すなば たかひろ

「元気で人に優しい鳥取」を取り戻すため、県議になった元新聞記者の挑戦記。みんなで鳥取の未来像を考えましょう!

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新庁舎建設を住民投票で止めるのは① 投票後の事例研究

2011年05月24日 | 日記
住民投票を実施した自治体は全国にたくさんあります。
ところが、せっかく住民投票を実施しても、その結果が活かされないケースがたくさんあります。これが現実です。
住民投票後どうなったのか、調べてみると、首長が、その結果を尊重し、住民の願いがかなったケースは徳島市など数例しかありませんでした。
一方、国が足を引っ張ったり、首長が完全に無視したりして、住民の思いが無視されたケースがゴロゴロしています。
住民投票をするだけでは意味がありません。市庁舎計画を白紙撤回させ、市民の投票で決めた建設の可否が、尊重され、実行に移されねばなりません。
そのためには、はっきりと建設の賛否を住民投票で問うこと、そして、条例に拘束力を持たせるような条項を盛り込むことしかないと考えています。
以下に住民投票後、どうなったかを調べたものを掲載しますので、長いですが一読してください。


住民投票の結果を首長や議会が尊重し、結果通りになった事例
岐阜県可児郡御嵩町(1997年6月)
産業廃棄物最終処分場の建設の是非を問う。反対が約80%を占める。反対派の柳川喜郎・NHK解説委員が町長に当選して住民投票を誘導するが、柳川町長宅から盗聴器が見つかり、柳川町長も2人組に自宅マンションのエレベーターで襲われ、頭蓋骨骨折・肺損傷で意識不明の重体になるが、未だに犯人は逮捕されていない。柳川町長が2選を断念し、同町長が推す反対派の渡辺公夫氏が町長に当選し、知事、町長、産廃会社の三者会談が開催され、計画は中止された。

徳島県徳島市(2000年1月)
吉野川可動堰の建設の是非を問う。投票率が50%に満たない場合は開票そのものを行なわない、とする規定が定められた。投票率は55%で、反対が約90%を占める。小池正勝徳島市は反対の姿勢に転じたものの、県は態度を維持。2002年4月の知事選挙で完全中止を公約に掲げた太田正氏が当選し、計画は事実上、頓挫した。

埼玉県上尾市(2001年7月)
さいたま市との合併の是非を問う。市町村合併に関する初めての住民投票。反対が過半数を占めた。合併は見送られた。「合併すれば、上尾がさいたま市の辺境になる」と新井弘治市長は、市長の立場で合併に反対し、住民投票をリードした。これに対し合併賛成の市民グループは、「合併反対のパンフレット作成に、市の公金が使用された」と提訴した。

滋賀県坂田郡米原町(現米原市・2002年3月)
市町村合併の是非及び枠組みを問う。「坂田郡での合併」が最多となる。2005年2月、同郡伊吹町、山東町と合併し、米原市が誕生した。全国で初めて永住外国人に投票権を与え、該当者31人のうち、13人が投票に参加した。

秋田県由利郡岩城町(現本荘市、2002年9月)
市町村合併の相手先を問う。「本荘市と合併」が、「秋田市との合併」を上回り、岩城町は2005年3月、本庄市と合併した。投票対象者は18歳以上の者とし、全国で初めて未成年者に投票権を与えた。

議会や首長が尊重したが、計画をスットプできなかった事例
新潟県刈羽郡刈羽村(2001年5月)
東電の柏崎刈羽原子力発電所のプルサーマル計画導入の是非を問う。反対が約53%を占める。住民投票の結果を受け、知事は受け入れ延期を国に要請したが、国はプリサーマル協議会を設置し、経済産業省が広報予算を計上し、刈羽村に資源エネルギー庁の広報職員を常駐させ、東電は職員が住民の戸別訪問を続けている。刈羽村が反対する一方、柏崎市は受け入れを表明していることが問題を混乱させていることが背景にはある。

首長が尊重しなかった事例
沖縄県名護市(1997年12月)
在日米軍普天間基地返還に伴う代替海上ヘリポート建設の是非を問う。「賛成」「条件付き賛成」「条件付き反対」「反対」の4つから選ぶ形式で、初めて3つ以上の選択肢から選択する形式の住民投票となった。結果「反対」が過半数を占めたが、市長はヘリポート建設受け入れを決め、初めて住民投票の結果が反映されない事態となった。

