酔うてこほろぎと寝てゐたよ
昭和五年十月九日、上ノ町(現、串間市)で書いた句。二日前に目井津(現、南那珂郡南郷町)でつくったものの訂正句だが、どうしたことか削除の印がある。しかし私はこの句の方がいいと思う。二日前の句は、
酔うてこほろぎといっしょに寝てゐたよ
だが、前書に「酔中野宿」とある。昼間、上天気に浮かれて「焼酎の生一本をひっかけ」、夜も「お遍路さんといっしょに飲」み、そして野宿した。
この句、「いっしょに」とくどく気持をこめすぎているように思う。さらっと書く方が逆に印象が強いのではないか。どうして後の句を削除したものか、と思う。
「放浪行乞 山頭火百二十句」金子兜太 集英社文庫 1992年
富翁
昭和五年十月九日、上ノ町(現、串間市)で書いた句。二日前に目井津(現、南那珂郡南郷町)でつくったものの訂正句だが、どうしたことか削除の印がある。しかし私はこの句の方がいいと思う。二日前の句は、
酔うてこほろぎといっしょに寝てゐたよ
だが、前書に「酔中野宿」とある。昼間、上天気に浮かれて「焼酎の生一本をひっかけ」、夜も「お遍路さんといっしょに飲」み、そして野宿した。
この句、「いっしょに」とくどく気持をこめすぎているように思う。さらっと書く方が逆に印象が強いのではないか。どうして後の句を削除したものか、と思う。
「放浪行乞 山頭火百二十句」金子兜太 集英社文庫 1992年
富翁