私の思いと技術的覚え書き

歴史小説、映画、乗り物系全般、事故の分析好きのエンジニアの放言ブログです。

フロント骨格の構造変換(オクタゴン・フレームの採用など)

2016-11-20 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
 1070年代以降、多くの小型車がFRからFFへと構造転換した。これは、主にパワープラントの一体化によるそれ自体のコスト低減や、車両への組み付け性の向上を意識したコスト低減だったのだろう。FF車の場合、左右前輪のドライブシャフトを貫通させる必用から、従来のFRに比べサイドフレームの位置が高くなる。その結果、従来のフロント骨格において、サイドフレーム前端を結合し、ラーメン構造体を形作るフロントクロスメンバーが下方に大きく離れることから、溶接構造体としてのクロスメンバーは姿を消し、ラジエータなどの下方を固定する比較的華奢なボルト付けフロントクロスメンバーへと構造が変化した。そして、サイドフレーム前端をしっかり固定しラーメン構造体を形成するのは、バンパーリインホースメントに代替えされたのだった。

 その後、FR車においても、対衝突安全性の見地、つまり前部の潰れ剛性向上の目的から、従来フロアパネル下方から屈曲して前部に延ばされていた形状が、FF車と同様に高い位置に配置され、先端部からダッシュ接合部までを直線的形状へと変更されるものが主流となった。つまり、直線形状の方が、対潰れ剛性上で有利となるからである。フロントクロスメンバーの結合も、FF車と同様に変化した。

 ここで紹介するのは、新生BMWミニ(R50)のフロントサポートを外したフロントサイドフレーム前端の断面形状であるが(R56も共通)、従来の4角断面でなく8角断面(オウタゴン)であることに注目したい。BMWでは、FRのE36辺りからオクタゴンサイドフレームを使用して来た。これは、様々な解析理由があるのだろうが、一般に角数を20角程度までの範囲で角を増やすことで、主に角となる部位の加工硬化により潰れ剛性が向上することによると推察される。このオクタゴン断面サイドフレームもBMWに限らず、マツダRX7などでも(マネされ)採用されている。但し、製造工程によるプレス加工のコストは増大し、事故修理における復元作業もやり難いなどデメリットもあるのだろう。最近のBMWでは、従来同様のコンベンショナルな4角断面(当然上下曲げ剛性上で縦方向のウェブハイトが高い)に戻されている。

 話はクルマからクレーンのブーム(ジブ)に変わるが、ホイールクレーンなど多段ブームでは、従来4角断面が当たり前であったが、最近の「タダノ」辺りのクレーンを眺めると、オクタゴンブームとなっている。材質は当然高張力鋼の厚板だから、製造にはそれなりのコスト増加があるのだろうが、上回るメリットを意識してのものなのだろう。



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