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TRASHBOX

日々の思い、記憶のゴミ箱に行く前に。

ソーシャルネットワーク(the social network)

2011年01月16日 | 映画とか


この映画、ご存じの通りアメリカでは昨年の10月に公開されて
大きな反響を巻き起こしている(ゴールデングローブも4部門獲得)。

見たい!と思って早3カ月(東京国際映画祭は売り切れでした)。
その間に感想や評論などがどんどん聞こえてくる。
グローバル&ソーシャルメディアの時代に、この遅れっぷり、
もーっ、責任者出てこい!てな感じでじらされちゃったのも、
また作戦のひとつだったのだろうか(ま、そんなことないか)。

しかし面白かった、というか良くできていた。
最初はサイテーの野郎に思えたザッカーバーグーに、
見終える頃はシンパシーのような感情を感じていた。
でもそれは、「実は繊細で、いい奴なんだ」みたいな
もっていき方では全然ない(単純な俺も、そこまでは)。

そしてアーロン・ソーキンお得意の畳みかける脚本に、
説明的な台詞はほとんどない。
普通の言葉をがんがん積み重ねていくことで、
見る人間の中に自ずと立ち上がる人物像。
「ザ・ホワイト・ハウス」も素晴らしかったけれど、
この人の仕事、ほんと好きだなぁ。

当然ながら、これは実際の出来事を元にした創作であって
フェースブック誕生の実話ではない。
マーク・ザッカーバーグ本人へのインタビューを重ねた
デビッド・カークパトリック氏に寄ると
「事実は40%くらい」ということらしい。
(この位の割合が実はいちばん面倒。なぜなら全くの作り事とも
言い切れない部分が多々あるから、というコメントも。なるほど)
ここはひとつ、前述ソーキン氏にくわえ、希代の映像師
デビッド・フィンチャートの見事なフィクションを楽しみたい。
で、感想などフェースブックに、かな。

えーっと、お話としてはシンプルではあるのだけど
見終わって徐々に感慨が深くなる一本でした。
私の処理能力が一回では追いつかなさそうないので、
またちょこちょこコメントするかと思います。

ま、いろいろ面白いエピソードも耳にするのですよ。
たとえばナップスターを作ったショーン・パーカーが
彼らに初めて会ったとき、ニューヨークの
洒落た(というかスカした)モダン・チャイニーズでの支払い後、
実はまったく金がなかったとか……そのやせ我慢ぶりはナイスだ。
この映画、パーカーの存在の復活にも一役買ってるかもしれないなぁ。

話題の映画だけにまだまだ上映は続くと思うけれど、
もう一回見に行こうと思っています。
ちなみに英語のオフィシャルサイトでは
オリジナルの脚本(細かい台詞は少し違うところあり)がダウンロードできます。
それほど難しくないので、興味のある方はどうぞ。

人生万歳!@恵比寿ガーデンシネマ

2010年12月19日 | 映画とか

2009年のウディ・アレン作品で、舞台は再びニューヨーク。
しかしこの邦題だと、諸手を挙げてバンザーイ!みたいな雰囲気ですが、
原題"Whatever Works"のニュアンスは、もうちょっとシニカルなのでは。

「利口とか馬鹿とか、若いとか年寄りとか、ストレートとかゲイとか
……そんなのどうでもいいのさ、うまくいけば」的な、
斜に構えつつも人生の喜びを肯定しようとするややこしさ。
この辺がウディ・アレンの持ち味なのだと思うのだが、
ま、難しいタイトルではある(『好いたもん勝ち』とかどうかなぁ)。


「人はいつか死ぬ」という厭世観に囚われた主人公ボリスは、
ノーベル賞候補の名声や裕福な妻とのハイソな生活を捨て、
ダウンタウンで友人たちに屁理屈をふっかけて暮らしている。
ある日、そんな彼の元に若く美しい南部の家出娘が現れて……
というお話なのだけど、詳しくは日本の公式サイトなどで。
まあ、いかにもウディ・アレン的な設定ではあります。

で、感想です。正直、最初の30分ほどは楽しめなかった。
ボリスは映画の最初から休むことなくハイテンションで、
バイタリティのあるウディ・アレンみたいな役柄。
しかし彼本人だったら、もう少し可笑しくて哀しい、
ペーソスのあるキャラクターになったのだろう。

