毎回欠かさず傍聴されている方の傍聴記を転載します。
(止めよう戦争への道!百万人署名運動・代表西川重則氏)ブログより転記
参考人3氏の安保関連法案「違憲」発言で大注目を浴びた衆院憲法審査会(6/4)
6月4日(木)午前9時から11時30分まで、「憲法保障をめぐる諸問題(特に①立憲主義、改正の限界及び制定経緯、
②違憲立法審査のあり方について)」をテーマとして衆議院憲法審査会が開かれました。今国会3度目、5月7日以来の開催で、
参考人として下記3氏が出席して意見聴取(各20分以内)と質疑(各会派代表15分以内)が行われました。
・早稲田大学法学学術院教授 長谷部恭男氏
・慶應義塾大学名誉教授、弁護士 小林 節氏
・早稲田大学政治経済学術院教授 笹田栄司氏
まず、参考人の長谷部氏と小林氏が①について、笹田氏が②について見解を述べた後、質疑が始まりましたが、
最初の自民党・山田賢司氏の質疑では、小林氏がいわゆる「お試し改憲」に賛意を表するなど、与党議員が心地
よく感じたであろう雰囲気の中で時間が経過していきました。
それが一変したのは、二番手、中川正春氏(民主党)の質疑のときでした。
まず、そのことを要領よく伝えた『TBS Newsi』の報道を引用しておきます(4日16時51分)。
* * *
参考人全員が新安保法制は「憲法違反」、衆院・審査会
政府与党にとって想定外の反応でしょう。衆議院の憲法審査会に参考人として出席した憲法の専門家3人が、いずれも今の
国会で審議中の新たな安全保障法制について「憲法違反」との考えを示しました。
衆議院の憲法審査会に出席した憲法の専門家3人。早稲田大学の長谷部教授は自民、公明など。同じく早稲田の笹田教授は維新。
そして慶応大学の小林名誉教授は民主と、与野党それぞれの推薦で選ばれましたが、この質問には……
「今の(国会で審議中の)安保法制、憲法違反だと思われますか」(民主党 中川正春 衆院議員)
「集団的自衛権の行使が許されるという、その点については、私は憲法違反であると考えております」(長谷部恭男 早稲田大学・法学学術院教授)
「私も違憲と考えます。憲法9条に違反します」(小林 節 慶応義塾大学名誉教授・弁護士)
「定義では踏み越えてしまったということで、違憲の考えでたっていると思います」(笹田栄司 早稲田大学・政治経済学術院教授)
自民党が推薦した参考人も含めて3人すべてが国会で審議中の新たな安保法制は「違憲」との考えを示したのです。
「ちょっと予想を超えたところがあったと思っている」(自民党 船田 元 憲法改正推進本部長)
想定外の反応に、自民党の船田憲法改正推進本部長は、佐藤国対委員長に事情を説明しましたが、佐藤氏からは
「安保法制の審議に十分配慮を」と釘を刺される事態に。また、野党は……
「議事録を精査して、明日も我が党の議員が本日の憲法審査会での議論を踏まえた質疑をする予定にしている」(民主党 長妻 昭 代表代行)
政府与党内から法案審議への影響を懸念する声もあがる中、5日の特別委員会での議論が注目されます。
* * *
<対照的なメディアの報道ぶり>
ほかにもいくつかの報道を掲げておきたいと思います。
まずは、周章狼狽ぶりが際立った『産経ニュース』から。
『産経』は、まだ審査会が開催中の11時21分に、次のような記事をウェブ上に掲載しました。さしてニュース・バリューが
あるとは思えない「押しつけ憲法論」をめぐるやり取りを、さも重大なことのように報じています。
* * *
「押しつけは歴史的事実」 「GHQ憲法」めぐり参考人質疑 衆院憲法審
衆院憲法審査会は4日、早稲田大の長谷部恭男、笹田栄司両教授と慶応大の小林節名誉教授を招き、現行憲法の制定過程
などをテーマに参考人質疑を行った。
小林氏は連合国軍総司令部(GHQ)による「押し付け憲法論」について「日本が占領されていたのだから押しつけられたのは歴史的事実だ」と指摘。
