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the other side of SmokyGitanesCafe
それとは無関係に・・・。
 



GITANESのせいで生まれた妄想。
それとは無関係に・・・。

しつこく「事典」。
読者の方のためのガイドなのは勿論
だが、それ以上に作者が「何が何だか
もうわからなくなっている」のを
整理するためなので、おつきあい
いただきたい。
」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

●占い師・狐晴信
商店街の仕舞屋のシャッター前で
勝手に占いをしている男。
本名不詳。
折り畳みテーブルに緋色の毛氈を
被せてそれらしくしているが、
テーブル自体はカインズで買ったもの。
また、その上にもっともらしく
水晶玉を置き、占いの最中には
それらしく両手をかざしたりして
いるが特に意味はない。
水晶玉は商店街の「何でも売っている店」
で買ったもので、ひとつ買ったら
おまけでもうひとつもらえたが
正直持て余している。
狐晴信の名は言うまでもなく
狐忠信からパクっている。

●ことぶき荘
レジデンス茶柱の裏にある
瀟洒な高級マンション。
こっちの方がよっぽどレジデンス
なのだが、誰も不思議に思っていない。

●力州海
ことぶき荘の守衛。元力士。
195cm130キロ。
暴力沙汰で相撲部屋を破門
された後、中東に渡る。
軍事顧問会社でしばらく働いて
いたと言われるが詳しくは
誰も知らないし触れない。
休みの日には近所のピットブルを
片手で持って振り回しているらしい。
なぜそんなことをするのか
某氏が本人に尋ねたところ
「生意気だったから」との返事が
帰ってきたとのことである。

●レイコ婆
ことぶき荘の住人で、元
レジデンス茶柱の住人。
茶柱建築直後から住んでいたが
後に裏のことぶき荘へ転居。
どうもキャッシュで一部屋
買ったらしい。
金髪碧眼。80歳を軽く
超えている。

●小松スーパー
実は何でも売っている店の店主の
兄が経営するスーパーマーケット。
と言っても小規模なのだが、
弟曰く「コンビニに毛が生えた
ようなしょぼいスーパー」。
しかしオーナーは「コンビニに
毛が生えたレベルではなく、
イオンの毛が抜けた規模だ」と
兄弟間で不毛の議論が長年
続いている。
このことからわかるように
兄弟仲は非常に悪い。
小松スーパーも比較的
「何でも売っている」ので
「何でも売りたい」家系なのだろう。

」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
レジデンス茶柱の住人で唯一
ここまで登場しなかった902号室
の人物がそろそろ登場しそうです。
そして、ことぶき荘でも意外な
動きが。

そろそろレジデンス茶柱




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GITANESの匂いでめまいがした結果
の幻想だ。
それとは無関係に・・・。

毎週この時間にはことぶき荘の105号室
を訪れることになっている。
住人はレイコ婆。
以前は私の「レジデンス茶柱」902号室
(大家である私の部屋の隣だ)に住んでいたが
なんと裏に聳え立つ「ことぶき荘」の1室を
買い、そこに引っ越したという訳だ。
だからカネはあったんだろう。
本人曰く、どこかの金持ちのお妾さんだった
とのことだがアテにはならない。
なぜなら日によって来し方の説明が異なる
からだ。
ある時は「アラブ石油王の第3夫人」だったり
「ネットでは有名なハッカー」だったり
「大泥棒3姉妹の叔母」だったり、
「ボリショイサーカスで熊の調教をしていた」
とか、無茶苦茶な経歴を淡々と語るもんだから
何が本当かわからない。
このうちの、「泥棒の叔母だから」という理由では
金持ちである説明にはならないし、熊の調教師
なんてもっと意味不明である。
だからまあ、「金持ちの妾」説がいちばん納得
しやすくはある。

インターホンを鳴らした私をレイコ婆はすぐ
迎え入れた。
レイコ「まあ時間通りね大家さん。あら、
珍しい。あらお連れさん?」
立ち去ろうとしない30分のライアンが
私のすぐ背後にくっついていた。
レイコ「どうぞお二人とも上がって。」
私「いや、すぐに出ますので先に用事を。」
レイコ「あら、そう?」
レイコから紙片を渡され、玄関脇にあった
トートバッグを掴み、回れ右をして
すぐ部屋を出た。

