まことに人の苦痛は人の慰藉を以て慰めることは出来ない。人の千言万語もこの点においては何らの益ない。ただ主キリストを知りてすべての苦難に堪え得るのである。ヨブの苦闘が進んでパウロの救主発見に至て、苦痛は苦痛でなくなるのである。キリストが心に宿るに至って、人の慰藉を待たずして苦痛に堪え得るに至るのである。故に一度パウロの如き心を我に実得し得ば、すべての難問題が難問題でなくなるのである。最も不幸なる人さえ最も幸なる人となり得るのである。しかるに世には不幸に会せしため信仰的自殺を遂げし人が少なくない。これ肉体的自殺と相選ばざる忌むべきことである。我らはキリストに縋りて、すべての悲痛艱難に勝つべく努めねばならない。
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「ヨブ記講演」内村鑑三著 岩波文庫 2014年
富翁
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「ヨブ記講演」内村鑑三著 岩波文庫 2014年
富翁