第1日目の宿-----『青荷温泉』
「青荷温泉」はランプの宿として有名で、国道から7kmほど山の中に入ったところにある一軒宿。
電気も電波もなく、ランプの灯りだけで過ごす、「何もない贅沢」と「ランプが照らす渓谷の秘湯」を売りとしている宿。
ずっと前から一度は泊ってみたいと思っていた宿だった。
「虹の湖公園」には送迎バスが待っていてくれた。
バスは国道102号線を少し走り、分岐を山の中に向かっていった。
分岐の標識には「青荷温泉6.5K」とあった。
ここからダートの道となり、急勾配・急カーブが続き、宿に下りていく道は特に急な坂道となっていた。
[宿入り口の急坂を下りたところと「青荷温泉」の看板]
[玄関]
ここでも”ランプ”がお出迎えしてくれた。
宿は「青荷川」沿いにあるので、部屋の下には川と赤く色づいたナナカマドが・・・
部屋の中はランプが一つぶら下がっているだけ。
お茶のセットは用意されていて、布団は自分で敷くシステムになっていた。
本来ならばお風呂は4ヶ所あるのだが、川が増水したため川向こうにある2ヶ所(滝見の湯、露天風呂)のお風呂は利用できなかった。
それで残りの2ヶ所のうち、別棟にある「健六の湯」に向かった。
誰にも会わず、大きなお風呂を独り占めして長々と入ることができた。
「健六の湯」は大きなヒバ造りの湯船があり、無色透明の温泉が溢れていた。
単純温泉なので特に特徴のあるものではなかったのだが、雰囲気がとっても良かった。
高さのある天井と両方の壁にはランプだけが灯っている、洗い場もシャワーもないお風呂で正に秘湯といった感じだった。
隣には半露天になった窯風呂も。
もう一つのお風呂は宿泊棟内にある「内湯」で、造りは「健六の湯」と似ていた。
ここも高い天井とランプ、少し小さめのヒバの浴槽、洗い場もシャワーもないすべて木造りの浴室だった。
[館内の様子]
部屋ではテレビも電波もないため、何もせずにただ天井のランプと窓の外を眺めているだけで、「何もない贅沢」という言葉が身に染みて感じられた。
ここまでは良かったのだが、やはりちょっと、と思うことが一つだけあった。
それは食事場所のことで、もう少し明るさが欲しかった。
食事は素朴な料理で美味しかったけれど、食事の場所も上からぶら下がっているランプのみ、だから部屋が暗すぎて何を食べているのかも分からないくらいだった。
ランプの宿と承知して来ているのだからそれはしょうがないのかもしれないけれど、料理は目で楽しむものという言葉の意味がやっと理解できた気がした。
普段、便利な生活に慣れてしまっているので、たまにはこういった何も無い生活もいいかなと・・・
この宿に泊まって、非日常を体験することができ、温泉と川のせせらぎ、鳥の鳴き声に心が癒されたような気がした。