習志野湾岸9条の会

STOP戦争への道 9条を変えるな

参院憲法審査会(国民投票法)

2014年05月25日 | 憲法審査会
毎回欠かさず傍聴されている方の傍聴記を引き続き転載します

西川重則氏(平和遺族会全国連絡会代表、止めよう戦争への道!百万人署名運動事務局長)傍聴記より


参議院では、5月14日(水)に憲法審査会が開かれて衆議院で可決された国民投票法改定案の趣旨説明が行われ、
21日(水)15時過ぎからの審査会で実質的な審議が始まりました。この日の審議時間は3時間弱、百万人署名運動では3名で傍聴してきました。
この日は、改定案の発議者である7党、8名の衆議院議員に対する質疑が行われました。委員は30~40人が出席していましたが(定数は45名)、
発議者は開会時には8人全員が着席していたものの最後は3人だけになってしまい、ずっと出席していたのは船田元氏(自民)ひとりでした。
最初は20人近くいた傍聴者は、閉会時には10人そこそこに減っていました。
質疑に立ったのは、発言順に藤末健三氏(民主)、仁比聡平氏(共産)、福島みずほ氏(社民)、中川雅治氏(自民)、西田実仁氏(公明)、
清水貴之氏(維新・結い:両党は参議院で統一会派を組んでいます)、松田公太氏(みんな)の7氏でした。
事情は分かりませんが新党改革の質疑はなく、同党の委員である浜田和幸氏は一度も議場に姿を見せませんでした。生活の党は参院の審査会
に委員を出していませんが、発議者の一人として鈴木克昌衆院議員が出席していて、答弁という形で発言する機会がありました。
質疑の持ち時間は、改定案に反対している仁比氏(共産)が45分、福島氏(社民)が30分で、発議者と同じ会派に属する他の委員は20分ずつでした。
各党の主張
『NHK NEWSWEB』で各会派の発言者の意見がまんべんなく紹介されていましたので、まず、その記事を引用しておきます。

▽ 自民党の中川雅治氏は、国民投票の投票年齢を引き下げることと民法の成人年齢との関係について「与野党8党の合意では民法の成人年齢
をどうするかは触れていない。成人年齢の引き下げは、国民の意識や環境整備が重要であり慎重な検討が必要だ」と述べました。

▽ 民主党の藤末健三氏は、集団的自衛権の行使を容認するための憲法解釈の変更について「憲法の基本原理に関わる問題から国民投票を回避
しようとするものだ。国民主権、立憲主義の否定であり、国民投票の制度を整備する意味が失われつつある」と述べました。

▽ 公明党の西田実仁氏は、公務員が賛否を知人に働きかける勧誘運動の在り方などを巡って、「憲法改正は、国民が直接制定に関わる最高法規
の改正だ。公務員も国の構成員なので、市民的、政治的な権利を拡大する方向で議論すべきだ」と述べました。

▽ みんなの党の松田公太氏は、国民投票法の改正案について「憲法改正に必要なもので、とても重要だ。投票年齢を18歳以上に引き下げること
になっているが、世界のすう勢だ」と述べました。

▽共産党の仁比聡平氏は、国民投票法の改正案について「選挙権が得られる年齢などの引き下げを棚上げし、国民投票の投票年齢だけを確定
させるものだ。欠陥をそのままにすることは許されず、徹底した審議が必要だ」と述べました。

▽ 日本維新の会の清水貴之氏は、公務員が賛否を知人に働きかける勧誘運動の在り方に関連して「当初の与党案では、組織による勧誘運動は
禁止されていたが、民主党との交渉のなかで、明記されずに検討課題として付則に盛り込まれた。われわれは一定の制限は必要だと考えている」
と述べました。

▽ 社民党の福島みずほ氏は、国民投票法の改正案について「付則で、公務員の政治的行為の規制の在り方や選挙権が得られる年齢の引き下げ
を今後検討するとなっていて、未完成だ。成立しても国民投票を実施できる状況ではない」と述べました。

▽ 答弁者として出席した結いの党の畠中光成衆議院議員は、集団的自衛権の行使を容認するための憲法解釈の変更について「個別的自衛権の
範囲でどの程度対応できるのかをしっかりと検討し、どうしても集団的自衛権が必要だということならば排除しないが、行使できる範囲は極め
て狭い」と述べました。

▽ 答弁者として出席した生活の党の鈴木克昌衆議院議員は、集団的自衛権の行使を容認するための憲法解釈の変更について「憲法9条の解釈は、
国会と政府の共同作業で練り上げられてきたものであり、国会審議を経ることなく、一内閣が閣議決定によって軽々に変更することは許されない」と述べました。

