ザ・ビーチ・ボーイズ(※1)の元メインメンバー(※2)、
ブライアン・ウィルソンの主に60及び80年代の姿に基づいた物語。
語られる内容も、またその描き方も、見ごたえのある一本だった。
公式サイトなどの紹介では
「知られざる真実」とか「天才を愛することとは」といった文章を目にするけれど、
それはなんというか、通り一遍の説明でしかないように思える(※3)。
映画を見終えて、いちばん残っているのは、
ブライアンの頭の中で絶えず鳴り続けていた音の、その音圧の印象だ。
その音圧を、激しい水の流れに例えるならば、
ダムを介してエネルギーとなるか、
あるいは洪水という形で人を痛めつけるか。
彼にとっては、どちらともなり得る諸刃の刃だったはずだ。
例えば『グッド・ヴァイブレーション』ヒット後のディナーの席、
ナイフやフォークの音に過剰に反応して思わず席を立つブライアン。
あのシーンは象徴的だった。
すでに彼の頭は、勝手に訪れてくる音たちで溢れていたのだと思う。
それから、この映画で楽しめたのは、構成の持つヴァイブレーション。
ポール・ダノが腹、じゃなくて身体を張って演じた60年代と、
傷心男子をやらせればピカイチのジョン・キューザックの80年代の
行ったり来たりは初めの5分かそこら戸惑うのだけど、
コツ(?)をつかめば自然に入っていける。この辺は演出、編集の技だろう。
この構成について、監督のビル・ポーラッドが
共同脚本のオーレン・ムーヴァーマンに相談したとき、
オーレンはこんな風に答えたそうだ(※4)。
この構成は、もっと革新的なものにできるはずだ。
君は単に物語を伝えるだけでなく、
彼が音楽でやろうとした実験的な挑戦と同じことを映画でも挑むべきではないか?
そうか、ブライアンが異なるベースコードを持つメロディーを響かせようとしたように、
ディレクターとしての挑戦があったのかもしれない。
モノづくりの傍らで生きる者として、心にさざ波が立ちました、ハイ。
うーん、あれこれ参照しながら書いているうちに、
どんどん興味が広がっていくなぁ。
これは、自分的には優れた映画の印でありますが、
第一報としては、とりあえずここまで。
(まず書かないと忘れちゃうしね)
ちなみにヘーっと思ったのは、
80年代のブライアン役の企画段階での候補は、
フィリップ・シーモア・ホフマンだったとのこと。
今考えると、「天才」と言われる存在への、運命の仕打ちを感じて悲しい。
すべての人に、ラブ&マーシー(愛と慈悲)を。
※1:正しいのかもしれないけど、この中黒の打ち方好きじゃないなぁ。
※2:公式には現存のバンドの一員ではない、はず。
※3:トップページの『いつかは、ここを出て、愛を迎えに行かなくちゃ。』というコピーは好きです。
※4:Wikipedia(英語版)から