その上で「この憲法のもとで素晴らしい発展をとげたことは間違いない事実。恨み節を言い合うよりも今どうするかにエネルギーを使っていただきたい」
と続けた。
また、3氏は憲法解釈の変更によって集団的自衛権の行使などを容認する政府・与党の手法に否定的見解を示した。
* * *
そして、18時51分、52分には以下の記事を連続して配信し、論点を「人選ミス」にすり替えるとともに、菅官房長官の噴飯ものの「反論」をいち早く伝えました。
* * *
与党参考人が安保法案「違憲」 “人選ミス”で異例の事態 野党「痛快」 憲法審査会
衆院憲法審査会は4日、憲法学の専門家3人を招いて参考人質疑を行った。憲法解釈変更による集団的自衛権の行使を含む新たな安全保障関連法案
について、与党が推薦した参考人をはじめ全員が「憲法違反だ」と批判した。与党が呼んだ参考人が政府の法案を否定するという異例の事態となり、
“人選ミス”で墓穴を掘った。
自民党や公明党などが推薦した早稲田大の長谷部恭男教授は審査会で、安保法案について「憲法違反だ。従来の政府見解の基本的な論理の枠内では
説明がつかない」と明言した。
これに対し、法案作りに関わった公明党の北側一雄副代表は「憲法9条の下でどこまで自衛措置が許されるのか突き詰めて議論した」と理解を求めた。
だが、長谷部氏は「どこまで武力行使が新たに許容されるのかはっきりしていない」と批判を続けた。
関係者によると、自民党は参考人の人選を衆院法制局に一任したという。ただ、長谷部氏は安保法案に反対する有識者の団体で活動しているだけ
に調整ミスは明らか。「長谷部氏でゴーサインを出した党の責任だ。明らかな人選ミスだ」(自民党幹部)との批判が高まっている。
(後略)
違憲指摘「全く当たらない」 菅氏、衆院憲法審査会参考人質疑に反論
菅義偉官房長官は4日の会見で、同日開かれた衆院憲法審査会の参考人質疑で、3人の参考人全員が審議中の安全保障関連法案について「憲法違反」
としたことに関し、「法的安定性や論理的整合性は確保されている。全く違憲との指摘はあたらない」と述べた。
菅氏は、昨年7月に閣議決定した安保関連法案の基本方針に触れ「憲法前文、憲法第13条の趣旨をふまえれば、自国の平和を維持し、
その存立を全うするために必要な自衛措置を禁じられていない」と指摘。「そのための必要最小限の武力の行使は許容されるという、
以前の政府見解の基本的な論理の枠内で合理的に導き出すことができる」と話した。
自民党などが参考人として推薦した早稲田大の長谷部恭男教授が憲法違反だと指摘した点に関しては「全く違憲でないという著名な憲法学者もたくさんいる」
と述べ、今後の法案審議への影響は限定的との見方を示した。
* * *
この記事の最後に紹介されている菅氏の発言については、早速「著名な憲法学者」たちから、次のようなツイートが飛び交いました。
「菅氏『全く違憲でないという著名な憲法学者もたくさんいる』とのこと。その『著名な憲法学者』の名前を教えてほしい今日この頃」
(木村草太氏)。「菅官房長官によれば、『全く違憲でない』と言う『著名な』『憲法学者』が『たくさん』いるらしい。是非ご教示賜りたい」
(南野森氏)。
6日の『朝日新聞』「素粒子」はさらに辛辣に「一、二、三、いっぱい。子どもの数え方ですか。『違憲じゃない』という著名な学者もいっぱいいる、
と官房長官」とこき下ろしています。
なお、2日に発表された『安保関連法案に反対し、そのすみやかな廃案を求める憲法研究者の声明』には、5日22時現在で188名
(呼びかけ人38人と賛同者150人)が名前を連ねており、そこには長谷部氏も小林氏も笹田氏も、また木村氏も南野氏も含まれていません。
つまり、憲法学界の圧倒的多数が安保法制は違憲であるという見解で一致していることは明々白々たる事実であり、いかに苦し紛れであったとは言え、
菅氏の発言は歴史に残る虚言であったと言えるでしょう。
