今日,すみだトリフォニーホールで,フランス=ブリュッヘン指揮新日本フィルハーモニー交響楽団の演奏会を聴いてきました。
待ちに待った演奏会です。
まずは結論を申し上げると,ブリュッヘンらしさの遺憾なく発揮されたとても素晴らしい演奏でした。
明日(土)午後3時から,本日と同じ演目で演奏会が行われます(場所もトリフォニーホール)。
拙Blogを読まれて関心を持たれた方は,是非,足を運んで頂きたいと思います。
今日の客席の入具合(7割程度)から考えると,まだ残券があるのではないでしょうか(外していたらごめんなさい。)。
演目は,次のとおりです。
1 ラモー作曲 歌劇『ナイス』序曲
2 モーツァルト作曲 交響曲第31番ニ長調『パリ』K.297
3 シューマン作曲 交響曲第2番ハ長調op.61
新日本フィルはもちろん現代楽器を使用していますが,演奏方法は,ビブラートを殆ど使わない古楽器奏法そのもの。
ガット弦ではないとは思うのですが,古楽器の音色にかなり近い,柔らかで輝かしい響きが奏でられます。
ラモーのほのぼのとした序曲で始まり,ブリュッヘンの得意とするモーツァルトへ続きます。
『パリ』には,モーツァルト自身による改訂前後2種類の第2楽章アンダンテがありますが,本演奏会では,この楽章の新旧両版を続けて演奏します。
やはり新版の方が,きらびやかで華のある楽曲に仕上がっており(モーツァルト自身も新版を好み,出版譜にこちらを採用したらしい。),天才モーツァルトも推敲をしたのかと感慨深く感じました。
もちろん演奏も,若々しく,溌剌として,モーツァルトの清らかな音楽を巧みに弾き出しており,心がうきうきするような演奏。
特にスタッカートが心憎いばかりに決まります。
新日本フィルではなく,18世紀オーケストラを聴いているかのような錯覚に陥りそう。
至福のひととき…
今日の注目作品は,ブリュッヘン自身初の指揮となるシューマンの交響曲第2番。
世界的にも注目を集めていたとのことです。
シューマンの交響曲は,構成が脆弱で,管弦楽の使い方も垢抜けなくて,時として空中分解してしまいそうに感じることがあります。
この感覚は,これまで,名演といわれるシノーポリの演奏や,バーンスタイン,セルの演奏を聴いても一向に拭えませんでした。
が,今日のブリュッヘンの演奏は,シューマンの音楽をじっくりと分析し,音楽の各場面,各パートの役割・位置付けを詳細に検討した上で,繊細に組立てたかのようなもので,シューマンの伝えたかったことを現在に再現したかのように感じられる極めて素晴らしい演奏でした。
この演奏を聴くだけでも価値があります。
私は,楽器に関しては全くの素人で,音楽教育も受けていませんが,素人ながら考えるに,現代楽器でビブラートをギンギンに効かせてシューマンの演奏を行うと,それぞれのパーツがグシャッとごちゃ混ぜになって,混沌とし,一体何を伝えたいのか分からなくなるように思われるのです(特に第1楽章にそのような印象を強く持ちます。)。
それがシューマンの交響曲の脆弱さといえばそれまでなのですが,今日のビブラートを極力抑えたブリュッヘンの演奏では,この最大の弱点が見事に解消されていたように思います。
まずは,ブリュッヘンならではの繊細で見事な構成力。
瞬間瞬間の「音」が何のためにあるのかさえ感じさせるとともに,瞬時にして色調が微妙に,時として大胆に変化します。
そして,各パーツの活き活きとした演奏には,新日本フィルの基礎体力を感じました。
第3楽章は,シューマンが書いた最も清純で悲しくも深い憧れに満ちた美しい音楽の一つなのですが,ここでも,ロマン性を遺憾なく発揮した演奏を聴くことができ,胸がチクチクと痛むほどです。
フィナーレでは,主題が千変万化し,リズムも錯綜するのですが,これが場面ごとに見事に処理されています。
