私の思いと技術的覚え書き

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ある書評から・冷却システム

2018-12-24 | 技術系情報
 先回の山海堂の「エンジン設計の要諦」から、知ってはいるつもりであったが新たに知る知見も含めて記してみたい。

 さて、世に自動車用や船舶用など様々な内燃機関と発電用タービン機関がありますが、それら熱効率は30~40%といったところでしょう。つまり、残りの60~70%は、排気だとか熱だとか摩擦だとかに消費される損失となるのは知るところでしょう。話しは飛びますが、今や日本中で多くの原発は停止(あくまでも低温停止=アイドリング状態)していますが、そもそもなんで原発は海の至近にあるのでしょうか。大陸の原発で、例えばチェルノブイリなどは、かなりの内陸にありますが、日本ではあり得ないのです。そうです、原発は発電出力100万kwとかで表しますが、およそこの3倍の300万kwが熱出力であり、廃熱として200万kw分という途方もない廃熱を熱交換して捨てているのです。日本の様に小さな島国では広大な大河川はありませんので、必然として大量の海水を求めざるを得ず、その様な立地になるのです。

 さて、本論の書評に戻します。エンジンの冷却水は恒温制御がなされる仕組みになっています。当然ですね、低すぎるとヒーターが効かないなんて云うのはともかく本質として熱効率を下げ汚損排気ガスを増大させます。一方、高すぎると、異常燃焼とかノッキングを生み、出力が低下します。そして、最終まで上がり過ぎるとオーバーヒートとして、エンジンの損壊に至ります。ですから、80℃~90℃程度の恒温制御がなされているのですが、この要になっているのがサーモスタットであることを知らぬ整備屋はいないでしょう。

 そこで、このサーモスタットが、何処に付いていて、恒温制御しているかを2つの区分で記した内容が以下となります。

出口制御
 一般的な上下タンクのラジエーターでは、冷却水は対流の性質を持っていますから効率上からも上から流して下に抜くことが原則となります。その中で、エンジン本体で生じた熱をアッパータンクに導きますが、そのエンジン出口にサーモスタットを配したものが出口制御となります。この出口制御では、サーモスタットが閉じていると、その袋小路となったサーモスタット付近は、冷却水が澱み昇温が遅れる傾向が生じるので、ウォータポンプからサーモスタット付近へ細いバイパス経路を設けれエンジン内部だけで循環します。一方、サーモスタット開弁後は、ウォーターポンプの出力流量はラジエータに流れるが、先のバイパス経路に分流する分が減少します。この理由で、バイパス経路は、閉状態で澱みが解消できる程度の細いものとするが、水圧としては高くなります。この高い水圧が要因となってサーモスタットの開弁温度に達しても開弁できず、一定越えて開弁(オーバーシュート)することになります。そして、開弁すると一気に水温が下がり、また閉弁し昇温するというを繰り返すハンチングを繰り返し制御温度に漸近する。なお、オーバーシュート防止のため、バイパス経路を広げ、開弁後はバイパス経路を閉じるボトムバイパス式もあるが、水温ハンチングは解消できません。(図参照)

入口制御
 出口制御の欠点を解消するもので、サーモスタットをエンジンへの冷却水の入口に配したものです。サーモスタット閉状態では付近の澱みもなく、オーバーシュートもなく、開弁後のハンチングもほぼないという方式です。但し、入口制御では基準点となるラジエータと、圧力最低となるウォータポンプ入口との間に抵抗体となるサーモスタットが存するため、ポンプ入口の圧力が低下し、キャビテーション※が発生しやすい傾向がある。

※水中の気泡(バブル)で消滅時に衝撃波を発し浸食作用などを起こす場合がある。





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