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TRASHBOX

日々の思い、記憶のゴミ箱に行く前に。

レミーのおいしいレストラン

2007年08月11日 | 映画とか
「ファイディング・ニモ」にはまったのは、実は大人だったのではないだろうか…そんなことを思いつつ今回も映画館に。アニメの画質、というのも妙な話だが、人物の顔のツヤとか料理のてかり具合なんか相当なレベルだ。クレジットロールの中で「100%アニメーションでモーション・ピクチャーは使ってない」みたいな表示が出たのが笑えたが、どこかアニメーターの意地みたいなものを感じる。こういうのって嫌いじゃない。

で、ストーリー自体は基本的に子ども向け(それはそれでいいんだけど)リングイネのキャラクターがもう少し深く描かれてもよかったような。まあ「よくできてるなぁ、今回も」と楽しく過ごす1時間半ってところだろうか。その完成度は、ピクサーのクリエイティビティとディズニーのマーケティングのバランスなのかもしれない。もうちょっとピクサー側が勝っててもいいかな、と酎ハイの濃さにこだわる親父のような気分になったのでした。

でもこれ見終わると、ちょっとおいしいフレンチが食べたくなったりしませんか?劇場に近いあるダイニングバー(料理は絶品!)に電話したらすでに予約で埋まっていたのだけど、もしかしてレミー効果?

萠の朱雀(TV放映)

2007年07月16日 | 映画とか
WOWOWで放送されたこの映画には、冒頭部に監督(および脚本)の河瀬直美のインタビューが今年(第60回)カンヌ国際映画祭での「殯の森」コンペティション部門グランプリ受賞シーンとともに収録されている。そこから印象を語るには短すぎるが、漠然と強い人なのだなぁと感じた。この感覚はどこか脚本家の渡辺あや氏(「ジョゼと虎と魚たち」「メゾン・ド・ヒミコ」など)に似ているような気がする。

映画自体は、とてもとても作家性の強い一本。で、作家性って言っても曖昧なので、俺としては「スナック河瀬直美」と言い換えたい。ちょっと個性的なママが経営する小さなお店。つまみの品数はそれほど多くなく、また素人料理なので上手下手はあるのだが、独特の味を持っている。常連ばかりといった閉鎖的な場所ではないが、なんとなく趣味嗜好のあう者たちが集ってくる。割とはっきり物を言うが、プロとしての覚悟はきっちりしている。一方で最初は登場人物の人間関係がよくわからなかったり(栄介が父の姉が残した子どもーみちるの従兄弟になる、とか)声が聞きづらかったり(うちのテレビのせいもあるのだろうが)、この店には独特のノリがある。最初に入ると愛想が悪く感じる、みたいな。

描写自体はとんでもなく寡黙だ。しかし見ているうちにラジオのチューニングがあってくるように登場人物の心情が体感として伝わってくる。ラスト近くの栄介とみちるのやりとりなど、じわりと感慨が押し寄せてきた。どちらかというと寂しい幕切れなのだが、爽やかな後味が残る。

過疎の村のごく普通の日常を背景に描かれる、家族の結びつき、ほのかな恋情といった淡いようで本当は濃い人の心のありさま。見ながら感じたのは、こういった日本の田舎の風景は、実は国境を越えて通じる舞台なのではないかということ。都市や風俗などの要素がない分、見る物の目は「人」に集中していく。どローカルな題材がかえってグローバルな理解を得ていくというひとつの事例がここにある。

河瀬監督のリアリズムへのこだわりは有名なところ。この映画でも、庭に植えるのは美術部が用意した造花ではなく自然にそこで育った植物にこだわった(結果スタッフと険悪になったり)りと、リアルが醸しだす気配への執念は強い。その割にはバイクに2人乗りした栄介とみちるの会話の音声が不自然(あれアフレコだよね…)だったり、ラストカットのカメラクレーンの動きのぎごちなさとか、技術的に気になる点はある。受賞から10年たった(製作は96年)河瀬作品がどのようになっているか、そういう意味では「殯の森」も気になるところだ。

