職人を不要にする技術革新

　鉄道の話しですが、新幹線の先頭車両は空気抵抗を軽減すると共に、トンネル部への突入時の圧縮波の発生をなるべく低減させるために、先の尖ったスムーズな形状が採用されています。新幹線も２００系以降は、アルミニウム系外板が採用されていますが、この先頭形状部分も従来は職人が手叩き鈑金により、ある程度の細かいパート毎に成形し、それを溶接して全体を組み上げるという作業が行われてきたのでした。ところが、最新の製造工場においては、ある程度の厚さを有した素型を、コンピューター制御のエンドミルで切削することにより、設計値どおりのスムーズな外観形状と、内部には補強のためのリブを有するという製品を生み出せるまでなりつつあるようです。
　一方飛行機の話しですが、素材は昔からアルミミニウム系のものですが、主翼などは骨に当たるリブに対して平アルミ板を貼り込んでリベットで固定するという作業が普通のものでした。しかし、発表されたＨＯＮＤＡ・ＪＡＴなどにおいては一体成形のアルミブロック材を、やはりコンピューター制御のエンドミルで切削することで、極めてフラットで空気抵抗の良好な翼型を得ている様です。
　この様に、技術革新が従来活躍していた職人仕事を駆逐して行くということは、あらゆる場面においてあることなのでしょう。しかし、開発の先端にある試作部門だとか、加工機械たるマザーリングマシンの基本精度を決定付けるフラットベット部の平面度など、それなりの熟練者の関わりが欠かせないものです。しかし、全体としては、職人の数は大幅に少なくなってしまったのが現代なおですが、寂しいなろも感じられます。