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the other side of SmokyGitanesCafe
それとは無関係に・・・。
 

待つ  




GITANESの手持ちも、もちろん灰皿も何も無かった。
それとは無関係に・・・。


どうしてこんなにお金というものは貯まっていかないのか
と考えているうちに、
「そうだ、便利すぎるからダメなのだ」と思い至った。

給与振込口座を自分でコントロールしているのだが、肝心の
自分自身をコントロールできないのだから、お金など貯まる
訳がない。
キャッシュカードが財布に入っていて、かつATMが至る
ところにある・という便利な状況が悪いのだ。

ということは、わざと不便な環境に預けるようにすれば
小額ずつながらでも、今よりはずっとマシな状態になっていく
のではないだろうか。


そういう動機で
ある銀行=D銀行に新規で口座を開設することにした。

まずE銀行へ行って、いつもの口座からカネを下ろす。
すぐに行方不明になってしまう金撲滅キャンペーンの始まりだ。



下ろしたてのお金を持って、隣のD銀行へ。
どうしてその銀行を選んだのかと言うとこの銀行は、支店はおろか
ATMさえもこの近辺に1箇所しかないからである。

不便だからお金を引き出さない=引き出さなければ金は残る

という、端的にして明瞭な理由による。
不便さは貯蓄の味方のはずだ。



口座開設の申込書にいろいろ記入して、捺印して窓口へ提出。
いわゆる預金通帳がない「ネット通帳口座」というヤツだ。
文字通り通帳がなくて、諸々の確認はネットで済ませる。
お金の出し入れは基本的にキャッシュカードのみ。
便利な世の中だ。


「ご新規は15分から20分程度かかります。急ぎますが。」
と言われた。そんなに待たされるのか。


待合のロビーはそこそこ混んでおり、選ぶほど座る場所はない。
ソファーの一つ、女性用の赤いヘルメットが置かれた隣しか
空いていなかった。
ミニバイクに乗るときにおばさんが被るようなヘルメットだ。

そこに腰を下ろす。

すぐ後から来た、集金かばん的なバッグを持った男性が
しばらくは立って待っていたのだが、そのうちに座りたく
なったのだろう。話しかけられた。

集金「あのう、ヘルメット、ちょっと寄せてよろしいですか?」

私「いや、ヘルメットは私のものじゃないですよ。」

集金「へ?そうですか?」

私「女性用ですもんね。忘れ物じゃないですか。」

集金「あ、そうですよねえ。赤いですもんねえ。ちょっとねえ。」

ちょっと待て、私はフォルムの話をしているのであって、
赤は自分には似合わないとは一言も言っていないのに、
「赤いアイテム不似合い確定」になってしまったのか?


と反論したかったものの、辛うじて常識が勝ち
私「まあねえ・・・」なんて曖昧な返事だけしておいた。


「SGC様」

結構早く名前を呼ばれた。やればできるではないか。

私「はいはい。」
女性行員「申し訳ございません。実はSGC様の口座が
     既に当行にございまして・・・」

私「は?」

確認したら確かに私の口座だ。
引越ししたから住所や電話番号は変わっているものの、
旧住所に間違いはないし私の名前だ。

行員「平成2年にご新規100円で開設、その後50万円
  ご入金がありまして、すぐに動いております。その後の出入り
  はありませんので、残高は100円となっております。」

確かに私の口座ではあるものの、記憶がない。


私「ええと、どんな選択肢があるんでしょう?」

行員「はい。古い通帳はお持ちでしょうか?ありましたら
   その口座で継続したお取引になります。」

私「いえ、こちらを利用した記憶もまったくないもんで、
  通帳があるかどうかも記憶にないんですが・・・」

行員「そうですよね・・・。それでしたら通帳の再発行という
   方法があります。」

私「なるほど。」

行員「再発行手数料に1200円かかりますけど」

私「100円の口座を守るために?」

行員「そうですよね、ちょっとおかしいですよねえ」

私「さっきの申し込み通り、新規の口座は新規の口座で開設
  して欲しいんですが・・・。」

行員「そうですね。それでは古いお口座を廃止する手続きを
   させていただきましょうか。」

私「なるほど。じゃあそれでいきましょうか。」

行員「かしこまりました」


そうか、100円の口座残高を守るために1200円の投資
なんてしていると、「無駄ガネ撲滅キャンペーン」にならない
ではないか。
喩えて言うなら、一人の人質を守るために警察官12名が
犠牲になるようなものだ。
いや、全然違うけど。

行員「ではまず、通帳の紛失の届けをしていただきまして、
   それを提出していただいてから、口座廃止の届けを
   していただきます」

あ、かなり面倒だったのだ。



行員「あれ?SGC様、申し訳ありませんがちょっとご確認を・・・」

私「はい?」

行員「お名前のこの漢字ですが、この部分が・・・」



と、事態はもっともっと複雑怪奇な方向へ向かっていくのである。



この段階で混雑していたロビーは既にガラガラに空いていた。
壁際のソファーの上には、なおも赤いおばはんヘルメットが
コロンと転がっていた。


前編終わり。

後編はあるのでしょうか。



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