ブリュッヘンの頭の中では,局面が変わる毎に,まるでスライドが切り替わるかのように,意識やイメージが「カチッ」と切り替わるのではないか,そう思わせるような明快な演奏です。
それだけではなく,終局へ向けての盛り上がりにも凄みを感じました。
文句なしの名演奏です。
ブリュッヘンも,3回目のカーテンコールの登場では,客席から向かって左ウィング端(一番オケ寄り)のお客さん(おそらく関係者)に,オーケーサインを出していたので,彼自身にとっても満足のいく演奏だったのだと思います。
明日は,今日と同じ演目,そして,来週金曜日には,サントリーホールでシューベルトの「未完成」と「グレイト」が演奏されます。
ブリュッヘンのシューベルトは,ディスクになっていますが,こちらもシューベルトの清々しさを強く印象づける名演奏でした。
来週が待ち遠しくてなりません。
待ちに待った演奏会です。
まずは結論を申し上げると,ブリュッヘンらしさの遺憾なく発揮されたとても素晴らしい演奏でした。
明日(土)午後3時から,本日と同じ演目で演奏会が行われます(場所もトリフォニーホール)。
拙Blogを読まれて関心を持たれた方は,是非,足を運んで頂きたいと思います。
今日の客席の入具合(7割程度)から考えると,まだ残券があるのではないでしょうか(外していたらごめんなさい。)。
演目は,次のとおりです。
1 ラモー作曲 歌劇『ナイス』序曲
2 モーツァルト作曲 交響曲第31番ニ長調『パリ』K.297
3 シューマン作曲 交響曲第2番ハ長調op.61
新日本フィルはもちろん現代楽器を使用していますが,演奏方法は,ビブラートを殆ど使わない古楽器奏法そのもの。
ガット弦ではないとは思うのですが,古楽器の音色にかなり近い,柔らかで輝かしい響きが奏でられます。
ラモーのほのぼのとした序曲で始まり,ブリュッヘンの得意とするモーツァルトへ続きます。
『パリ』には,モーツァルト自身による改訂前後2種類の第2楽章アンダンテがありますが,本演奏会では,この楽章の新旧両版を続けて演奏します。
やはり新版の方が,きらびやかで華のある楽曲に仕上がっており(モーツァルト自身も新版を好み,出版譜にこちらを採用したらしい。),天才モーツァルトも推敲をしたのかと感慨深く感じました。
もちろん演奏も,若々しく,溌剌として,モーツァルトの清らかな音楽を巧みに弾き出しており,心がうきうきするような演奏。
特にスタッカートが心憎いばかりに決まります。
新日本フィルではなく,18世紀オーケストラを聴いているかのような錯覚に陥りそう。
至福のひととき…
今日の注目作品は,ブリュッヘン自身初の指揮となるシューマンの交響曲第2番。
世界的にも注目を集めていたとのことです。
シューマンの交響曲は,構成が脆弱で,管弦楽の使い方も垢抜けなくて,時として空中分解してしまいそうに感じることがあります。
この感覚は,これまで,名演といわれるシノーポリの演奏や,バーンスタイン,セルの演奏を聴いても一向に拭えませんでした。
が,今日のブリュッヘンの演奏は,シューマンの音楽をじっくりと分析し,音楽の各場面,各パートの役割・位置付けを詳細に検討した上で,繊細に組立てたかのようなもので,シューマンの伝えたかったことを現在に再現したかのように感じられる極めて素晴らしい演奏でした。
この演奏を聴くだけでも価値があります。
私は,楽器に関しては全くの素人で,音楽教育も受けていませんが,素人ながら考えるに,現代楽器でビブラートをギンギンに効かせてシューマンの演奏を行うと,それぞれのパーツがグシャッとごちゃ混ぜになって,混沌とし,一体何を伝えたいのか分からなくなるように思われるのです(特に第1楽章にそのような印象を強く持ちます。)。