一方、『朝日新聞』は、5日の朝刊で大きなスペースを割いて4日の審査会の様子とその反響を伝えました。
ここまで紹介した記事と重複するところがありますが、1面と4面の記事を『朝日デジタル』から引用します。
* * *
安保法制、3学者全員「違憲」 憲法審査会で見解
(前略)
憲法改正に慎重な立場の長谷部氏は、集団的自衛権の行使を認める安保関連法案について「憲法違反だ」とし、
「個別的自衛権のみ許されるという(9条の)論理で、なぜ集団的自衛権が許されるのか」と批判。9条改正が持論の小林氏も
「憲法9条2項で、海外で軍事活動する法的資格を与えられていない。仲間の国を助けるために海外に戦争に行くのは9条違反だ」
との見解を示した。笹田氏も、従来の政府による9条解釈が「ガラス細工と言えなくもない、ぎりぎりで保ってきた」との認識を示し、
法案について「(これまでの定義を)踏み越えてしまっており違憲だ」と指摘した。
(後略)
(渡辺哲哉)
戦争参加するなら「戦争法」、集団的自衛権「範囲不明確」、憲法審査会で学者指摘
「集団的自衛権の行使は違憲」。4日の衆院憲法審査会に招かれた憲法学者3人は、安全保障関連法案に「レッドカード」を突きつけた。
政府・与党内には、今後の衆院特別委員会の審議に冷や水を浴びせかねないとの見方が広がり、「委員会の存立危機事態だ」との声も出た。
この日の憲法審査会は本来、立憲主義や憲法制定過程を巡る議論について、各党推薦の専門家から意見を聴く参考人質疑だった。しかし、
議論は衆院特別委で審議中の安保法案をめぐる議論に集中していった。
小林節・慶大名誉教授は、今の安保関連法案の本質について「国際法上の戦争に参加することになる以上は戦争法だ」と断じ、平和安全法制と
名付けた安倍晋三首相や政府の姿勢を「平和だ、安全だ、レッテル貼りだ、失礼だと言う方が失礼だ」と痛烈に批判した。
憲法や安全保障についての考え方が異なる3人の参考人だが、そろって問題視したのは閣議決定で認めた集団的自衛権の行使。集団的自衛権は
「違憲」との見方を示し、憲法改正手続きを無視した形で推し進める安倍政権の手法を批判した。
長谷部恭男・早大教授は、従来の政府解釈が個別的自衛権のみを認めてきた点を踏まえて「(閣議決定は)どこまで武力行使が許されるのかも不明確で、
立憲主義にもとる」と批判した。
笹田栄司・早大教授は、内閣の判断で憲法解釈を変えることについて、戦前のドイツでナチスの台頭を許した「ワイマール(体制)のことを思う」と言及。
専門の違憲審査の問題を踏まえて、憲法解釈については「少しクールに考える場所が必要」などと指摘した。
教授らは、新たな安保関連法案が、「戦闘現場」以外なら米軍などへの後方支援を拡充する点についても問題点を指摘した。
長谷部氏が「(憲法9条に抵触する他国との)武力行使の一体化が生ずるおそれは極めて高くなる」と発言。小林氏は、戦争への協力を銀行強盗を
手伝うことにたとえて、こう皮肉った。
「一体化そのもの。長谷部先生が銀行強盗して、僕が車で送迎すれば、一緒に強盗したことになる」
(後略)
(笹川翔平、高橋健次郎)
* * *
クローバー
さて、引用ばかりで申し訳ありませんが、最後にアッと驚く『読売新聞』の社説を紹介します。4日の審査会から中1日置いて6日の掲載ですから
相当に考え抜いた上でまとめられた文章だと思いますが、その内容たるやあまりにも低レベルで「なんともはや」という言葉しか出てきません。
『YOMIURI ONLINE』から引用します。
* * *
集団的自衛権 限定容認は憲法違反ではない
昨年7月の政府見解で決着したはずの憲法問題が今、蒸し返されたことに違和感を覚える。
中谷防衛相は安全保障関連法案審議で、集団的自衛権の限定行使について、「憲法違反にならない」と答弁した。
「これまでの憲法9条の議論との整合性を考慮し、行政府の憲法解釈の範囲内だ」とも語った。
