花守

四季の花はそれぞれやさしく咲きこころなごみます
折々に咲く花を守りこころかすめる思い出など綴ってみたいです

まぼろし

2016年04月20日 08時14分02秒 | 母を想う
NHK朝の連続ドラマ「あさが来た」では最後のシーンで主人公あさが新次郎のまぼろしを見る場面で終わりました
もう半世紀も以前の名画「慕情」でも思い出の草原で大樹の陰に主人公(女優ジョニファジョーンズ扮する)が相手役(俳優ウイリアムホールデン扮する)のまぼろしをみた場面では多くの観客が感動の涙を流したと思います

人はどんな時まぼろしをみるのでしょう
私は母を亡くしてその後相次いで兄も亡くしたころ どうしようもなく寂しくて 悲しくて恋しくてどうにもこころが定まらない時期がしばらく続きました
そんな時はよくJRに乗ってお墓参りに出かけていました 
墓前でいろいろ想い喋りお参りをすませてお墓のあるお寺を出て帰り道に商店街を歩いていたときのことです それは商店街の曲がり角であるビルの前に来たときでした
前方から母がそれはそれはきれいな和服姿でこぼれんばかりの嬉しそうな笑顔で今にも転びそうな急ぎ足で私の前にやってくるではありませんか
そして言うのです
「もう いいからね」と
これからは“そんなに度々お墓参りをしなくてもいいからね”ということかしらと私は思いました
すると今度は何処からやって来たのか兄が私の左肩に肘を乗せて私にもたれかかるような姿勢でこう言うのです
「本当よ」と
昼下がりの商店街の歩道での出来事です
一瞬周囲の騒音が消え失せて時も止まったような静寂のなかで私はハッとわれにかえりました そのころの私はいつも寂しくて悲しくて恋しくてこころが飢えていたのは確かです

そして悲しいけれどもいつまでも恋しい影を追うのではなくて
亡き母や兄からこれまでに与えられた沢山の恩愛を感謝して与えられた思い出を
胸に抱いて生きていくことが大切であり そのことを気つかされたのだと
私は受け止めました
 
それからはお墓参りのあとでその商店街を歩くとき母と兄のまぼろしを見た場所は
此処だったなといつも思い出すのです
私にとってはまぼろしをみたことは喪失感から立ち直りのきっかけになったと思っています でもこんなことを思い出していると今でも悲しい性かな私はすぐに涙がでてしまうのです



牡丹の花大きく咲きました