くわえて家出娘の方も、ステレオタイプな南部の「お馬鹿さん」。
ちょっとアレンも耄碌したかな……とか思っているうちに、
映画は本性を現しはじめる。

……なんていうか、すごく面白かったのですよ、結果的に。
エンドタイトルで拍手しちゃおうか、などと思ったりもして。

凸凹だらけの愛憎劇が、シニカルなフィルターを通して見ると
微笑ましく思えてくる。ああ、やはり愛がすべてなのですね。
ただしこのフィルター、使いこなすにはそれなりの技が必要で、
半端なことでは見抜かれてしまって逆効果だろう。
ホント、ギリギリのところを上手く描き切ったなぁと思う。


ところでボリスを演じたラリー・デヴィッドは
『サタデーナイト・ライブ』や『サインフェルド』など
アメリカで超人気の番組の脚本や企画に携わり、
また主演コメディ『ラリーのミッドライフ★クライシス』でも人気。
役の解釈と作り込みは正鵠を得ていると思うのだが、
微妙な加減の芝居、という訳ではない。

でも、この映画はそれでいいのだと思う。
黒沢映画の出演者が「大根」などと言われたりするのは、
物語の語り手として機能することを求められているから。
演技力を見せようとしている訳ではない、
みたいな話を思いだす。
それはともかく、役者の扱い方という点でも
監督は達者なところを見せてくれるのだ。


そして見終えた後は恵比寿の居酒屋で一杯。
観客に語りかける「マンハッタン・スタイル」(勝手に命名)が
かなり意図的に使われているなぁとか、
ラリー・デヴィッドの声の甲高さは
ちょっとジョン・レノンぽいなぁとか、
いろいろと反芻しがいのある作品だった。
これも映画を見る楽しみのひとつ。
そういう意味でも、なかなかお得な一本だった。


ところで恵比寿ガーデンシネマ、なんと来月28日で閉館。
(トップの写真は当日のガーデンプレイス。今年も光ってます)
面白い映画を上映してくれていたのに残念、というか哀しい。
来年「ベストセレクション」という企画があるそうなので、
見に行きがてら勝手にお別れ会でもやろうかな、と思います。
まずはサッポロでビール、そして近くのバーにでも……
って飲み会企画じゃねーだろ!ってなっちゃうくらい
ショック(?)なのではありました。

えーと、気を取り直して、また映画の反芻でもするか。
でも勝手お別れ会、ホントにやりませんか?

Art & Copy

2010年12月06日 | 映画とか
Art & Copy: Inside Advertising's Creative Revoluti [DVD] [Import]
クリエーター情報なし
Pbs (Direct)


先日書いた『アート&コピー』についてもう少し。
制作にあたったのはアメリカの広告クリエイティブ関係のNPO、ワン・クラブ。
ここが選ぶOne Show Awardは、カンヌよりもレベルが高いとする向きもある。
(イギリスのD&ADも同様。ある種カンヌの商業主義へのアンチ的存在かもしれない)

内容は、50年代後半に発した「広告表現の革命」--その中心となった
代理店DDB(ドイル・デーン・バーンバック)のメンバーから連なる
クリエイター群像を描いたドキュメントといえるだろう。
それまでは媒体セールスの付随サービスに近かったクリエイティブを、
ブランドを築き、商品を売るコミュニケーションの手法として確立し、
広告ビジネスの軸に据えたのは、ここに登場する人たちだ。

たとえばフォルスクワーゲン、ビートルの「Think small」。
(ご参考までに、こんなブログの記事も)
それまでの広告作りは、
コピーライターが書いた文章をアートディレクターが受け取り、
流れ作業のようにデザインするというやり方だった。
それに対して、お互い一緒に「アイデア」を考えるという
新しいプロセスをとったことで生まれたのが、この表現だった。
これ、今でこそ当たり前になっているけれど、この人たちの試みが
なかったら、広告業界はもっと違った姿になっていたかもしれない。

そう、「革命」というのは決して大袈裟な話ではないはず。
彼らが生みだしたのは、ちょっと気の利いた雑誌広告やCMではなく
コミュニケーションの新しい「作り方」なのだと思う。

確かに「昔は良かった」系のノスタルジーに見えなくもないが、
読み取るべきメッセージはたくさんある。
ちらほらと顔をのぞかせる「革命」のヤバさは
きちんと見ておくべきだなぁ、特に関係者は。

実はこの映像、日本では電通が権利を持っているそうで、
字幕版の一般的公開は特に予定されていないようだ。
社内では教材として使われているようだけど、
それだけではもったいないと思う。

広告のクリエイティブが元気になっていくことは、
結果的に会社のメリットにもなるはず。
電通さん、鏡さん、ここはひとつ、
大きな心でどーんと公開していきませんか、
例えばアド・ミュージアム東京とかで。
よろしくお願いします!


