飄(つむじ風)

純粋な理知をブログに注ぐ。

熊本元裁判官の慟哭と、袴田死刑囚再審決定!

2014-03-28 14:11:22 | ブログ

過去、一連の冤罪事件を追跡してきた・・・
兎も角、『袴田事件』再審決定は喜ばしい!
が、
余りにも遅いし、
余りにも酷な冤罪事件である!

 

 唯一、良心の裁判官は、一審地裁で同事件を担当した熊本元裁判官である。2007年、自ら告白して、冤罪救済に乗り出した分けであるが、告白し慟哭した動画はもう無い。

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 お年を召され、ご病気でもあるので、ご自身のブログは停止している。ご健在である。

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 共にお元気な内に、再審開始決定が行われたのは、せめてもの慰みである。

 

 それを由としても、恒常的に日本の警察・検察には冤罪を醸成する根幹があるのである。それは追求しても果てがない恐ろしい闇である。枚挙に暇がない。

 

 その全部については知らないが、少なからずの事件を承知している。今回割愛するが、この再審決定を機に、その全てに光が当てられる事を望んでいる一人だ。

 

 それにしても、おぞましい。

 

 一連の転載記事を参照頂いて、その闇の実情を感じて頂ければ、幸いである。

『BOX 袴田事件 命とは』予告編




【一連転載開始】こわれたグライダー(獄中日記)

(1981年)
 11月8日
 人間の不幸、災いなどというものは、何の予告もなく訪れるものである。突然にすべてのものが私の前から閉ざされてしまった。そして、自分のなかが置き換えられてしまう。

この日以来、世の中のものが陰気に恐怖を与えながらせまってくる。
 代用監獄の拷問場は黒のカーテンが引かれて昼なお薄暗くムシ風呂の如く暑い。突き飛ばされて窓辺のカーテンに触れた。わずかな隙間から外を見た。確かに明るいと思った。

よく見ると視界全体が真っ赤だ。非常なはげしさでなにかが私の頭と体を打つが、然し感じは薄い。麻ひしたのならこの際有り難い。並みの激しさではなくて、身体が無闇にそして不意に飛ぶのだ。こわれたグライダーを一瞬連想させた。舞い上がるが直ぐに落下する。

その間にも罵声が響いている。デスクにしがみつくとそこの顔が泣いていた。権力を持った無能の暴団がいつものように凄んでいる。時としてそれはふざけているようでもあったが、決して楽しそうではなかった。以前はいつもとてもたのしげに私の所にきた刑事は、私に背をむけとても哀れな目つきで私を見つめた。

 調室の壁に絵がかけられていた。警察に来た当初はその絵を見上げると景色は私の良心に一緒にほほえむものだったが、その景色は以後、悲しげな表情さえあらわした。代用監獄の電灯もすべて輝きを失っていた。物の色はもとのままだったが、以前と違って物すべてのなかに生命が失せていた。食物をみるとむしろ吐き気がした。

 私と顔を会わせるすべての人が、私を犯人にデッチ上げようと必死になっているようにみえました。人権侵害団はしきりに言いました。巌が犯人だと世間では皆思っていると、聞き込みにいくと袴田が犯人だと皆言っていると。私はこのような事を繰り返し聞かされ、この社会全体が私を抹殺しようとしているのだと思わざるを得ませんでした。私は見るもの、触れるものすべてが恐ろしくてなりませんでした。終日ビクビクしていました。ある夜、私は涼を感じました。そして爽やかな風を覚えると途端に、ムシ風呂に閉じ込められるのです。もうろうとしているとまた涼風が吹き込むのです。私はムシ風呂に入ったり出たりしているのだと思いました。ひょっと気がつくと私の顔を悪魔がのぞいていました。

戦りつを覚えて手の平で顔をおおいました。私は人類が逆に滅びるのだとその時思いました。そうでなかったら罪なき私の顔を悪魔がのぞくはずはないと思ったからです。前方の一箇所が真っ赤になっていました。あれは富士山が燃えているのだと肌で感じました。それは日本の終わりをつげているようでした。誰かが私の顔を冷たいタオルで拭きました。

その何者かは、あやつり人形みたいでありました。何もかも不自然で奇妙でありました。

 何もかも不自然で奇妙であった。またぞろ繰り人形が動いて花瓶を前に置いた。無色の花がさしてあるなと思った。誰かが奇麗だろうと言ってわたしの前に押し出した。私はこの花は枯れそうな魂だなとみた。親類の魂ではないか。皆、直接、間接的拷問にかけられて泣いているのだ。とても悲しかった。光りがチカチカとゆれていた。天から星がおちてくるに違いないと思った。朝になっても太陽は昇るまい、昨日が太陽の照る最後の日であったのだ。

 机のろうそくに火が点けられた。これが燃え尽きるとわたしは死ぬし、世界は滅びるのだと思っていた。



日本前法官熊本典道談袴田巖案



チャンの祈り  息子への想い(獄中日記)

(1982年)
 12月19日
 チャンは、決して本件の真犯人ではない。チャンが今まなじりを決して一歩一歩進んでいる道は正義で唯一のものであり、今生の人間の尊厳を守る正しいことであるがゆえに、わが息子であるお前も父を理解しなければならないのだ。
 
