私の思いと技術的覚え書き

歴史小説、映画、乗り物系全般、事故の分析好きのエンジニアの放言ブログです。

国交省は誰のための機関?

2016-11-23 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
 最近、クルマに関する様々な疑問として、3件ほど国交省に質問を投げ掛けている。その一つが、今回紹介するBMWミニ(R50系)のパワーステアリングの不具合に関するものだ。

 国交省・自動車局のHP内には、不具合情報検索という項目がある。ここで、「BMW・ミニ」を検索すると総件数484件がヒットする。さらに「かじ取り装置」チェックすると256件がヒットするが、ここまでは別段の驚きはない。ところが、不具合内容を見始めると「突然ハンドルが重くなり(パワーアシスト効かず)、カーブを曲がりきれなくなりそうになった」等という記述が、ベラボーに多いことが直ちに解る。しかも、対象車両の型式は、GH-RA16 もしくは GH-RE16(クーパーS)の何れかにすべて限定される、これら対象型式で、かつ先の不具合をカウントすると195件となる。つまり、同型式車において、「かじ取り装置」256件中の195件だから、76%がパワーステアリングの不具合を生じていることになる。

 当件については、BMWディーラーにおいてサービスキャンペーンとして対象車両の入庫と点検、そして必用に応じて改修が行われていることを知っていた。その内容の概要は、パワーステアリング用電動ポンプの配線コネクタに防水処理が不足して腐食しているものがあり、腐食が確認された車両はポンプAssyを取替処理するというものだ。これについては、不具合情報のすべてが配線コネクタの接触不良に起因しているとは、ちょっと考え難いというのが私見なのである。

 ところで、当方が国交省に意見を提示した主旨としては、そもそもパワーステアリングという操舵装置は、制動装置と同様、故障の場合に極めて高い危険を生じるものであり、今回の異常多発の現状を鑑みれば、サービスキャンペーンみたいな甘っちょろい自主的なものでなく、リコール命令を発せられないのかというものだった。この質問は3ヶ月程前に出したのだが、さっぱり返答もなされず、2度の督促後に、如何にも官僚的な返答文書を受け取った。あまりにも無機質かつ意味の通じない回答に腹が立ち、電話での追加質問を最近行ったのだ。

 この電話質問によって得られた主旨としては、幾つかあるが、その中の2つを紹介してみる。
 まず対象車が輸入車であり、国違いのメーカーに直接伝達が不可能であり、インポーターに伝達せざるを得ないとう制限が生じる宿命にあることだ。そして、インポーターレベルで解決できれば良しだが、リコールなどは、そもそも設計、製造に起因することがほとんどだから、不可能な話となろう。そこで、インポーターとメーカーとの打ち合わせとなるが、国情も違えば、指揮権上も下位から上げられるネガティブな意見に何処まで本気で取り組む熱意が生じるだろうかと想像すれば、おのずと消極的対応となりやすかろう。

 もう一つ、国交省・審査・リコール課の担当菅が再三述べていた中で、最期まで当方としては理解に苦しんだのは、確かに今回の問題は異常に多い発生率だが、本件は「道路運送車両法の保安基準」(下記参照)には直ちに抵触する問題でないから、強く是正を求められないというところだ。操舵中とか操舵開始直前にパワーアシストが働かなくなれば、オイルの流動抵抗などもあり、パワーアシストなし車(現在ほとんどないだろうが)以上の操舵力が唐突に必用となる。とすれば、国交省の担当官は事故は生じていないと述べるが、不具合記述の中には、センターラインをオーバーしてしまったとか、壁に衝突したとかいう記述も何件かあり、本当に重大事故が起きていないかどうかも怪しいとも思うだ。

※参考
道路運送車両法の保安基準
第11条 かじとり装置
 自動車のかじとり装置は、堅ろうで、安全な運行を確保できるものとして、強度、操作性等に関し告示定める基準に適合するものでなければならない。

同検査事務規定
5-13 かじとり装置
②かじとり装置は、運転者が定位置において容易に、かつ、確実に操作できるものであること。

※写真の説明
 R50系のパワーアシストは、電動パワステではあるものの、従来の油圧ポンプを電動モーターで駆動し、その油圧でアシストする方式である。ちなみに、ポンプもギヤもAssyしか部品供給は設定がなく、ポンプAssyが約16万円程の価格設定となっている。


最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (おっさん)
2018-10-08 01:55:55
当時の保安基準には、ステアリングの操作荷重について明確な基準がないのです。
したがって、市場措置を命ずることができなかったのだと思います。

しかし、平成26年6月10日の報道発表http://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha07_hh_000157.html
で協定規則第79号を国内基準に導入するとありますが、適用対象は新型車で平成 28 年 7 月 1 日 、継続生産車で平成 30 年 7 月 1 日ですから、これ以降の車両で同じような不具合が出るとリコール対象になりますね。
協定規則第79号の詳細は
http://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_unr_000001.htm
からどうぞ。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。