それはね・・・・
昔むかし ある所に男の兄弟が住んでいました
弟は働きものでしたが 兄は畑仕事もせずいつもごろごろしているという怠け者
おまけにケチときている。
数年の時が経ち 弟は所帯を持つことになり兄とは別のところで暮らしはじめました。
しかしそこは・・・荒れ果てた土地で畑をするのにもまず耕さなければ米も植える事ができませんでした。
夫婦一生懸命頑張ってようやく畑らしくなってきた冬
まもなく正月を迎える時期となった
しかし正月を迎えるための米がなくなりどうしようか?と、夫婦で相談
「おまえさん、兄さんとこで借りられないんかね?」
すると「兄さんはとってもケチだからきっと貸してはくれんだろう?」
「じゃ~あんた、正月どうすんべ~よ?」
「うんじゃ、いっぺん頼んでみるかの?」と
「兄さん! わしじゃ」
「何か用か?」
「正月用に米を一升貸してはくれんかの?」
「な・なに~ 米を一升だと? そんなもん貸せんわ!」
「米作りに ワシも一生懸命働いたんだぞ! せめてその分ぐらい貸してくれてもえ~っじゃないかの?」
「駄目なもんは駄目じゃ! さっさと嫁んとこさ帰れ!」
「やっぱ無理じゃった! くそ~ ワシ一人で米を作ったようなもんなのに・・・あ~腹減った!」
ぶつぶつ言いながら家に戻る途中・・・
通りすがりの老人が・・・
「おや? そんなに腹が減ったんかい? じゃ~この”麦まんじゅう”を食うかい? それとも良い正月を迎える方がいいか?」
「・・・・・?」
「この先の祠の後ろに洞窟があるんじゃがな・・・そこにある者がおるんじゃ・・・もし?この”まんじゅう”と交換して欲しいといわれたら”臼(ウス)”と交換したらいい正月が迎えれるぞ! 腹が減ってたまらんかったら食べてもいいぞ!」
どうしようかな?と迷いつつも足は祠の方へ・・・
そして老人が言ってた洞窟に弟は足を踏み入れた
すると、どこからかと「麦まんじゅうだ!」「まんじゅうだ!」「おい!麦まんじゅだ」「わ、まんじゅう」とあちらこちらからと・・・
「これと交換してくれ!」チャリン♪ 「これでどうだ?」チャリン、チャリン♪ 「これでも駄目か?」チャリン♪ 「交換してくれよ!」チャリン♪
みるみるうちに弟の足元には金の塊が埋め尽くされていた。
しかし弟が「臼でないと駄目だ!」と言った
すると足元の金がサッと消えたとたん・・・石臼が現れたと同時に老人も現れた
「この石臼を右に回せば欲しいものが出て、左に回せば止まるようになっているぞ!これで良い正月が迎えれるでな・・・・」
弟は重い石臼をやっとの事で家に持ち帰り 早速正月の準備に取りかかった!
「まずは米だな!」と臼を回し始めた・・・・すると米粒がどんどん現れた
「次は鮭だ!」すると鮭もどんどん現れ なんとか良い正月も迎える事ができた。
新年になり弟は今度は家が欲しいと臼を回した!
するとなんと立派な大きな家が現れた。
そこで今度はこの村の人たちを全員呼んでご馳走することにした。
今まで食べた事の無いようなご馳走に村人たちは大喜び
しかし一人だけ この状況をねたましく思った人物がいた
それは兄、「なんで弟の方が兄よりこんな立派な家に住んで贅沢をしなければならないんだ! くそ、おもしろくない」と、きっとこれには裏があるはずだと村人が帰るのを待った。
「あんた~、お客さんはお帰りなさるで おみやげのお菓子まだですか?」
「もう間もなくじゃ」
臼を回していたその時を兄はこっそり覗いてしまったのです。
「なるほど・・・そうだったのか」
そして村人が帰り 弟夫婦が寝静まった頃を見計らって兄はその臼を盗み出し用意していた船に乗せ別の土地へと逃げた
「これでワシの事を知っているものがおらん土地に弟が建てた以上の大きな家に住んで贅沢三昧できるわい! イヒヒヒヒ~」
そして船を漕ぎながら・・・
「さっきの土産のお菓子 ちょっと甘すぎたな・・・そうだ! 口直しに塩でも出してみるか?」と臼を回した。
すると塩が現れ「これはうまい!」と兄は大満足
しかし臼はそのまま回り続け塩はどんどん出てくる
「おい、もう塩はいいんだ! こんなたくさん塩なんていらないんだ!」と兄は臼に問いただすも臼は回り続けた
「おい、もういい! 止めてくれ! 船が沈んでしまう! あ~」
臼は回り続け塩の重みに耐えかねた船・兄・臼もろとも沈んでしまったのです。
もうお分かりでしょう?
だから海はしょっぱいんです。
また兄は臼の止め方までは見ていなかったのです
だから海はずっとしょっぱいんです。
まだ海の底には臼が沈んでいる・・・・・・?