前日の衆院憲法審査会で自民党推薦の参考人が法案を「憲法違反」と断じたことを取り上げ、法案の撤回を求めた民主党議員に、
正面から反論したものだ。
参考人の長谷部恭男早大教授は「従来の政府見解の基本的論理で説明がつかないし、法的安定性を大きく揺るがす」と述べた。
首をかしげたくなる見解である。
政府は、集団的自衛権の行使について「我が国の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険」という、
極めて厳しい要件をつけている。
この要件は、自国の存立を全うするために必要な自衛措置を容認した1959年の最高裁の砂川事件判決を踏まえたものだ。
国民の権利が根底から覆される事態に対処する、必要最小限度の武力行使は許容されるとした72年の政府見解とも合致している。
これは、内閣が持つ憲法の公権的解釈権に基づく合理的な範囲内の憲法解釈の変更だ。国会は現在、法案審議を通じて関与し、
司法も将来、違憲立法審査を行える。
まさに憲法の三権分立に沿っており、法的な安定性も確保できる。新見解が「立憲主義に反する」との野党の批判は当たるまい。
むしろ、抑制的過ぎた過去の憲法解釈を、国際・社会情勢の変化に応じて適正化したのが実態だ。かつて自衛隊の存在自体にも憲法違反との
批判があったが、今は、すっかり影を潜めている。
中谷氏は、集団的自衛権の限定行使について「やむを得ない自衛措置として初めて容認される」と述べた。
国際法上の集団的自衛権とは異なる点を認めたものだ。
抑止力を強化する観点では、本来、他国と同様、行使の全面容認が望ましかった。だが、過去の解釈との整合性などから限定容認にしたのは
現実的な選択だった。
看過できないのは、政府提出法案の内容を否定するような参考人を自民党が推薦し、混乱を招いたことだ。参考人の見識や持論を事前に点検し
ておくのは当然で、明らかな人選ミスである。
法案審議は重要な局面を迎えている。政府・与党は、もっと緊張感を持って国会に臨むべきだ。
<今こそ流れを変えるべく行動しよう>
前回5月7日の衆院審査会レポート(http://millions.blog.jp/archives/29950958.html)を、私は次のように締めくくりました。
「最近のマスコミの世論調査を見ると、安倍政権の進めている主要政策についてはことごとく『反対』が上回っており、ちょっとしたきっかけで
流れが変わる可能性があります。それを現実のものとするために、確信を持って闘っていきましょう。」
あれから約1カ月、「漏れた年金問題」も発覚し、安倍政権はたいへんな苦境に陥りつつあります。今こそ行動に立ちあがり、戦争法制の廃案、
そして安倍政権の打倒に突き進んでいきましょう。
この日の出席者は40人前後で、委員の出席率は前回より下がりました(定数は50)。参考人を招いておきながら、失礼なことだと思います。記者、
カメラマンは25人前後でやはり前回を下回り、テレビカメラは2台だけで、途中でいなくなってしまいました。傍聴者は20名強、百万人署名運動は
4名で傍聴してきました。(G)
※それにしてもこの期に及んで人選ミスとか都合のいいことを並べ立てるこの見苦しい御用メディアや政権は何なのでしょうか。
自分たちに都合の悪い意見を排除してきた当然の報いではないでしょうか。
(止めよう戦争への道!百万人署名運動・代表西川重則氏)ブログより転記
参考人3氏の安保関連法案「違憲」発言で大注目を浴びた衆院憲法審査会(6/4)
6月4日(木)午前9時から11時30分まで、「憲法保障をめぐる諸問題(特に①立憲主義、改正の限界及び制定経緯、
②違憲立法審査のあり方について)」をテーマとして衆議院憲法審査会が開かれました。今国会3度目、5月7日以来の開催で、
参考人として下記3氏が出席して意見聴取(各20分以内)と質疑(各会派代表15分以内)が行われました。