ハングオーバー@早稲田松竹

2010年11月30日 | 映画とか

久しぶりの早稲田松竹、いやー内装きれいで見違えました(って何十年ぶりだよ!)。
詳細は日本のサイトあたりを見ていただくとして、
なかなか楽しめる一本でした。なんていうか緻密につくられたおバカというか。

ところでワタクシ、実はこの「おバカ」ってのが好きじゃない。
なんか評価や批評から逃げるための言い分けっぽい匂いがする。

「お客様は神様です」は芸人としての三波春夫氏が言うべき言葉で、
「俺は客だから神様同然だ」みたいな使い方をするものではない、
というのと同じく表現する側が「おバカですから」というのは間違っていると思うのだ。
(ちなみにこんなサイトもありました)

ま、そんな話はともかく、観客であるワタクシに言わせれば
「なんてチャーミングなおバカなんでしょ!」という作品。
構成とか如実に上手いし、エンディングまで楽しませてくれるアイデアにも一票。

キャラクター設定も巧みで、
たとえば調子のいいやんちゃキャラは二枚目(ブラッドリー・クーパー演じる教師)が、
堅物なのにどこかでぶち切れるタイプは冴えない男(エド・ヘルムズノの歯科医)とか、
各配役が、すごくいいバランスでつくられている。
いやー、これ、実は映画の勉強になりますよ。

監督は「スタスキー&ハッチ」などを撮っているトッド・フィリップス。
彼が手がけた新作「デュー・デイト」は来年早々に公開。
キーパーソンであるアランを演じたザック・ガリフィアナキスにくわえて
ロバート・ダウニーJrも登場するそうで、これゃ行かなきゃ、って感じです。

あ、その場合は早稲田松竹ってわけにはいかないけれど、
あらためてこの映画館の魅力も感じました。
最後の一本800円というのも嬉しいし、近所には手頃な飲み屋さんも。
上映作などはこちらをどうぞ。

ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い Blu-ray & DVDセット(初回限定生産)
クリエーター情報なし
ワーナー・ホーム・ビデオ


私の中のあなた(WOWOWで録画視聴)

2010年11月06日 | 映画とか
私の中のあなた [DVD]
クリエーター情報なし
Happinet(SB)(D)


ジョディ・ピコーの小説「My Sister's Keeper」を元に映画化、
ニック・カサヴェテスを監督に迎え、2009年に公開された作品です。
以下は、ウィキペディアからのあらすじ。


アナ・フェッツジェラルドは白血病の姉ケイトのドナーとして、
遺伝子操作で生まれてきた。アナはケイトのために
臍帯血、輸血、骨髄移植などでケイトの犠牲となってきた。
アナが13歳の時、腎移植を拒み、両親を相手に訴訟を起こす。



見る前に私が持っていた情報も、こんなものでした。
病気の娘を愛するあまりのエゴ、そして家族が裁判という形で向き合う修羅場。
現代社会の問題を扱ったセンセーショナルな一作、という先入観がありました。

でも実際のところ、これはまぎれもなく家族愛の物語。
「遺伝子操作で生まれた」といっても、これはある種の計画出産。
妊娠時にドナーとしての適合性を持っているかは調べるものの、
不妊治療の一環として、割と普通のプロセスです(試験管ベイビーとかじゃないし)。

姉妹の母のキャメロン・ディアス、父のジェイソン・パトリックも好演。
でも娘2人も素晴らしかった(当初はダコタとエルのファニング姉妹の予定だったとか)。
訴訟の場面でも、弁護士(アレック・ボールドウィンがいい味!)や
判事(ジョーン・キューザック。これもいい演技です)は人間味をもって描かれていて、
フィルム全体に温かい空気が流れています。

まず登場人物それぞれの語りから始まり、それが徐々に絡みあっていく展開。
各シーンの飛び具合と、それをつないでいく間合いの心地よさ。
エンディングに用意されたちょっとした驚きには、心動かされました。
原作や俳優の力もともかく、脚本と演出の力を強く感じます。
なんていうか、アメリカ映画のお手本のような一本でした。