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【再掲】疑似議案との闘い(その12)

2021-10-26 | 賠償交渉事例の記録
【再掲】疑似議案との闘い(その12)
初稿2008-10-08
 今回は、車両盗難事故にまつわるモラルリスク事案として取り上げてみたい。

 まず、盗難事故絡みの案件は、そもそもアジャスターとしては余り関わりを持つ経験がないという方も多いのかもしれない。これも会社により部署により、差異も大きいものと想像される。私自身も、それ程関わった件数が多いともいえぬが関わった経験も含め、多少なりとも感じることとして記したい。

 まず、以前にも記したことだが、車両盗難はここ10年位で急激に増加し、近年は減少傾向となってきましたが、それでも年間3万件(2008年現在)を超える認知件数が生じている訳だ。。この減少は関係官庁の取り組みや、未だ新車販売の全車種ではないがイモビライザーという電子暗号照合式のエンジン始動システムの採用車の増加もあるのだと思う。

 先日のニュースでトヨタ車の盗難でキーシリンダーの番号から、その場で合い鍵を作成して盗難するグループが摘発されたとの内容が報じられてい。この様な重要なセキュリティ情報が、犯行グループに流出しているのですから恐ろしいことではあります。

 なお、2020年現在に盗難認知件数は、5200件/年と低下してきているが、極端な特定車種が狙い撃ちされていることや、リレーアタックとかコードグラバーと云う、車側が利便性だけを売り物にしてキーの使用を行わなくても利用できるというスキを付く犯行形態に変わってきていることがある。

 なお、例えイモビライザー付き車であっても、これは保管場所の問題もあるだろうが、不動状態で積載車に積んで運ばれる可能性も現実にある。それと電子ハッキング技術に優れた犯行者だかと、中華製のイモビカッターなどのアングラ装置も出回っていりこともある。また、何らかの方法によりイモビライザーを解除した別途のECUを用意して盗んでいる場合もあり得る。それと、カーディラーのメーカー製機械では、新生キーを登録する機能を持つが、これを利用して犯行を重ねていた、カーディラー所属員が逮捕されたことも報じられている。

 なお、最新型等で車両メーカーと通信機能を持つ車種では、盗難が認知されコールセンターに連絡されると、リモートでエンジン再始動を不可能にする機能を持つ。さらに、車両位置を検出して追跡できる機能を持つ機能も持つ場合もあるし、追加のセキュリティシステムにも同様機能を持ったものがある。しかし、例えば電波を遮蔽してしまうパネルバンやコンテナ内部等に搬入し移送されたら、それも役に立たなくなるだろう。

 それと、過去ニュースで報じられている新手の手口として、後部からわざと軽度に追突し、降りてきた運転者が近づいて来たところを、別の共犯者が乗り逃げするという「ごっつん盗」という手口までがあると云いますから驚く。

 何れにしても組織的犯行グループに狙いを付けられたら、どんな高度な盗難防止装置でも完璧はあり得ない。これら盗難車は、相当数が海外に流出しているのでしょうし、中には別の車体番号の付けたクルマとして国内市場にも流出しているのあろう。

 さて、以上までの話は通常の盗難事件であり、車両保険の対象となる事故である。しかし、報告された盗難事故自体に、保険の対象となる偶然性に疑義がある、すなわち虚偽の盗難と判断される事案も中には含まれるのだ。何れにしても、盗難に至る状況や背景等を含め、種々の不自然さが伺われる事案ということになる。

 また、組織的グループによる盗難事故というのは、まず盗難車が発見されるケースが少ないものです。しかし、中には盗難移送中に事故して乗り捨てて発見される場合がある。これは判るのだが、盗難後の比較的日時を経ずして、車両火災事故として発見されたり、河川等に転落水没する事故として発見されたりする場合が希にあったとしたら、これらも不自然な理由の一つとなるのだと感じる。

 以下は10年程以前のある盗難事案ですが、参考までに概要を記してみたい。

 事案は、新規契約から約1ヶ月を経過した、ベンツ500SL(車両付保額900万)の盗難事故で、以下のような不審点が見られた。
・新規契約後の1ヶ月での発生。
・キーを付けたまま路上駐車し、レンタルビデオを借りている最中の盗難との申告。
・調査機関(リサーチ調査)を行うが、契約者への面談聴取も行われていない等、杜撰な調査内容であり、疑念は薄らぐものではなかった。
・契約者に面談聴取するが、人物印象等からその筋の人物と感じられることから疑念は更に深まった。
・車検証の名義と契約者は異なっており、契約者が正規所有者か疑問を生じること。また、車両を購入したとされる人物(中古車ブローカー)は、別件で警察に拘留中であった。
・警察への人物照会から契約者は暴力団構成員と判明した。

 以上の様な数々の疑念がある中、弁護士への相談や警察への照会等が功を奏し、約1ヶ月後に盗難されたとされる車両が山中にて発見されたとの報を受けるに至った。なお、盗難中の損害について問うが、オーディオ関係が外されているとの弁あるが、保険請求は取り下げる等とのことであった。


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