第三章「肉体」の時代――山田風太郎
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『戦中派虫けら日記』(原題『滅失への青春』一九七三年)と『戦中派不戦日記』(一九七一年)を書き残した山田誠也(風太郎の本名)青年は、自分が人間なら、この国の他の人間(国民)は人間でなく、他のみんなが人間ならば、自分は人間ではない。すなわち、「間」であり、その頃の常套語でいえば「非国民!」という非難を浴びることを甘んじなければならない存在であると思っていたのではないか。それだけ、戦中派の彼にとって、戦時中の日本人は狂気じみて見えていたのである。
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「日本の異端文学」川村湊著 集英社新書 2001年
富翁
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『戦中派虫けら日記』(原題『滅失への青春』一九七三年)と『戦中派不戦日記』(一九七一年)を書き残した山田誠也(風太郎の本名)青年は、自分が人間なら、この国の他の人間(国民)は人間でなく、他のみんなが人間ならば、自分は人間ではない。すなわち、「間」であり、その頃の常套語でいえば「非国民!」という非難を浴びることを甘んじなければならない存在であると思っていたのではないか。それだけ、戦中派の彼にとって、戦時中の日本人は狂気じみて見えていたのである。
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「日本の異端文学」川村湊著 集英社新書 2001年
富翁