アラ還のズボラ菜園日記  

何と無く自分を偉い人様に 思いていたが 子供なりかかな?

再考、八甲田山雪中行軍 5

2013年05月24日 | 近世歴史と映画

 

八甲田あらし

 

 同所よりは、いわゆる田代平といい、放牧地として知られる。

 

ぼうぼうたる高原平野、左方眼前にそばたてるは八甲田連峰、

 

遠く右手に見えるは八幡岳・折紙山の連山が高原に連り陸奥湾に迫っている。

 

北西は眼界展け目をさえぎるものとて無く遠く北海道の島影を望むことができる

 

眺望絶佳の地であるが、此処に達して間もなく前述の如く猛吹雪と急変し、

 

気温急に下り強烈を極める吹雪に身をさらすうちに瞬くまに積雪三尺余に、

 

腰部を越えている。

 

 加えるに風雪顔面に拭きつけ骨髄に達するような痛さ、

 

顔は少しも上げることができず、前方の人の所在さえ判らない。

 


「咫尺を弁ぜず」とは真にこの事か!

 


 八甲田嵐の恐ろしさをこうむった。
この事から如何に吹雪の強烈であったかを計り知る事が出来る。

 

吾等七名は道案内だからと云うので終始先頭に立たされたが、

 

雪をこぎ進む事は一町と続かず、交互に先頭に立ち顔を伏せながらひたすら、

 

吹雪の方向えと進み少 しも休めず、また難を避ける蔭とてもなく、

 

暴威を逞しくする吹雪に向かいつつ進み進みて夜十一時頃、

 

漸く箒場より凡そ一里の地点に達した時、突然大尉は行 軍中止を命じた。

 

休憩する意であろうか?
すぐ兵士等に命じて雪を掘り穴をあけ、雪の防風堤を作らせ焚火をしようとした。

 

 吾等七名もその恩恵に俗せるものと喜んだのも束の間、

 

意外にも隊長が命じていうには「是より新湯に行き家主・小山内文次郎を連れて来い。」と新湯までは 僅か十町余で達する事が出来るのだが、

 

増沢出発以来17時間にもなり僅か双股にて小憩しただけ、

 

唯の一食も摂らず疲労と空腹のためまさに餓死寸前の身であ り、

 

一歩も踏み出す勇気もなく唖然として立ちすくんでしまった。

 

風雪は依然として猛威を振い、積雪は既に肩を没する現状であれば、

 

誰れ一人として動く気配はない。

 

しかし隊長の命であればこのまま過すことは出来ない。

 

勇気を出して一同出発しようとしたら大尉は何んと思ったであろうか、

 

「携帯品は全部置け、但し七名の中二名は此処におり五名で使いを果たすように」

 

との命令になお驚いたが止むを得ず出発した。

 

(小原寅助、福村勝太郎の両名動かず残る)

 


咫尺(しせき)を弁せずの意味

  ごく近い所の事もわからないことで、すぐ近いところでも視界がきかない意味。

「咫」中国、周の長さの単位で八寸(約十八センチメートル)。「尺」一尺(約二十二・五センチメートル)。