改定案の問題点
次に、『しんぶん赤旗』のウェブサイトから、仁比聡平氏(共産)の発言の要旨を紹介します。今回の改定案の問題点が簡潔に整理
されていると思います。
自民、民主などが共同提出した改憲手続き法(国民投票法)改定案の質疑が21日、参院憲法審査会で始まりました。日本共産党の仁比聡平議員は
、同改定案が憲法に照らして根本的欠陥をもつ現行法の問題をそのままにし、かえって逆行する中身となっており、「背理に背理を重ねるものだ」
と批判しました。
仁比氏は、同改定案発議者が「憲法改正には時間がかかる」と解釈改憲を容認しながら、「憲法改正の動きにブレーキがかかってはならない」と、
ともかく改憲手続きを動かそうとしている姿勢をただしました。
発議者の船田元議員(自民党)は「憲法の重大な事項を国会の議論だけで変更することには疑問がある」といいながら、「総選挙で解釈改憲の
是非を問うことを国民投票にかえて採用することは荒唐無稽ではない」と弁明しました。
仁比氏が「憲法の根幹をなす9条を解釈で変えられるとなれば、権力への歯止めがなくなる」と批判すると、発議者はまともに答えられませんでした。
仁比氏は、同改定案が現行法の根本的欠陥を放置したまま、改憲手続きを動かそうとしていると批判。選挙権年齢などを18歳へ引き下げることを
棚上げにしていることや、国民投票運動の自由に新たな規制を加えていることについて、「立法時の発議者の意思にも反する」と指摘しました。
「組織」による国民投票運動への規制を検討条項に盛り込んでいる改定案では、労働組合やNPO(非政府組織)、宗教団体の国民投票運動も「組織」
として規制対象にしようとしていることが、仁比氏の追及で明らかになりました。

本心では解釈改憲に反対?船田元氏の発言

社民党の福島みずほ氏も、国民投票法改定案を批判するとともに、安倍政権が進めようとしている解釈改憲に対する反対論を展開しました。
その中から、次のようなやりとりを紹介したいと思います。

▽ 福島みずほ氏:衆議院でこの法案が可決された後、安保法制懇の報告書と総理の記者会見がありました。明文改憲、解釈改憲、立憲主義をどう考えるか、
きわめて重要な問題です。

船田さんは3月13日の自民党総務会で、集団的自衛権の行使容認のために拡大解釈を自由にやるなら憲法改正は必要ないと述べ、解釈改憲で明文改憲の
機運がしぼむことを懸念されています。だったら解釈改憲なんかやるべきじゃないですよね。

▽ 船田元氏:私の総務会での発言は、あくまで一般論で申し上げたものです。憲法解釈が時の政府あるいは為政者によって自由に行われるということ
であれば、憲法改正の必要もないしその機会も与えられなくなるという一般論を申し上げた次第です。これは、私自身今でもそう思っております。

しかしながら、今回の集団的自衛権の行使に係る憲法解釈の変更については、これはあくまで憲法の解釈を変えるということで、必ずしも憲法改正その
ものの議論を「でっちあげ」て、あのー、それを棚上げにしてやってしまおうということではけっしてないと思っています。

私が言いたかったのは、憲法解釈の変更ではあるけれども、これは重大な変更である。だから、その意味では、「国民に信を問う」ほどの心構え、
そして覚悟、そういうものがなければこの議論というのはなかなか前に進みませんよということを申し上げたかったわけです。

▽ 福島みずほ氏:国民の信を問うのであれば国民投票じゃないですか。国政選挙なんかじゃないですよね。
憲法9条に関する集団的自衛権の行使を容認するかどうかはきわめて重要なテーマです。だとすれば信を問え、国民投票でやれ、総理の解釈改憲
は許せないということに論理的になりませんか。

いかがでしょうか。上記の船田氏の発言中の「でっちあげ」という言葉、氏はすぐに「棚上げ」と言い換えましたが、これは船田氏が思わず本
心を吐露してしまったものだと感じました(もちろん後日公開される「会議録」にこの言葉は残されないでしょう)。
「国民に信を問う」という表現からも、氏が内閣の憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認に批判的な考えを持っていることは明らか
だと思います。 船田氏は今回の改定案の発議者の中心人物で、憲法調査会、憲法調査特別委員会でも、会長、委員長であった中山太郎氏の下で
実務を取り仕切っていました。改定案の審議では、反対派の委員から過去の調査会、特別委員会での発言と現在の立場との食い違いをしばしば
指摘され、苦心しながら答弁を重ねていますが、今安倍政権が進めようとしている解釈改憲は、改憲問題に精通している船田氏をもってしても
どうにも取り繕いようのないほどデタラメだということだと思います。

あまりにも低レベルな改憲派の議論

さて、本レポートの最後に、馬場伸幸氏(維新の衆院議員、発議者として出席)の驚くべき発言を紹介して、改憲勢力の議論の水準を
明らかにしておきましょう。

▽ 馬場伸幸氏:(憲法教育の重要性について)大切なのは、本当に実を伴った内容の憲法教育がなされているかどうかという点であると思います。
18歳投票権を機として、児童・生徒が日本国憲法に関する正確な知識を得、その前提として憲法に対する興味をかき立てられるよう、我々としても
関係法制の整備に向けて積極的に提案していくことも含め努力していきたいと考えています。

氏は、「児童・生徒が日本国憲法に関する正確な知識を得」れば、その多数が改憲派の主張に賛成するようになると確信しているようですが、
いったいどのような憲法教育をイメージしているのでしょうか?

今後参議院の憲法審査会は急ピッチで開催され、5月26日に参考人質疑、28日に発議者に対する質疑、6月2日に政府に対する質疑、4日に2回目の
参考人質疑が行われることになっています。
安倍政権は今国会で何としても国民投票法を動かせるようにしようと必死です。
私たちとしては、こうした現状を暴露しながら、解釈改憲絶対阻止、安倍政権打倒の運動を一層盛り上げていかなければならないと思います。(G)

●憲法審査会の傍聴を希望の方は、前日の昼までに百万人署名運動事務局までご連絡下さい。

T/F 03-5211-5415
メール million@mqc.biglobe.ne.jp