それがシューマンの交響曲の脆弱さといえばそれまでなのですが,今日のビブラートを極力抑えたブリュッヘンの演奏では,この最大の弱点が見事に解消されていたように思います。
まずは,ブリュッヘンならではの繊細で見事な構成力。
瞬間瞬間の「音」が何のためにあるのかさえ感じさせるとともに,瞬時にして色調が微妙に,時として大胆に変化します。
そして,各パーツの活き活きとした演奏には,新日本フィルの基礎体力を感じました。
第3楽章は,シューマンが書いた最も清純で悲しくも深い憧れに満ちた美しい音楽の一つなのですが,ここでも,ロマン性を遺憾なく発揮した演奏を聴くことができ,胸がチクチクと痛むほどです。
フィナーレでは,主題が千変万化し,リズムも錯綜するのですが,これが場面ごとに見事に処理されています。
ブリュッヘンの頭の中では,局面が変わる毎に,まるでスライドが切り替わるかのように,意識やイメージが「カチッ」と切り替わるのではないか,そう思わせるような明快な演奏です。
それだけではなく,終局へ向けての盛り上がりにも凄みを感じました。
文句なしの名演奏です。
ブリュッヘンも,3回目のカーテンコールの登場では,客席から向かって左ウィング端(一番オケ寄り)のお客さん(おそらく関係者)に,オーケーサインを出していたので,彼自身にとっても満足のいく演奏だったのだと思います。
明日は,今日と同じ演目,そして,来週金曜日には,サントリーホールでシューベルトの「未完成」と「グレイト」が演奏されます。
ブリュッヘンのシューベルトは,ディスクになっていますが,こちらもシューベルトの清々しさを強く印象づける名演奏でした。
来週が待ち遠しくてなりません。
>日本のオーケストラ史に残る公演
というのは,本当に大袈裟ではありませんね。
正直言って,聴衆の感性がついていっていないんじゃないかと思いましたが,演奏自体はもの凄いものでした。
一般的には,研究を重ねるとこじんまりと面白くないものにまとまりがちですが,細部へのこだわりも見せながらもあれだけのスケールの大きな演奏。
天才ブリュッヘンの面目躍如ですね。
同時に,新日本フィルの評価もさらにアップですね。
古楽器派の雄・ブリュッヘンとモダンオケとの出会い,どうなることかと思いましたが,本当に刺激的でした。
クラシック業界は先細りともいわれますが,なんのなんの,まだまだ楽しみが広がりますね。
今後も,意欲的な企画に期待したいですね。
そして,聴衆の側もそれを受容する感性を磨きたいものです!
実は私もvagabondさんの記事に触発されて聴いてきました。
>この演奏を聴くだけでも価値があります。
シューマンは大変な名演だったですね。
冒頭からその見通しのよさに驚かされました。
あの曲が、まるで初めて聴くような新鮮な音楽に聴こえました。
ブリュッヘンに頭があがりません…。
シューベルトもお聴きになるそうで、レビュー楽しみにしています。
拙い感想ですが、TBさせていただきました。
ブリュッヘンは,一見すると地味でショボショボしたお爺さんなんですが,その音楽性とパッション,そして構築力は絶大ですね。
クライバー亡き今,私にとって数少ないカリスマの1人です。
来週も楽しみです
>ブリュッヘンも,3回目のカーテンコールの登場では,客席から向かって左ウィング端(一番オケ寄り)のお客さん(おそらく関係者)に,オーケーサインを出していたので,彼自身にとっても満足のいく演奏だったのだと思います。
ですが、第1夜、ちょうどそのあたりの場所に座っていましたけれど、あれはコントラバスの首席に対する賛辞だと思います。
私はNJPを聴くのは二度目(最初は,グルダを楽しく想い出す会)だったのですが,なかなかよいオケですね。
リハーサルを聴かれた知人の方,本当に幸せですね。
