vagabond の 徒然なるままに in ネリヤカナヤ

エメラルドグリーンの海,溢れる太陽の光,緑の森に包まれた奄美大島から,乾いた心を瘉す写真をお届けします。

アルゲリッチ 室内楽の夕べ を聴いて

2005-02-01 07:37:07 | 音楽
1月30日(日) サントリーホールにて,「アルゲリッチ 室内楽の夕べ」を聴いた。木曜日はコンチェルト,日曜日は室内楽という我ながら非常に贅沢な時間の過ごし方。
出演は,アルゲリッチ(Pf),堀米ゆず子(Vn),山崎伸子(Vc),リダ・チェン(Va)。
曲目は,次のとおり。
1 ハイドン ピアノ三重奏曲 第25(39)番 ト長調 Hob.XV-25
2 シューマン ピアノ四重奏曲 変ホ長調 op.47
3 メンデルスゾーン ピアノ三重奏曲 第1番 ニ短調 op.49
(アンコール)ベートーヴェン ピアノ四重奏曲第3番 Wo0 36-3より第1楽章,第3楽章

ハイドンのピアノトリオは,第1楽章,第2楽章とハイドンらしい端正な音楽で,アルゲリッチも控えめ。
堀米ゆず子のヴァイオリンは,初めて聞いたが,折り目正しく,瑞々しい音色で,好感を持てる。どこかヘンリク・シェリングを思わせるような格調の高い演奏振りで,なかなか良い。
そして,第3楽章,ジプシー風の音楽にアルゲリッチを中心に盛り上がりを見せる。決して派手な曲ではないが,まずまず楽しめた。

シューマンのピアノクァルテットでは,リダ・チェンが登場。彼女は,アルゲリッチの長女で,公共の場での演奏活動はほとんど行っていないが,ルガーノ,別府等アルゲリッチが出演する音楽祭にはしばしば参加しているそうだ。ただ,技術的には,他の3人と比べると相当劣るようで,自信なさげで,音量も(ビオラという楽器自体の特性を考慮しても)かなり小さい。
ビオラのパートが来るたびにこちらの方が,不安になり,「頑張れ」と声を掛けたくなるぐらいだが,そこは,室内楽の妙。お母様,お姉様方も十分に心得ていて,絶妙なサポート。演奏中にもメンバーからは自然な笑みがこぼれ,全員が演奏することを楽しんでいて,私の方にも,そのウキウキ感が伝染してきて,ドキドキ感とないまぜの微妙な感覚を味わった。これも「スリリングな演奏」の一つなのかもしれない。
シューマンの曲は,全体的な統一感の取れていないものが多いように感じる。そのため,この曲も,これまで愛聴することはなかったが,今回の演奏を聴いて,この曲の良さを再認識した。
特に,第3楽章がとても美しかった。チェロが主題をゆったりと奏で始め,そこにヴァイオリンが絡んで行く。シューマンならではの夢見るようなロマンを堪能できる演奏である。正に至福のひととき。帰路でも,この主題が頭の中で繰り返しよみがえり,何ともいえぬ幸福感を味わった。
山崎伸子のチェロも上手い。派手さはないものの,手堅く,しっとりとした音色を深く響かせる。また,音楽の要所を押さえ,その夜の4人の要となる存在のような気がした。

休憩を挟んでのメンデルスゾーンがまた良い。おそらく,その夜演奏された曲目の中では,この曲が最もアルゲリッチの個性にマッチした曲。
第1楽章からアルゲリッチはどんどん飛ばす。感情の高揚を,強いタッチと微妙な揺らぎを見せるテンポで巧みに表現し,聴き手の興奮も高まる。
有名な第2楽章の夢見るような音楽も素晴らしい。極上のメンデルスゾーンが味わえた。
フィナーレも一気呵成に聴かせる。

アンコールは,初めて聴くベートーヴェンのピアノクァルテット。初期のベートーヴェンらしい若干モーツァルトの香りを感じさせる少し控えめな曲だが,4人の演奏はなかなか良かった。機会を見て,ディスクを入手したいと思ったが,あまり録音自体がない模様。その意味でも,貴重な経験だった。

おそらく,アルゲリッチの燃焼度という意味では,木曜に聴いたコンチェルトの方が高かったように思う。
予定どおりカプソン兄弟と演奏していたらどんな演奏になっただろうか,また,クレーメル,マイスキーらとの共演だったらどうなのだろうかなど考えたが,当夜の演奏も室内楽の楽しさを存分に味わわせてくれるスリリングで素敵なもの。しばらくアルゲリッチのディスクを引っ張り出して聴き入りそうな予感がする。

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2 コメント

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木曜のアルゲリッチ、聴きたかったです (jokigen)
2005-02-02 13:38:45
先日、コメントをいただいたjokigenです。

僕も、休憩後のメンデルスゾーンがいちばんよかったと思います。おっ、この演奏はのってるなって思いました。アンコールのあとのベートーベンも、演奏されるのが珍しい曲で、聴けてよかったです。

vagabondさんの感想、とても参考になりました。アルゲリッチ、生で聴くとすごいよ!って言われてたので、気合が入っていたわりに安い席で聴いたのがいけなかったのかも。聴く側にも余裕、必要ですね。

それにしても、木曜日のコンサート、行きたかったです!ああ、うらやまし。

では、またおじゃまさせていただきますので、よろしく。
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集中力 (vagabond67@管理人)
2005-02-02 22:01:07
jokigenさま いらっしゃいませ。

たしかに,アルゲリッチの演奏(感情)にはノリにムラがあった気がします。

ただ,ここ一発という決めの場面での集中力は抜群ですね。

是非,長生きして,今後,何度も日本へ来て素敵な演奏会を聴かせて欲しいと思います。
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