German Vintage Modules

ドイツ等のビンテージ業務用録音機材紹介、ラッキング、モディファイなど。

TAB / Telefunken U73b - Kompressor / Begrenzerverstärker

2013-04-08 01:29:03 | vintage gear
Rubber Soul (Dig)Rubber Soul (Dig)
価格:¥ 2,343(税込)
発売日:2009-09-09



U73brackThe BeatlesやPink Floydで有名なコンプで、当時のREDDコンソール@Abby Road StudioのStereo Bus Compressorとして使用されていました。


Fairchild 660/670と同じような原理のPentode管を使用したvri-muコンプで、2 x E99F、E88CC、E80CFで構成されており、後発のU373aU273b同様にThresholdやMakeup Gain等もなく、通常のコンプとして使用するには前後段にATT.等(+6dB入力、+16dB出力)が必要になりますが、前身のU73/83では固定されていたリリースタイムは"b"タイプからLimitモードで、0.3 / 0.6 / 1.2 sec、Compモードで、2.5 / 6 / 10 secの可変式になりました。(実際はどちらのモードでも0.3~10secまで使用出来ます)

細かい調整は出来ませんが、U83の記事にも記述した通り非常にヒューマンライクなコンプレッサーで「良い塩梅」にMIXソースをまとめてくれる魔法の箱です。

このBLOGを始めて間もない頃に、そのサウンドに憧れて数台のU73bを輸入して何とかStereo Bus Compressorとして使用出来るよう色々試みたのですが、Varicomがどうしても入手出来なかったり、近いシリアルでも個体差が大きくプロの現場で使用出来るような状態に仕上げるには途方もない手間と金額が必要な事が判明して、当時は主に使用する側だった私は諦めるしかなかった苦い思い出がある機材です。


U73brack_innerこの機材のオーナーは、本国でも腕利きで評判のテックにラッキングとリキャップを依頼して使用するのを楽しみにしていたのですが、イザ使ってみると何かしっくりと来なかったようで、先日私の所に持ち込まれました。


私も数年前に同じテックにU373aのラッキングとマスタリングでも使用出来るような精度のファインチューニングを依頼したのですが、半年程の期間と@1900ユーロ x 2を請求された事などを説明したりして費用について気になったので尋ねると、、、

U73b_inner修理/リキャップ自体の費用は@5~600ユーロだったようで、ラックを開けてみると「名」があるテックらしく金額の割に大変良心的で丁寧な作業が施されており実際に使用してみても、(近年の)プロ環境では「Stereo Link 可」として何ら問題のないレベルに仕上がっています。


U73brack_inner2しかし、求められているのは私がU373aで依頼したような内容なようなので、しっくり来ない理由を色々と解明して行くと、コンプしない状態でも左右の音色に違いがあり、3dB程度の浅いコンプや15dB近く深い状態ではあまり気にならない左右差も、6~10dB程度の頻繁に使用する辺りではアタック、リリースのタイムラインが気になったり、音質も変化の様子が左右違ったり、何よりもU73bらしい質感が乏しく単にキャリブレーションをやり直すだけでは良くなる事はなさそうな個体で、予算内でどうにか納めようとした本国テックの苦労の痕跡が感じられます。


念のため本国のテックや現オーナーの名誉のために付け加えると、今まで10台以上のU73bを扱って来ましたが現状でも(Stereoに限ってですが、、、)恐らく国内では1、2を争う優秀なステレオペアのU73bだと思います。オーナーと私が極端なオタク体質(あのサウンドでないと、、、)ゆえの記事ですので、その辺りは差し引いてお読み頂けると幸いです。


音質改善とオタク仕様ステレオマッチングに関する一連の途方もない作業メニューをオーナーに説明した所、「そこまで追い込んで、あのサウンドが再現出来るのであれば、、、」と太っ腹なお言葉を頂いたので、現状では「最善の結果」である事も伝えて、上手く行かなかった際には可能な限りの現状復帰を条件として、ファインチューニングをお受けする事となりましたので、作業の様子は徐々に公開して行こうと考えています。

 


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