、かなり無理な格好をしている。まるでブレイクダンスのような格好だが、おかしさはそれ以上。どうやらうまくいかないようで必死の形相をしている。そんな姿を見下ろしながら微妙な優越感に浸る。隣の見学者も気付いたようで笑い始めた。
全ての展示を見終えてから、持参した牡丹餅を食べようと庭に出た。随分と時間が経っただろうか、先ほどの男性は芝生の上で大の字に寝ていた。キチンと写真は取れたのだろうか。牡丹餅を食べながら、既に興味の対象が美術館でも展示でもなくなっていることに気付いた。これではいけない。改めてゆっくり美術館を楽しみに来よう。
晴れた日曜日に白金台で下車し「建築の記憶」展を見に行った。咲き始めた桜を見ながら歩くと、じきに美術館に着いた。休日だけに人が多い。建物の中に入るとその多さは更に際立っていた。どこに行っても人だかりだから、ゆっくり見ることは諦めて、気になる物だけを眺めて歩くことにしよう。勿論、写真は興味深かったが、やはり初めて見た旧朝香邸の内装に目が行く。照明や空調周りのレリーフやタイルの設えは、今まで自分がイメージしていたアールデコとは随分違って見えた。そもそもアールデコについて自分がきちんと理解してはいないことを確認したに過ぎないのだが。
上階に登って進んでいくと庭を見下ろすテラスに出た。それほど大きくはないけれど、建物とはちょうど良いバランスの庭。展示を見なくても庭には入れるから、家族連れやカップルがのんびりと日曜の昼下がりを過ごしていた。幸せな風景だと思っていると、独りの男性が目に入った。庭をバックに携帯電話で写真を撮りたいのだろうか、必死にアングルを調整するために、かなり無理な格好をしている。まるでブレイクダンスのような格好だが、おかしさはそれ以上。どうやらうまくいかないようで必死の形相をしている。そんな姿を見下ろしながら微妙な優越感に浸る。隣の見学者も気付いたようで笑い始めた。
全ての展示を見終えてから、持参した牡丹餅を食べようと庭に出た。随分と時間が経っただろうか、先ほどの男性は芝生の上で大の字に寝ていた。キチンと写真は取れたのだろうか。牡丹餅を食べながら、既に興味の対象が美術館でも展示でもなくなっていることに気付いた。これではいけない。改めてゆっくり美術館を楽しみに来よう。