・早稲田大学法学学術院教授 長谷部恭男氏
・慶應義塾大学名誉教授、弁護士 小林 節氏
・早稲田大学政治経済学術院教授 笹田栄司氏
まず、参考人の長谷部氏と小林氏が①について、笹田氏が②について見解を述べた後、質疑が始まりましたが、
最初の自民党・山田賢司氏の質疑では、小林氏がいわゆる「お試し改憲」に賛意を表するなど、与党議員が心地
よく感じたであろう雰囲気の中で時間が経過していきました。
それが一変したのは、二番手、中川正春氏(民主党)の質疑のときでした。
まず、そのことを要領よく伝えた『TBS Newsi』の報道を引用しておきます(4日16時51分)。
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参考人全員が新安保法制は「憲法違反」、衆院・審査会
政府与党にとって想定外の反応でしょう。衆議院の憲法審査会に参考人として出席した憲法の専門家3人が、いずれも今の
国会で審議中の新たな安全保障法制について「憲法違反」との考えを示しました。
衆議院の憲法審査会に出席した憲法の専門家3人。早稲田大学の長谷部教授は自民、公明など。同じく早稲田の笹田教授は維新。
そして慶応大学の小林名誉教授は民主と、与野党それぞれの推薦で選ばれましたが、この質問には……
「今の(国会で審議中の)安保法制、憲法違反だと思われますか」(民主党 中川正春 衆院議員)
「集団的自衛権の行使が許されるという、その点については、私は憲法違反であると考えております」(長谷部恭男 早稲田大学・法学学術院教授)
「私も違憲と考えます。憲法9条に違反します」(小林 節 慶応義塾大学名誉教授・弁護士)
「定義では踏み越えてしまったということで、違憲の考えでたっていると思います」(笹田栄司 早稲田大学・政治経済学術院教授)
自民党が推薦した参考人も含めて3人すべてが国会で審議中の新たな安保法制は「違憲」との考えを示したのです。
「ちょっと予想を超えたところがあったと思っている」(自民党 船田 元 憲法改正推進本部長)
想定外の反応に、自民党の船田憲法改正推進本部長は、佐藤国対委員長に事情を説明しましたが、佐藤氏からは
「安保法制の審議に十分配慮を」と釘を刺される事態に。また、野党は……
「議事録を精査して、明日も我が党の議員が本日の憲法審査会での議論を踏まえた質疑をする予定にしている」(民主党 長妻 昭 代表代行)
政府与党内から法案審議への影響を懸念する声もあがる中、5日の特別委員会での議論が注目されます。
* * *
<対照的なメディアの報道ぶり>
ほかにもいくつかの報道を掲げておきたいと思います。
まずは、周章狼狽ぶりが際立った『産経ニュース』から。
『産経』は、まだ審査会が開催中の11時21分に、次のような記事をウェブ上に掲載しました。さしてニュース・バリューが
あるとは思えない「押しつけ憲法論」をめぐるやり取りを、さも重大なことのように報じています。
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「押しつけは歴史的事実」 「GHQ憲法」めぐり参考人質疑 衆院憲法審
衆院憲法審査会は4日、早稲田大の長谷部恭男、笹田栄司両教授と慶応大の小林節名誉教授を招き、現行憲法の制定過程
などをテーマに参考人質疑を行った。
小林氏は連合国軍総司令部(GHQ)による「押し付け憲法論」について「日本が占領されていたのだから押しつけられたのは歴史的事実だ」と指摘。
その上で「この憲法のもとで素晴らしい発展をとげたことは間違いない事実。恨み節を言い合うよりも今どうするかにエネルギーを使っていただきたい」
と続けた。
また、3氏は憲法解釈の変更によって集団的自衛権の行使などを容認する政府・与党の手法に否定的見解を示した。