ちなみに冒頭にふれた脚本家の渡辺あや氏、二人に共通して感じるのは「家族」という価値観だ。表現における男女の区分けには釈然としないが(いまだに作家を男女別で分けている書店が信じられない)、でもこの「覚悟」ともいえるたたずまい、やっばり女性ならではなのだろうか。それともこの両者にたまたま通じるものがあったのだろうか。

明日の記憶(TV放映)

2007年07月09日 | 映画とか
身につまされる映画だった。主人公の年齢(49歳)が近いとか同業者(広告代理店)だとかではなく、いま会社勤めをしている自分たちのとても近いところで起こっている出来事に感じられたからだ。距離感が近いというか。

身体はまったく健康なのに、記憶という要素が欠けることで本人も周りの人間も傷つけていくこの病気、ある意味では人生の意味を問われる厳しい経験ともなるのだろう。アルツハイマーという病いの重さを越えて、この映画が問いかけるものは大きい。

そういう点では素晴らしい一本だと思う。制作側の真摯さ、熱意も画面を通じて伝わってくる(精神論みたいだけど、そういうものって必ず映像にでてくるのだ)。興味があるという人には是非一度、とおすすめしたい。

しかしシンプルに映画としての演出には疑問が残る。前半の病の発症段階では、サスペンス的な描写がどこかよそよそしく、主人公佐伯(渡辺謙)の内面に入りきれない。全般を通じて、妻の美枝子(樋口可南子)の心情は切々と描かれているのに佐伯の当事者としての怖れや絶望にはもうひとつ切迫感がない。もしかしたら芝居が熱すぎるのだろうか。

映像的にも、どこか撮影側の理解にずれがあるような印象を受けた箇所がいくつかある。山奥にある陶芸の焼き場での不自然なカメラワーク(なんでここでクレーン?みたいな)とか、「ケイゾク」みたいな感じになっちゃってるのは何故なのだろう。

もちろんグッとくる場面もいくつもあった。美枝子が家の外に出て泣くシーンとか、最後に妻のことすらわからなくなったときの反応など、樋口可南子の演技は全般を通じて素晴らしかった。ちなみにしばらく前にやはり若年性アルツハイマーに関するドキュメントを見たのだが、こちらのナレーションも彼女だった。夫の糸井重里氏も含めて、この病気へのコミットメントが高いのだろうか。

とてもナイスで、ちょっと惜しい、という感覚がどこか残る。ただこういう映画が撮られることは素晴らしいと思う。テーマは良し、くわえて映画としての深みみたいなものがもうひとつ加われば。

ボルベール〈帰郷〉

2007年07月03日 | 映画とか
アルモドバルの映画を見ていると、実はそこで語られているストーリーなんてどうでもよくて、その奥に垣間見える情念や郷愁に旨味があるのではないかと思う。川の表面に映った木々の緑やあるいはビルのネオンはきれいに見えるかもしれないけれど、釣り人にとってはそこに流れる水の冷たさや暖かさ、また澄んだ具合などが肝要なことであるように。なんかわからないけど熱くて哀しい気分にひたれる一本だ。しかしこのスペイン語の音色にすごく惹かれるのはなぜだろう。NYU時代にラティーノ軍団と過ごして南米系スペイン語は耳に馴染んでいる(できないけど)のだけど、なんかルーツに響くのかしらん。

Without A Trace

2007年02月01日 | 映画とか
以前話題になったアメリカのTVドラマ。突然の失踪者を探すFBIチームの活躍を描いた、一話完結型のシリーズものだ。会社の先輩にDVDフルセットを借りてちびちび見ているのだが、だんだんはまってきた。ストーリーの詰めなどに時折甘さはあるのだが(特に最初はそれが気になっていた)、それもだんだん慣れてきた。いまでは仕事があった日の夜の気分転換として、ちょうどいいひとときになっている。

そう、確かにドラマとして「スキ」はあるのだが、もしかしたらそれがいいのかもしれない。"The West Wing"(邦題「ホワイト・ハウス」)のような完璧な構成もドキドキするが、こういう大らかな(?)サスペンスも悪くない。俺の周りには、ちょっとスキのあるのところが魅力な人間がいるけれど、映画とか音楽とかも、そういうスキの良さってありかもしれないなぁ。(でもNHKの放送しないThe West Wingのシリーズ5、何が何でも見たいのだ)