私の思いと技術的覚え書き

歴史小説、映画、乗り物系全般、事故の分析好きのエンジニアの放言ブログです。

鈑金指数を考える

2008-11-11 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険

 当ブログが「独断と偏見の個人としての意見」を記していることを改めて念押しした上で話しを進めてみます。

 昨今は、板金塗装修理に関わる指数(作業時間)の整備も進み、見積コンピューターソフトの改善も進みましたから、素人目には「事故車の見積なんて簡単で些末なこと」との意見が感じられる様にも思います。ある会社の代表者は会議等で挨拶する都度、その様な私見を持っていると認識させられる様な発言を繰り返していたものです。ですから、私の様に通算24年を事故車の損害見積に関わり、相変わらず「事故車見積の難しさ」を認識し続ける者にとっては、聞くに堪えない発言だったと思い返されるのです。

 さて、現在において事故車の指数は脱着・取替、板金、塗装と3つの指数が策定されています。これらの指数は、策定内容の透明性等で、若干疑問を感じる点もあります。しかし、事故車の算出に有効となる科学的根拠に基づいて策定された一定のモノサシとして、これらを使用して行くことに異論はないものと考えています。しかし、本社のレポート審査や修理工場との打合せにおいて、これら指数だけを持って金科玉条の如く判断し話すアジャスター達を見ると嫌気が催されるものです。

 曰く、「付加指数(大概0.1とか0.2の小さい値)が違っている」だとか、板金指数や塗装指数との乖離が大きすぎる等と云った意見なのです。そんな意見に反発すべく、今回は板金指数についての疑問として記してみましょう。

 板金指数とは、損傷面積と損傷の程度等を規準として、それらと作業時間の相関性を集計分析(主に回帰分析と云うもの)して策定したものです。ところで、板金指数で云うところの損傷ですが、主に車体外板における直接物が当たった部位である直接損傷を前提にしているのだろうと思います。しかし、車体の損傷にはこの直接損傷だけでなく、間接損傷もしくは誘発損傷と云われる損傷も多くあるものす。例えば車両後部に追突を受け、リヤバンパーに入力を受け、その結果として間接損傷としてリヤフェンダー(クォーターパネル)に変形を生じている様な場合は良くある話しです。この様なリヤフェンダーの鈑金修正が、どの様に進められるか考えて見れば良く判ると思います。

 まさか、いきなりリヤフェンダーの粗修正作業を行う鈑金屋さんは居ないでしょう。この様な間接的なリヤフェンダーの損傷は、その取付部位としてのバックパネルやリヤサイドメンバーやリヤフロアが変形した結果として生じているものだからです。ですから、この様なリヤフェンダーの修正での粗修正作業としては、車体骨格の修正を行った中で行われるべきものと考えられます。

 なお、変形部位には加工硬化という現象も含め塑性変形部位が入り込みますから、いくら間接損傷部と云えども、車体骨格の修正により完全に復元できるものではありません。ですから、残された歪みは通常のハンマーとドリー(当て板)を使用したり、溶着引き出し器具を使用したりの板金修正作業が必要となるのでしょう。

 以上述べてきたことで何が云いたいかと云えば、間接損傷部位で果たして板金指数としての妥当性が何処まであるのかということなのです。

追記

 テールランプ付近(つまりリヤフェンダー後端部付近)に入力を受けている場合等で、リヤフェンダーの中央部や奥の方に大きな凹損が生じていることがあります。この様な場合も含め、リヤフェンダーの奥の方(リヤドア側)に生じた変形は、リヤフェンダー後方(必ずしも後端ではない)にプルプレートを溶接して、それに引張力を作用させての、板金修正作業が効果的なことは良く知られたことです。パネル自体に引張力が働けば、パネルを伸ばさない様な軽いハンマリングで歪みが抜けることを、見識を持った板金職人は知っているものです。




最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
この話は好きになりました、ありがとうございました。 (車買取)
2012-06-09 21:20:03
この話は好きになりました、ありがとうございました。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。