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そして、18時51分、52分には以下の記事を連続して配信し、論点を「人選ミス」にすり替えるとともに、菅官房長官の噴飯ものの「反論」をいち早く伝えました。
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与党参考人が安保法案「違憲」 “人選ミス”で異例の事態 野党「痛快」 憲法審査会
衆院憲法審査会は4日、憲法学の専門家3人を招いて参考人質疑を行った。憲法解釈変更による集団的自衛権の行使を含む新たな安全保障関連法案
について、与党が推薦した参考人をはじめ全員が「憲法違反だ」と批判した。与党が呼んだ参考人が政府の法案を否定するという異例の事態となり、
“人選ミス”で墓穴を掘った。
自民党や公明党などが推薦した早稲田大の長谷部恭男教授は審査会で、安保法案について「憲法違反だ。従来の政府見解の基本的な論理の枠内では
説明がつかない」と明言した。
これに対し、法案作りに関わった公明党の北側一雄副代表は「憲法9条の下でどこまで自衛措置が許されるのか突き詰めて議論した」と理解を求めた。
だが、長谷部氏は「どこまで武力行使が新たに許容されるのかはっきりしていない」と批判を続けた。
関係者によると、自民党は参考人の人選を衆院法制局に一任したという。ただ、長谷部氏は安保法案に反対する有識者の団体で活動しているだけ
に調整ミスは明らか。「長谷部氏でゴーサインを出した党の責任だ。明らかな人選ミスだ」(自民党幹部)との批判が高まっている。
(後略)
違憲指摘「全く当たらない」 菅氏、衆院憲法審査会参考人質疑に反論
菅義偉官房長官は4日の会見で、同日開かれた衆院憲法審査会の参考人質疑で、3人の参考人全員が審議中の安全保障関連法案について「憲法違反」
としたことに関し、「法的安定性や論理的整合性は確保されている。全く違憲との指摘はあたらない」と述べた。
菅氏は、昨年7月に閣議決定した安保関連法案の基本方針に触れ「憲法前文、憲法第13条の趣旨をふまえれば、自国の平和を維持し、
その存立を全うするために必要な自衛措置を禁じられていない」と指摘。「そのための必要最小限の武力の行使は許容されるという、
以前の政府見解の基本的な論理の枠内で合理的に導き出すことができる」と話した。
自民党などが参考人として推薦した早稲田大の長谷部恭男教授が憲法違反だと指摘した点に関しては「全く違憲でないという著名な憲法学者もたくさんいる」
と述べ、今後の法案審議への影響は限定的との見方を示した。
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この記事の最後に紹介されている菅氏の発言については、早速「著名な憲法学者」たちから、次のようなツイートが飛び交いました。
「菅氏『全く違憲でないという著名な憲法学者もたくさんいる』とのこと。その『著名な憲法学者』の名前を教えてほしい今日この頃」
(木村草太氏)。「菅官房長官によれば、『全く違憲でない』と言う『著名な』『憲法学者』が『たくさん』いるらしい。是非ご教示賜りたい」
(南野森氏)。
6日の『朝日新聞』「素粒子」はさらに辛辣に「一、二、三、いっぱい。子どもの数え方ですか。『違憲じゃない』という著名な学者もいっぱいいる、
と官房長官」とこき下ろしています。
なお、2日に発表された『安保関連法案に反対し、そのすみやかな廃案を求める憲法研究者の声明』には、5日22時現在で188名
(呼びかけ人38人と賛同者150人)が名前を連ねており、そこには長谷部氏も小林氏も笹田氏も、また木村氏も南野氏も含まれていません。
つまり、憲法学界の圧倒的多数が安保法制は違憲であるという見解で一致していることは明々白々たる事実であり、いかに苦し紛れであったとは言え、
菅氏の発言は歴史に残る虚言であったと言えるでしょう。
一方、『朝日新聞』は、5日の朝刊で大きなスペースを割いて4日の審査会の様子とその反響を伝えました。
