願いごとの樹 キャサリン・アップルレゲイト 著 偕成社
物語の舞台は現代アメリカ。語り手であるレッドオークのレッドは、さまざまな国からの移民が住みついてきた歴史を持つ町を、2世紀以上も見守ってきました。毎年、5月1日の「願いごとの日」には大勢の人々が端布や紙に書いた願いごとをレッドの枝に結びつけます。(訳者あとがきより典拠)そんなレッドはある事件がきっかけで、伐採されてしまう危機に陥ります。その状況を真摯に受け止め、その前に、レッドの近くに住んでいるサマールという少女の願いを叶えてあげられないかと親友のカラスのボンゴと木の洞に住む様々な小動物たちと一緒になって、作戦を練っていろいろと実行します。長年、人に話しかけてはならないという掟を守ってきたレッドが「願いごとの樹」と呼ばれるようになったある少女のことをサマールの役に立ちたいがために、一生懸命、話かけるという行動を起こします。レッドは長年多くの人々の願いに耳を傾け続けてきました。レッドには、願いごとを叶えてあげられるような特別な力はないし、願いごとをしにくる人々もそのことを知っていて、レッドに話を聴いてもらえただけで救われていた人々がいました。人は希望なくしては生きられないということ、レッドのように、耳を傾けてその人の話を聴いてくれるような、優しく、思いやりがある、人を包み込む存在は、ただいつもの場所にいてくれているだけで、嬉しい存在であるということに気付かせてくれるようなお話でした。レッドが伐採されてしまいそうになった当日、レッドの木洞に住んでいた小動物たちがレッドを見送るためにやってきていました。小動物たちがレッドを大切に思う気持ちが溢れていて、こういう気持ちがどんな人々にもあったら、みんな、穏やかな日々が送れるのでしょうと思いながら読み終えました。各章、短めの文章で、読みやすかったです。