今日の出来事

どこへでも風の吹くままに。 http://www.geocities.jp/syanagio/index.html

「蒼火」(2005・北重人・文藝春秋)

2007-05-24 | 
 江戸の闇の中で連続して起こる辻斬りの謎を追う周乃介。時代小説です。池波作品よりも綿密な時代考証が命かも。  登場人物それぞれが曰くつきの過去を持っていて、奥歯にモノがはさまったように思わせぶりすぎる嫌いがあります。中ではイナセな常磐津のお師匠・市弥姐さんが気風がよく色っぽくて素敵です。なるほどね、と思わせるストーリー展開は本格的時代小説と呼ぶに相応しい作品でしょう。ただ、文章が重くて暗いんだな。 . . . 本文を読む

「テロリストのパラソル」を読んだ

2007-05-08 | 
 藤原伊織作の、江戸川乱歩賞&直木賞のダブル受賞作品。10年以上前の作品ながら、既にPCやネットも登場し、それほど違和感なく読めます。日本が舞台でも、現実的なハードボイルドは書けるのだな、と思いました  主人公・島村は、冤罪ながら爆破テロリストとして指名されている中年のアル中バーテンダー。かつて東大紛争時に同志だった仲間の気配に引きずられるように、隠遁生活から現実へと舞い戻ってくるさまが、克明に . . . 本文を読む

『破線のマリス(野沢尚)』を読んだ

2007-04-26 | 
 今頃読みました。初版は1997ですから、もう10年前になります。でも、今読んでも一気に物語世界に引き込まれます。さすがは江戸川乱歩賞です。  タイトルにもなっている破線とはTVの走査線、マリスとは報道の送り手側の意図的な悪意のことだそうです。その通り、これはテレビ局のニュース映像の編集者を巡る、捏造と紙一重の情報処理が主題となっています。登場する人々の追い立てられるような生き方が、非常に辛いで . . . 本文を読む

「ラストイニング」を読んだ。

2007-04-05 | 
 映画にもなった「バッテリー」シリーズのサイドストーリーです。本編ラストでの白球の行方がどうなったのか、あの試合が彼らをどう変えたのかが、ここで明らかにされます。  なんといっても、あの瑞垣が主人公というところが魅力です。吉貞との掛け合いこそないものの、彼の屈折した心理が手に取るように描かれていて、非常に面白かったです。瑞垣にしてみれば、こんなふうに自分を描写されるのはごめんだろうけれど。(笑) . . . 本文を読む

「天と地の守り人 第3部」を読んだ

2007-02-21 | 
「天と地の守り人 第3部」上橋菜穂子(偕成社・2007.3)★★★★☆  バルサとチャグムの物語もいよいよ最終章。長年にわたる父帝との確執、バルサとタンダの行く末、ナユグの春の引き起こす天災、タルシュ帝国との決戦。怒涛のごとく展開される物語は、一気に読むしかありません。  この巻で完結ということで、すべての登場人物にそれぞれの結末が訪れます。それにしても、見事にどの人も、いかにもその人らしい。 . . . 本文を読む

「天と地の守り人 第2部 (2) 」を読んだ

2007-01-30 | 
 2006.11に第一部が出て間なしに第二部です。第一部・ロタ王国編で故国ヨゴとの同盟が無理と悟った皇太子チャグムは、各勢力の放つ刺客や盗賊の攻撃をかいくぐり、女用心棒バルサの故郷・カンバル王国へと、一縷の望みに従って潜入します。  今回の見所は、終盤でチャグムが小心なカンバル王に対し、捨て身の「ホイ」をなす場面でしょう。周到に張られた伏線が、ここに来て初めて見事に結節するのです。やられた、という . . . 本文を読む

『金の言いまつがい』を読んだ

2007-01-24 | 
「金の言いまつがい」東京糸井重里事務所(2006/11/30) ほぼ日刊イトイ新聞, しりあがり寿/祖父江慎 ★★★★★  こういう際限なく無益な本は大好き。前作『言いまつがい』から約3年、満を持しての登場です。しかも「銀」と2冊セット。  公共の場では絶対読めない、勿論立ち読みもできない本です。一冊あれば笑いの波状攻撃に横隔膜&腹筋が鍛えられること間違いなしですね。難点は、おなかが痛くて、一気 . . . 本文を読む

「天と地の守り人 (第1部) 」を読んだ

2007-01-08 | 
「天と地の守り人 (第1部) 」偕成社(上橋 菜穂子, 二木 真希子)  守り人シリーズ最新刊にして、最終章3部作の第一巻だそうです。前回の『蒼路の旅人』では、新ヨゴ皇子・チャグムが海に飛び込んだところで終わったので、どうなるのかと気にかかっていました。  今回は、基本的に女用心棒・バルサ視点で物語が進んでいきます。チャグムの目的地ロタ国からバルサの故国カンバルへとおなじみの土地を遍歴しな . . . 本文を読む

「竜退治の騎士になる方法 」を読んだ

2007-01-07 | 
「竜退治の騎士になる方法」 2003(偕成社)岡田 淳 ★★★☆☆  児童書では定評のある岡田淳の作品。心を閉ざして、当たり障りなく毎日をやり過ごしている子どもたちのための、啓蒙(?)の書です。  いつもの「役割論」は影を潜めて、ここでは、いつの間にか本音を語れなくなった思春期の子どもたちが主人公です。『竜退治』というファンタジーの世界を現実の小学校に持ち込むとどうなるのか?関西弁で話す . . . 本文を読む

「Dr.金田一&柴田理恵のことば診療所」を読んだ

2006-11-28 | 
「Dr.金田一&柴田理恵のことば診療所」明治書院(金田一 秀穂, 柴田 理恵)★★★★★  最近流行の日本語本です。対話形式で、コトバに関する状況を取り上げています。章立てを見ると「あいさつが楽になる薬」「心地いい距離感、自然な敬語」「違う意見、多様な価値観をどう生かす」など、そういえば気になることばかり。  もともと柴田理恵さんは、真っ当な見識の持ち主で、「週間テレビニュース」でお母さん役 . . . 本文を読む