 とは言っても、この身捕らえられたゆえとはしても、お前を育てる事もできなかったこの父を無条件で信じなければならないなどと無理強いする考えは毛頭ない。


 だがお前は私の息子であった。血を分けた親子の間柄である以上、父が直面している社会的状況と厳格な歴史の事実を凝視し、清く正義に立たねばならない。
 

 恐らく悲しみのみ多い世間で、後指を指されながらもひたすら耐え、お前は育った。それゆえ、人間対人間の、いや、親子としての関係さえも放棄抹殺されなければならなかったのかも知れない。確かに親子としての関係としては、単にお前をもうけ、生んだ父としてあり、お前を立派に成人させる何の力も持ちえぬ現状は、世の親として痛恨事であるという活字の上での責任を感じているに過ぎないのかも分からない。

 お前は、この世に生まれて間もなく世の荒波にさらわれた。世間の酷と厳しさを体で知るために生まれた一つの悲しい星だ。


 だからお前をはぐくんでくれた暖かいお婆さんの心と学園だけがお前の学びの場であったと思ってはならない。

 
 差別を持って罪なき人間を縛っているこの世代の誤解のなか、お前も一度だけ来たことのあるかんごくのほこりと汗まみれのなかで、不断に身悶えているチャンの生命、その生命の尊厳は何であり、その最大の願いは何であり、今日どのように打ち砕かれているか、あるいは今後はどのように実を結ぼうとしているのか、どのように花咲かせ実を結ばせなければならないか、こうした課題、問題意識を袴田巌を救う会並びに袴田巌救援会の現実からくみ取っていかねばならない。

 
 そしてこれと真向から取り組んで生き貫く人生こそ、人間として偉大さの成就が保証されるのである。私は今度の濡衣でお前の面倒をみてやることができなかった。本当にすまなく、悔しくてならない。今も痛烈な無念で肌あわだっている。


 そして誤判による死刑判決という恐るべき呪われた姿で、緊張と危機にさらされた哀れな市民の姿をお前に直接的にみせたという点においては、これこそ父たる私が全身全霊で示すことができた、唯一最大の教育ではなかったか?

袴田事件の無実・・・ ザ・スクープより

 

 

 

無実を一番よく知っているのが警察官・・・

一番申し訳なく思っているのが裁判官・・・

 

 

 

 

 

 

 

 



【袴田事件】 一審死刑判決、今も悔やむ 「謝りたい」と元裁判官

 静岡地裁の元裁判官、熊本典道さん(76)は、袴田巌死刑囚(78)を死刑とする判決文を書いたことを今も悔やんでいる。「こんな証拠で死刑にするのは むちゃ」と訴えたが、先輩の裁判官2人を説得できなかった。「袴田君に謝りたい。申し訳なかった」。その目は止めどない涙であふれる。判決から46年、こ の思いが晴れたことはない。

 ▽多数決

 一審を担当した3人の裁判官で最も若かった熊本さんは公判の途中から裁判に加わった。審理が進めば進むほど、自白や証拠への疑問が湧き上がった。 しかし、有罪の心証を持っていた先輩裁判官2人と多数決になり、死刑判決を書くことを命じられた。書きかけていた無罪の判決文を破り捨てたという。

 死刑判決の付言で「長時間にわたり被告人を取り調べ、自白の獲得にきゅうきゅうとし、物的証拠の捜査を怠った」と捜査批判を繰り広げたのは、控訴 審で捜査のおかしさに気付いてもらい、判決を破棄してほしかったから。だが、控訴審や上告審、第1次請求審で、死刑判決が覆ることはなかった。

 ▽告白

 「心にもない判決を書いた」と良心の呵責に耐えきれず、判決の翌年に裁判官を辞めた。弁護士になったものの、法廷で「私はやっていません」と訴えた袴田死刑囚のまなざしが忘れられない。酒浸りの生活を送り、一時期は自殺を考えたこともあった。弁護士も辞めてしまった。

 第1次再審請求の特別抗告審が大詰めを迎えた2007年に、無罪の心証を持っていたことを初めて明らかにした。「勇気ある告白」と称賛する声も多 く寄せられたが、自分の中では「もっと早く言わないといけなかった」との思いの方が強かった。最高裁は特別抗告を棄却し、告白は実を結ばなかった。

 ▽洗礼

 「袴田君の気持ちを少しでも理解したい」。東京拘置所で84年にキリスト教の洗礼を受けた袴田死刑囚の心に近づこうと、自身も今年2月22日、カトリックの洗礼を受けた。

 脳梗塞で足や言葉が不自由となっているため、神父に福岡市の自宅に来てもらった。聖水を頭にかけられると、感激のあまり、おえつが漏れた。「袴田さんの心に近づけましたか」と問われると、すっきりした表情で深くうなずいた。

 袴田死刑囚の第2次再審請求で、静岡地裁は27日に再審可否の判断を示す。「再審は開始されるのか」と問い掛けると、熊本さんは即座に「開始は考えられない」と言い切った。「司法はあの時と何も変わっていないから」

(共同通信)【一連転載終了】

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