この結果について、住民が提訴しており、那覇地裁から興味深い判決が出ている。
(那覇地裁平成12年5月9日判決)「本件条例は、住民投票の結果の扱いに関して、その3条の2項において、『市長は、ヘリポート基地の建設予定地内外の市有地の売却、使用、賃貸その他ヘリポート基地の建設に関係する事務の執行にあたり、地方自治の本旨に基づき市民投票における有効投票の賛否いずれか過半数の意思を尊重するものとする』と規定するに止まり、(以下、右規定を尊重義務規定という)市長が、ヘリポート基地の建設に関係する事務の執行に当たり、右有効投票の賛否いずれか過半数の意思に反する判断をした場合の措置については何ら規定していない。そして、仮に住民投票の結果に法的拘束力を肯定すると、間接民主制によって市制を執行しようとする現行法の制度原理と整合しない結果を招来することにもなりかねないのであるから、右の尊重義務規定に依拠して、市長に市民投票の賛否いずれか過半数の意思に従うべき法的義務があるとまで解することはできず、右規定は、市長に対し、ヘリポート基地建設に関係する事務の執行に当たり、本件住民投票の結果を参考とするよう要請しているに過ぎない」
那覇地裁の理論を使うと、条例制定は議会で審議されているのであるから投票の賛否について、規定をしていない場合はフリーハンドになることになる。では規定した場合はどうか。法的拘束力を付与したのは議会であるから、間接民主制との整合も取れ、そこに法的拘束力を見出すことができると解するべきだろう。

長野県下伊那郡平谷村(2003年5月)
対象市町村を特定せずに、市町村合併の是非を問う。「合併する」が、「合併しない」を上回る。投票対象者は中学生以上とし、全国で初めて中学生に投票権を与えた。現在のところ、合併には到っていない。
宮城県志田郡三本木町(現大崎市・2004年8月)
古川市、志田郡松山町・鹿島台町、遠田郡田尻町、玉造郡岩出山町・鳴子町との合併の是非を問う。民意を反映する住民投票条例について、佐藤武一町長は「如何なる結果になろうと合併が進める」と表明したこともあって、投票率は開票要件の50%に満たなかった。古川市でも住民投票を求める請求があったが、推進派の市議13人が条例に反対、合併反対派の市議11人が条例に賛成し、条例案は否決された。古川市や三本木町、鳴子町の住民意向調査結果では合併に反対する者のほうが多かったが、合併は遂行され大崎市となった。

議会が尊重しなかった事例
新潟県西蒲原郡巻町(現新潟市・1996年8月)
巻原子力発電所建設の是非を問う。条例制定による日本初の住民投票。95年10月に「巻原発・住民投票をする会」が、推進派の佐藤莞爾町長のリコール請求を始めると、佐藤町長は先手を打って辞職するが、出直し町長選で反対派の笹口孝明氏が当選し、住民投票を実施。反対が約60%を占める。笹口町長は町有地を反対派に町議会の反対を押し切って売却。推進派町議が提訴するが、最高裁は上告を受理せず、敗訴が確定し2003年末、東北電力が計画撤回を表明した。

山口県岩国市(2006年3月)
在日米軍再編に伴う厚木基地からの空母艦載機移転受け入れの是非を問う。反対が約90%(有資格者の過半数)を占める。投票の1週間後には周辺市町村との合併に伴い、条例そのものが失効したが、井原勝介市長は「移転の白紙撤回」を国に求めた。4月の合併に伴う市長選があり、そのための住民投票と批判がなされたが、井原市長が圧勝した。しかし、芸予地震で耐震性が低下した市庁舎建て替え補助金の35億円を凍結。代替財源を示した予算案を議会に提出したが、移転容認派の市議会が4度にわたって否決。井原市長を予算成立と引き換えに辞任した。日米安全保障協議会(2プラス2)は岩国移転が米軍再編の最終報告書に盛り込まれ、用地買収の説明会が開かれるなど動きは止まっていない。
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