村上:………小説を書くというのは、簡単に言ってしまうなら、自我という装置を動かして物語を作っていく作業です。自我というか、エゴというか、我(が)というか。我を追及していくというのは非常に危険な領域に、ある意味では踏み込んでいくことです。ある場合にはバランスを失うぎりぎりのところまで行かなくてはならないし、外の世界との接触が絶たれていく場合も多いんです。それくらいの危機をはらんだ作業であるということができる。出来上がったものが立派であるかどうかは、また別の問題として。……
「翻訳夜話」村上春樹 柴田元幸 文藝春秋 平成12年
富翁
「翻訳夜話」村上春樹 柴田元幸 文藝春秋 平成12年
富翁