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アジャスターと示談の正当性に関すること

2021-10-26 | 賠償交渉事例の記録
アジャスターと示談の正当性に関すること
 2021年現在、各保険会社に所属するアジャスター(物損事故調査員)が損害調査会社という保険会社本体と別会社に所属するのは、「東京海上日動」と「あいおい」の2社だけで、その他はすべて別会社を廃止し保険会社本体の所属員となっている。(アジャスターの直接雇用)

 しかし、たからといってアジャスターの給与体系が本体(総合職だとか全国型と云われる者)と同様になったということはなく、あくまで専門職として別テーブル上の話しとして給与が増えたなんて話しは聞こえてこない。むしろ、保険会社の本体給与も下がる傾向を持つが、直雇になったアジャスターの給与も下がる傾向を持っていることが伝わって来る。

 その上で、アジャスターにも全国型と地域型という区分により、給与格差が設けられたり、従来60才定年だったのを、保険会社本体と同じく55才で役職定年として、以降は食卓扱い、1年更新で、65才まで勤続可能と、その辺りだけ保険会社本体の職制に合わせて来ていると把握している。

 さて、本題のアジャスターの示談行為の正当性のことに話しを移したいが、よく修理業界の方とから、アジャスターが別会社を配して保険会社と一体になったのは、消費税の関係だろうと聞かれることが多いが、これについては、そのこともあるが、もう一つの理由があるんだという説明をしている。

 そのもう一つの理由が、いわゆる非弁法の関係なのだ。この非弁法とは、Youyube 等で新しい政党に認められられることになったN国党(現在は長ったらしい党名だが)の立花党首の説明が判り易い。いわゆる弁護士法72条の中に、「弁護士以下外は何人も弁護士と同様の法的な代理業務を業として行ってはならない」という旨の定めがある。N国、立花氏は、この点で、NHK本体の委託を受け、料金回収業務を委託された別会社がその回収業務を行うことは、弁護士法72条違反だと主張しているところだ。

 この法令は、弁護士という業務を保護すると共に、暴対法以前の暴力団関係者とかいわゆる示談屋なることを業とする者の存在があり、不当な利得を得ている実態を鑑みて制定されたのだろう。

 よって、保険会社本体が示談を行うことについては、当事者性があるから問題はないと解釈されるものの、その子損調会社社員が行う示談行為が非弁法に抵触する恐れの多いことは、従前から関係者には良く知られたことなのだ。このことは、モーターリゼーションの発達により、交通事故も頻発し自動車保険も多く販売される様になり、しかも示談代行特約が極一般に付帯する時代になり、保険会社としては、弁護士会と協定を結ぶことで、とりあえず弁護士会からは訴えられない様に手を打ってきたのだ。その内容の細部は割愛するが、前提は物損事故に限定し、その損害額は30万円以下、形態上は担当顧問弁護士の傘下に所属するアジャスターが位置し、その管理下で示談代行行為を行うというものだった。しかし、こんなのは、あくまでも形だけのもので、月一回程度、一覧表にした示談代行リストに、担当弁護士がメクラ印を押す程度のものであったというのが実態なのだ。

 ここで、冒頭の別会社を廃して一体化した話しの回答に戻るが、消費税の税率アップ負担分のこともあろうけれど、主体はこの弁護士法72条違反という、問題化すると大きなコンプライアンス違反ともなりかねない問題は占めるウェイトの方が大きいというのが認識となるだろう。

 なお、追記しておくが、現在でもアジャスター所属の損害調査会社が存在している東京海上日動社とあいおい社のアジャスターが示談に関わるケースは減少したであろうが、そのすべてが示談に関わらなくなったという訳ではないことも確かなことだろうということが垣間見えている。

 さらに追記しておくと、この様な損調子会社における非弁法絡みの問題は、約10年以上前に、人身事故の示談で問題になっていたのだ。人身事故の示談では、日弁連協定(まったく意味ないことですが)もないし、多くの保険会社で危機感を持った。それまでは、損調子会社において、技術アジャスターに対する一般アジャスターという資格が存在し、主に人身事故の示談を担当させていたのだが、一般アジャスターという資格は多くの保険会社で廃止されたのだった。そして、従来の一般アジャスターとしての示談担当者は、保険会社本体に所属する人身主査という形態で業務を継続しているのが現状なのだ。但し、ここにも姑息なことをする多くの保険会社があり、形式上は保険会社本体所属ですが、実態は損調子会社に席があり、保険会社本体に出向しているというという事例も結構あったことを知見している。

 さて、多くの保険会社で保険会社所属になったアジャスターだが、大まかに述べれば示談案件の8割方は女性担当者が電話での交渉(というより打ち合わせのレベル)で解決しているのが現状だろう。そして、残りの2割は、必ずしもではないが面談が必用とかで難解案件としてアジャスターが行っていると解されるのだ。なお、電話での女性担当者の段階でも、相手はこういう主旨で主張しているが、どう答えて良いか判らない等の相談案件というのは日常的に生じる訳だが、そういう物損事故絡みの技術的内容を含んだことに保険会社本体所属の職員が対応できる訳もなく、車物リーダーという形で活躍しているアジャスターも居ると承知している。ところが、この辺りが巧く行かず、醸成担当者ばかりが空転している保険会社もある様に聞くから、これは滑稽な話しと聞くのだ。

 ここで結論として見解を述べたいが、私の損保実務経験20数年の知見から判断して、こと車物に間しては、その修理費の協定(工場との修理費の打ち合わせ金額の決定)も、最終的な相手方との示談も、利害相反する相手との打ち合わせによる合意というエッセンスはまったく同様であり、満足な協定が行えない者は満足な示談は行えず、また逆もしかりだと確信している。ということで、アジャスターが示談に関わるのは法的な問題をクリアーしている前提で、大いに結構だし、それが決して保険会社のためだけでなく、公平な保険金の支払いのためにも価値あることだと認識している。


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