のり巻き のりのり

飾り巻き寿司や料理、己書、読書など日々のあれこれを書いています



宮尾登美子の本から

2015年03月18日 | ファミリーヒストリー
昨年12月に88歳で亡くなった作家 宮尾登美子
以前からファンで、何冊か読んでいました。

映画「鬼龍院花子の生涯」では、「なめたらあかんぜよ」の台詞が大のお気に入りで、学校でも使いまくっていました。
松たかこの「蔵」もよかったです。
宮崎あおいが演じた「天璋院篤姫」はまだ記憶にあるところ。
ほかにもたくさん読みました。

さて、この1週間で集中して読んだのは「櫂」「春燈」「朱夏」
いずれも自伝ともいえる原点の小説です。

宮尾登美子は大正15年生まれ。
生家は高知で「芸妓娼妓紹介業」を営んでいました。女衒の仲介ともいえます。

その中で育った主人公、綾子が、父親の職業を忌まわしいものと反発し、葛藤しながら生きていく、そんな内容です。
今読んでいる「岩伍覚え書き」と合わせて4部シリーズです。

若い人には取り付きにくい文章かも知れませんが、日本語の表現に深みがあり、読み出すと止まりません。

以前、亡くなった父や叔母の戸籍を見て、先代にあまりにも「養子」「養女」が多いので、生存している叔父に聞いてみました。
すると、祖父が戦前「口入れ屋」をやっていたと一言だけ話してくれましたが、詳しくは教えてくれませんでした。

「口入れ屋」とはいわゆる「職業斡旋屋」です。
祖父母の時代や、料理屋、住んでいた所が花街であったことなどを考えると、宮尾登美子の育った家のような仕事をしていたのでしょうか。

そのことを父や祖父母から一度も聞いたことはありませんが、幼いときに来家していた女の人が、やけに粋な着物を着ていたことを覚えています。

それで、もっと詳しく知りたくなって読み始めたのです。

読み進めていくと、叔母が料理屋に養女としてもらわれていったこと、祖母が三味線をつま弾いていたことなどが繋がり、ファミリーヒストリーが点描で浮かんできました。

さらに、主人公の綾子のむこうみずな性格、小学校の代用教員になったことなど、私とどこか共通するものがあり、自分と重ね合わせて読んでいました。

叔母の受け継いだ料亭は「陽暉楼」のような大きなところだったのでしょう。

ファミリーヒストリーが意外なところからあぶり出され、想像の翼を広げることができたのは、作家宮尾登美子の筆力によるものです。

大正から昭和の時代に強く生きた女性を描いた作品は、どれもしっかり読み応えがあり、感動するものばかりです。
今さらながらですが、亡くなったことを惜しみつつご冥福をお祈りします。