ここまで紹介した記事と重複するところがありますが、1面と4面の記事を『朝日デジタル』から引用します。
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安保法制、3学者全員「違憲」 憲法審査会で見解
(前略)
憲法改正に慎重な立場の長谷部氏は、集団的自衛権の行使を認める安保関連法案について「憲法違反だ」とし、
「個別的自衛権のみ許されるという(9条の)論理で、なぜ集団的自衛権が許されるのか」と批判。9条改正が持論の小林氏も
「憲法9条2項で、海外で軍事活動する法的資格を与えられていない。仲間の国を助けるために海外に戦争に行くのは9条違反だ」
との見解を示した。笹田氏も、従来の政府による9条解釈が「ガラス細工と言えなくもない、ぎりぎりで保ってきた」との認識を示し、
法案について「(これまでの定義を)踏み越えてしまっており違憲だ」と指摘した。
(後略)
(渡辺哲哉)
戦争参加するなら「戦争法」、集団的自衛権「範囲不明確」、憲法審査会で学者指摘
「集団的自衛権の行使は違憲」。4日の衆院憲法審査会に招かれた憲法学者3人は、安全保障関連法案に「レッドカード」を突きつけた。
政府・与党内には、今後の衆院特別委員会の審議に冷や水を浴びせかねないとの見方が広がり、「委員会の存立危機事態だ」との声も出た。
この日の憲法審査会は本来、立憲主義や憲法制定過程を巡る議論について、各党推薦の専門家から意見を聴く参考人質疑だった。しかし、
議論は衆院特別委で審議中の安保法案をめぐる議論に集中していった。
小林節・慶大名誉教授は、今の安保関連法案の本質について「国際法上の戦争に参加することになる以上は戦争法だ」と断じ、平和安全法制と
名付けた安倍晋三首相や政府の姿勢を「平和だ、安全だ、レッテル貼りだ、失礼だと言う方が失礼だ」と痛烈に批判した。
憲法や安全保障についての考え方が異なる3人の参考人だが、そろって問題視したのは閣議決定で認めた集団的自衛権の行使。集団的自衛権は
「違憲」との見方を示し、憲法改正手続きを無視した形で推し進める安倍政権の手法を批判した。
長谷部恭男・早大教授は、従来の政府解釈が個別的自衛権のみを認めてきた点を踏まえて「(閣議決定は)どこまで武力行使が許されるのかも不明確で、
立憲主義にもとる」と批判した。
笹田栄司・早大教授は、内閣の判断で憲法解釈を変えることについて、戦前のドイツでナチスの台頭を許した「ワイマール(体制)のことを思う」と言及。
専門の違憲審査の問題を踏まえて、憲法解釈については「少しクールに考える場所が必要」などと指摘した。
教授らは、新たな安保関連法案が、「戦闘現場」以外なら米軍などへの後方支援を拡充する点についても問題点を指摘した。
長谷部氏が「(憲法9条に抵触する他国との)武力行使の一体化が生ずるおそれは極めて高くなる」と発言。小林氏は、戦争への協力を銀行強盗を
手伝うことにたとえて、こう皮肉った。
「一体化そのもの。長谷部先生が銀行強盗して、僕が車で送迎すれば、一緒に強盗したことになる」
(後略)
(笹川翔平、高橋健次郎)
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クローバー
さて、引用ばかりで申し訳ありませんが、最後にアッと驚く『読売新聞』の社説を紹介します。4日の審査会から中1日置いて6日の掲載ですから
相当に考え抜いた上でまとめられた文章だと思いますが、その内容たるやあまりにも低レベルで「なんともはや」という言葉しか出てきません。
『YOMIURI ONLINE』から引用します。
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集団的自衛権 限定容認は憲法違反ではない
昨年7月の政府見解で決着したはずの憲法問題が今、蒸し返されたことに違和感を覚える。