Blogの本文でも,「局面が変わる毎に,まるでスライドが切り替わるかのように,意識やイメージが『カチッ』と切り替わるのではないか,そう思わせるような明快な演奏」と書きましたが,やはり限られた時間内での入念なリハーサルの賜物だったのですね。
「オーケーサイン」はコントラバス首席への賛辞だったのですね。なるほど。指揮台を見上げるような感じの座席だったので見誤ってしまいました。
確かに,コントラバスも,日本のオケにありがちなモチッとした演奏ではなく,キビキビしたリズム感溢れる好演でしたね。
シューマンのすばらしさは既に皆様が書かれていた内容に尽きるかと存じますが、昨晩のシューベルトのグレイトについても本当に空前絶後の名演奏であったと個人的には思っております。
私は前から2列目という音響面では到底ベストポジションではありませんでしたが、その代わりにブリュッヘンの指揮と新日フィルの掛け合いを見るのにはベストポジションで、あの独特の四角い枠の中で筆で描くような指揮に対して新日フィルが実に見事に絶妙のニュアンスで応える、マエストロと真のプロの演奏家が、舞台上で真理に到達しようという熱意が手に取るように伝わってきて心を強く打たれました。
特に3楽章と4楽章は出色で、フォルテッシモの音が一旦空中で止まり、その残響を味わった後、絶妙のタイミングで次のフレーズが謳いだすのです。あれほど音楽の生々しい呼吸を感じる演奏は今までに経験したことがありませんでした。
崩壊寸前のぎりぎりのところで勝負するという冒険を、たった一回の本番で実現したブリュッヘンと新日フィルのプロフェッショナリズムにひたすら賛辞を送りたいと思います。
確かにブリュッヘンは見た目にも老化が著しく一抹の寂しさを感じたのは事実でしたが、そのつむぎだす音楽はまだまだ颯爽としており、嵐のように吹き荒れるあの音は健在(いや、さらに深化しているようにも思えます。)です。
ぜひとも、ブリュッヘンと新日フィル、できるだけ早く、できるだけ多く特別公演も含め客演契約していただき、再現芸術の真価を、この極東の地で伝道していただきたいと切望します。
そして、聴衆の皆さんも立派だったと思います。演奏終了後も最後の和音が空間に昇華されるの待っての拍手。きっと皆さんもあの音に酔いしれておられたのでしょう。
フルトヴェングラーやクナッパーツブッシュと時代を共有できなかったのは残念ではありますが、一方、ブリュッヘンと時代を共有できたことは本当に幸福であると思っています。
本当に,ブリュッヘンと時代を共有できるのは幸福の極みだと思います。
老化が著しく,座ったままの指揮というのは,寂しさを感じさせますが,溌剌とした音楽作りからは,更なる活躍が期待できます!きっと!!
>演奏終了後も最後の和音が空間に昇華されるの待っての拍手。きっと皆さんもあの音に酔いしれておられたのでしょう。
私自身も,「グレイト」では,痺れきって,拍手するのすら忘れていました。
本当に素晴らしい音楽。
いつまでもこの音楽を聴くことができれば,との思いすら感じました。
ブリュッヘンは,日本の後,香港で,18世紀オーケストラとベートーヴェン・チクルスをやるようですね(http://blog.goo.ne.jp/vagabond67/e/f921fbc18b75b40ef9011dba5daf263c)。
是非次回は,18世紀オーケストラを率いて来日を遂げて欲しいものです。
そして,貴重な情報をいただき本当にありがとうございます
最近,地理的にコンサートへ行ける状況ではなかったので,ノーチェックでした。
ゲルギエフが鹿児島市へ来たのもスルーパスしてしまい,後で非常に後悔しましたが,今回は,ブリュッヘン情報を自称ロマン派さんからいただき本当に感謝しいたしております。
ブリュッヘンが来日するのも今回で最後かもしれませんよね。
うーん行きたいなぁ。
でも,往復の航空運賃で7万円はするよなぁ。
苦悩の始まりです