もしも いつか

私は小さい頃いろいろと母を困らせていたようです
ある日のことデパートで和服を着て立っている美しいマネキン人形を見て
買って欲しいと駄々をこねたそうです
幼い女の子が大きなデパートに入って急に気が大きくなったのでしょうか
若かった母も困ったでしょう
その種の話題は直ぐに親類中の笑い話になっていたようです

最近は認知症のこと切実に心配するこの頃です
そしていつか行く道と思ったりして
だから時に主人に要望するのです
もしも私に判断が難しくなって謂わば認知症になったなら
その時は私が言うことを頭から否定しないで一度は聞き入れて欲しいと
認知症になるとつよく否定されるとパニック状態になると聞いたこと
があるからです

私は幼い頃マネキンをねだったように突拍子もないことを要望するかも
しれないです
もし私が「富士山を買おうと思う」と言ったら
「あんな大きなもの買うて何処に置くんじゃあ
第一どうやって運ぶんか　それよりも日本一の山じゃ
買わりゃあせんよ」
なんて言わないで下さい

「富士山か　ええのう　傍にあればいつも眺められてええのお
どの買い物袋で買いに行くかのお」と言ってください
そして買い物袋あれこれ探してください
その時はきっと私も一緒になって買い物袋探すでしょう
ひとしきり探したら私は草臥れて
きっと富士山を買うことをすっかり忘れて一緒に探してもらったことに納得して
ほかの事をはじめるかもしれません

深刻になってしまいます
できればそんな日が来なければいいと思います



野牡丹の花もうぼつぼつ咲き終わる頃かも