中谷防衛相は安全保障関連法案審議で、集団的自衛権の限定行使について、「憲法違反にならない」と答弁した。
「これまでの憲法9条の議論との整合性を考慮し、行政府の憲法解釈の範囲内だ」とも語った。
前日の衆院憲法審査会で自民党推薦の参考人が法案を「憲法違反」と断じたことを取り上げ、法案の撤回を求めた民主党議員に、
正面から反論したものだ。
参考人の長谷部恭男早大教授は「従来の政府見解の基本的論理で説明がつかないし、法的安定性を大きく揺るがす」と述べた。
首をかしげたくなる見解である。
政府は、集団的自衛権の行使について「我が国の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険」という、
極めて厳しい要件をつけている。
この要件は、自国の存立を全うするために必要な自衛措置を容認した1959年の最高裁の砂川事件判決を踏まえたものだ。
国民の権利が根底から覆される事態に対処する、必要最小限度の武力行使は許容されるとした72年の政府見解とも合致している。
これは、内閣が持つ憲法の公権的解釈権に基づく合理的な範囲内の憲法解釈の変更だ。国会は現在、法案審議を通じて関与し、
司法も将来、違憲立法審査を行える。
まさに憲法の三権分立に沿っており、法的な安定性も確保できる。新見解が「立憲主義に反する」との野党の批判は当たるまい。
むしろ、抑制的過ぎた過去の憲法解釈を、国際・社会情勢の変化に応じて適正化したのが実態だ。かつて自衛隊の存在自体にも憲法違反との
批判があったが、今は、すっかり影を潜めている。
中谷氏は、集団的自衛権の限定行使について「やむを得ない自衛措置として初めて容認される」と述べた。
国際法上の集団的自衛権とは異なる点を認めたものだ。
抑止力を強化する観点では、本来、他国と同様、行使の全面容認が望ましかった。だが、過去の解釈との整合性などから限定容認にしたのは
現実的な選択だった。
看過できないのは、政府提出法案の内容を否定するような参考人を自民党が推薦し、混乱を招いたことだ。参考人の見識や持論を事前に点検し
ておくのは当然で、明らかな人選ミスである。
法案審議は重要な局面を迎えている。政府・与党は、もっと緊張感を持って国会に臨むべきだ。
<今こそ流れを変えるべく行動しよう>
前回5月7日の衆院審査会レポート(http://millions.blog.jp/archives/29950958.html)を、私は次のように締めくくりました。
「最近のマスコミの世論調査を見ると、安倍政権の進めている主要政策についてはことごとく『反対』が上回っており、ちょっとしたきっかけで
流れが変わる可能性があります。それを現実のものとするために、確信を持って闘っていきましょう。」
あれから約1カ月、「漏れた年金問題」も発覚し、安倍政権はたいへんな苦境に陥りつつあります。今こそ行動に立ちあがり、戦争法制の廃案、
そして安倍政権の打倒に突き進んでいきましょう。
この日の出席者は40人前後で、委員の出席率は前回より下がりました(定数は50)。参考人を招いておきながら、失礼なことだと思います。記者、
カメラマンは25人前後でやはり前回を下回り、テレビカメラは2台だけで、途中でいなくなってしまいました。傍聴者は20名強、百万人署名運動は
4名で傍聴してきました。(G)
※それにしてもこの期に及んで人選ミスとか都合のいいことを並べ立てるこの見苦しい御用メディアや政権は何なのでしょうか。
自分たちに都合の悪い意見を排除してきた当然の報いではないでしょうか。
愛すべき国の防衛に携わった者としては、
許せない者たちだ。
だが不思議と「米国に日本を売る」者が咎
められない。
CIAからカネをもらった岸信介・佐藤栄作。
CIAからコードネームまで拝領した正力松太郎(元読売新聞社主)
その末裔がいま日本を売ろうとしている。