〈川俳会〉ブログ

俳句を愛する人、この指とまれ。
四季の変遷を俳句で楽しんでいます。「吟行」もしていますよ。

拾い読み備忘録(159)

2016年08月27日 18時01分53秒 | 伝記
母は、舞台をあきらめた後も時折衣装を着けて歌い踊り、道行く人々をユーモアたっぷりに解説しては幼い息子たちを笑わせた。またあるときは、熱を出して寝ていたチャーリーに母がキリストの生涯を迫真の演技で演じて、幼いチャップリンは感動のあまり声をあげて泣いた。
「チャップリンとヒトラー」大野裕之著 岩波書店 2015年
                         富翁
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拾い読み備忘録(105)

2016年05月12日 15時54分49秒 | 伝記
あれはある日曜日のことだった。カミュは私を昼食に家に招いてくれたのであった。彼の母は愛想のよい笑顔で目をきらきらと輝かせながら、私を迎え入れてくれた。彼女は痩せていた。私がスペイン語で話しかけたとき、彼女は呆然としていたが、カミュが口を挟んで言った。
「彼女にはフランス語で話し掛けてくれ。カスティーリャ語よりもカタロニア語に近いバレアレス諸島の言葉を知っているだけだからね。」
そのときだった。彼女は、来てくれてありがとう、息子は本当の友達しか自分に紹介してくれないんですよ、と私に言った。
「いい子なんですよ、お分かりでしょ、とってもいい子なんですよ。」
明らかに彼女は彼をとても愛していたし、尊敬もしていた。
「カミュ 太陽の兄弟」エマニュエル・ロブレス 大久保敏彦・柳沢淑枝 訳 国文社 1999年
                                富翁
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拾い読み備忘録(37)

2016年02月04日 16時33分16秒 | 伝記
彼の愛は私のはじらいと抑制とのすべてを一掃させ私の過去の失敗と不幸との数々を拭い去ってくれました。彼のために私は新しく、みずみずしくなって、小鳥のようにのびのびと軽やかに生きることができるようになりました。彼は私という人間の解放のために闘ってくれ、且つ勝ったのでした。これと全く同様に彼は書き物のうちで、人間同胞に対する烈しい愛情、責任感からする愛情によって彼らを沈滞した過去から解放し、幾百年に渡る死んだ思想や感情のすべての重荷を自ら引き受けたのです。
世界も私と同様に彼から得るところがあるでしょうか。やがていつかは、あると私は思うのです。
「私ではなくて 風が… D.H.ロレンス伝」フリーダ・ロレンス著 二宮尊道訳 
彌生書房 昭和59年
                                富翁
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拾い読み備忘録(28)

2016年01月26日 21時35分51秒 | 伝記
タオスで彼の本を、特に『海とサルディニア』[1921年、イタリア・サルディニア紀行]、『亀』[1921年詩集]、『鳥、獣、花』[1923年詩集]を読んだとき、こう思ったのを今でもよく憶えている―「ここにこのタオスの土地とインディアンのことを本当に見ることができ、それをあるがままに本のなかに生き生きと描き出せる唯一の人がいる」と。というのも、タオス[ニューメキシコ州のプエブロ・インディアンの住む土地]には世界の夜明けのような、なにか驚嘆すべきものがあったからだ。ロレンスはやってきたとき、それをいつも原始的と呼んでいた。彼のなかの一つのことについて、わたしの直感に狂いはなかった、まさしく彼は見、感じ、驚嘆することができる人だった。
『海とサルディニア』を読んで、わたしはロレンスにタオスにくるようにと書き送った。あの本こそは、紀行のなかでもっとも現実的な本の一つだと思う。なにしろ、あの彼独特の奇妙な書き方で、彼はゆくさきざきの土地の感触と匂いをみごとに伝え、それで土地の実体と本質が読む者のまえに啓かれ、ひとはじかにその土地のなかに足を踏み入れることができるのだから。
「タオスのロレンゾー」メイベル・ドッジ・ルーハン著、野島秀勝訳 法政大学出版局1997年
                            富翁

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