「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

2005・04・05

2005-04-05 07:00:00 | Weblog
 今日の「お気に入り」は、良寛禅師が、越後の国与板の町年寄で酒造業を営む山田杜皐(やまだとこう)という人にあてた手紙の文面です。文政11年(1828年)旧暦11月12日に、今の新潟県三条市、栄町を中心に起った大地震の後、大きい被害が出た与板に住む友人にあてた慰めの手紙です。

 「地しんは信に大変に候 野僧草庵ハ何事なく 親るい中 死人もなく めで度存候
  
   うちつけにしなばしなずてながらへて
       かゝるうきめをみるがはびしさ

  しかし 災難に逢時節には 災難に逢がよく候 死ぬ時節には 死ぬがよく候 
  是ハこれ 災難をのがるゝ妙法にて候
    かしこ」


 文中の歌は、地震で出し抜けに死んでしまえばよかったのに、死なずになまじ生き永らえたため、このように辛い有様を見ねばならぬ、悲しいことだ、の意。
 その歌の後の文章にはインパクトがあります。

 災難というものはいつ人に降り掛かってくるかしれない、が、災難に見舞われぬ人はなく、あなたとてその例外ではないだから災難に襲われたときの心得をお教えしておくが、それは、なまじ逃れようとじたばたしないで、真正面から災難を受け取るのがよい、ということにつきる逃れようとあがいたりしては、災難は大きくなるばかりだ、というのですから。
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