ライアンが眉間にしわを寄せながら
ついてくる。
30分のライアン「なあ茶柱よ、誰だあれ?」
私「レイコさん。前はウチの住人だった
けど、こっちに引っ越したんだ。」
30分「じゃあ無関係じゃねえか。」
私「買い物頼まれてる。」
30分「はあ?」
私「レイコ婆は脚が悪いんでな、買い物
が億劫なんだよ。」
30分「タダでか?」
私「いや、お駄賃代わりのモノくれるよ。」
30分「じゃあそれ、買い物メモかよ?」
私「そうそう、なになに・・・
キッチン洗剤と、オロナインと、大根、
たまねぎ・・・グルコサシン?
どこで買うんだよこんなもん。
あとはUの〇ートテック肌着に
トイレットペーパーと、コーヒー豆
200g、交雑牛コロッケ・・・」
30分「いろいろ書いてるなあ・・・
これ、買いすぎじゃねえか?
1週間分だろ?」
私「いや、でも隣の部屋に車椅子
の男が住んでいて、それのお使い分
も入ってるらしい。」
30分「頼まれごとの頼まれごとかよ」
私「そうだね」
ライアンは呆れた顔が直らない。
30分「なんでそこまで。」
私「レイコ婆は俺の叔父が大家だった
頃からの住人でね、叔父も俺も
世話になったし、まあお使いぐらい
できるからな。金払いもいいから
別に何の問題もない。」
30分「でもメンドクセエじゃねえかよ
他人だぜ?」
私「自営業で時間が自由過ぎるんだから
定期的なお使いなんかがあると
なかなか楽しんだよな。」
30分「そもそもテメエ、頼まれごと
が舞い込む顔してんだよ。人探しとかよ。」
私「そりゃ、そうかも知れんなあ。」
30分「そうだぜ、損な顔なんだよ。」
私「だから年中バタバタしてるのかもな。」
ライアンはなぜか得意げな顔をしていた。
踏切にさしかかった。
私「ということで、ライアンは商店街ね。
俺は左の小松スーパーへ行くから、
交雑牛コロッケと、ええとグルコサシンを、」
30分「なんで俺がそんなこと!」
私「見張りにくっついてるだけの日々
なんて嫌だろ?少しだけでもやることが
あった方がいいって。」
30分「テメエ!」
私「それにほらメモ見てみろ?
交雑牛コロッケ30個だぜ?
これはきっとお駄賃にコロッケが貰える
筈だぜ?」
30分「小学生かよ!」
私「いいじゃん、頼むよ。ね?」
30分「行かねえからな!大体俺は
テメエの見張りが仕事なんだからな!」
私「俺は小松スーパーにいるから
大丈夫だって。他所へは行かないって。」
30分「なんで見張り対象に自由時間
があるんだよ?!」
私「そんなに心配なら早く買い物
済ませて合流すればいいじゃんか。」
30分「殺すぞ!テメエ!LINE教えろ!」
私「LINE?」
買い物に迷った際のための連絡手段
だとのこと。買い物に行く気にはなったようだ。
私「じゃ、よろしく。」
30分「待てコラ!グルコサシンは
どこに売ってんだよ!」
私「そりゃ商店街の何でも売ってる店か
製造者本人から買うかだろうね。」
30分「その本人はどこにいるんだよ?!」
私「怪奇堂喫茶アフタヌーンにいるか、
西の森公園の土管の上で大声出してるか・・・」
30分「ジャイアンかよ!」


小松スーパーで買い物をしていると
スマホが震えた。LINEだ。
絵文字満載で読みにくかった。
茶色いだんごみたいなものが
コロッケだと思われるが定かではなかった。

」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
写真の人物に近づきつつあります。







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GITANESのせいで妄想が始まった。
それとは無関係に・・・。

」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
今30分のライアンが私の部屋で激怒しているのは
麦茶を電子レンジで熱燗にして提供したからである。
前夜兄貴分の「ピンセットのジョー」に殴られ
口の中にもケガをしており、そこに熱々の麦茶が
沁みるのだろう。
30分「テメエ!麦茶を燗して出す奴があるか!
ケンカ売ってるだろ?!」
私「まあ落ち着け、腹とかにダメージがないか
どうかわからんし、冷たいものをいきなり飲んじゃ
悪い気がしたから気を回したんだよ。」
30分「・・・」
私「嘘だけど」
30分「テメエ!!」
怒り狂うライアンを後目に着替える。
30分「なんだ!出かけんのかよ!」
私「大声出すなよ、いくら高級マンションだって
他の住人に迷惑だろ?」
30分「レジデンス茶柱のどこが高級なんだよ?!」
私「日曜日の9時に行くところが決まってんだよ」
ライアンも立ち上がった。
30分「俺も行くからな!」
私「丁度いいや、手伝え。」
30分「何にも手伝わねえぞ?!監視するだけだ!」
私「じゃ、行くか。あ、麦茶残ってるぞ?」
30分「熱いんだよ!」
私「猫舌かい?」
30分「テメエ!!!」

レジデンス茶柱の裏に聳え立つ高級マンションがある。
もっとも、近所の人は誰も
「レジデンス茶柱の裏にあるマンション」とは
思っていない。
みんなは「マンションの裏にレジデンス茶柱がある」
と思っている。
裏か表かなんてどっちでもいいが、
「レジデンス茶柱目線」で見るのは世界で8人だけ
つまり茶柱の住民だけである。

30分「で、どこ向かって歩いてんだ?」
私「裏のマンションことぶき荘だよ。毎週この
時間に約束がある。」
マンション前に到着した。豪奢なマンションは
もちろんオートロックの玄関だが、大男の守衛
(管理人)も玄関脇の小さな部屋の前で
後ろ手で佇んでいる。

30分「なあオイ、このマンションが『ことぶき荘』
で、テメエのチンケなボロアパートが『レジデンス』
って、ネーミングのセンスが無さすぎねえか?」

ライアンは建物を見上げる。8階建てだから
そう高くないが、とにかく豪華なマンションだ。

私「ネーミングセンスって、『30分のライアン』
って呼び名の奴が偉そうに。」
30分「テメエ!」
私「テメエテメエって、今日だけでもう『テメエ』
って叫ぶの5回目だぜ?」
30分「4回目だよ!テメエ!」
私「ほら5回。」

守衛にあいさつする。
私「やあ力州海、おはよう。」
守衛「おはよう、茶柱さん」
元相撲取りが守衛のマンションだから、とりあえず
セキュリティレベルは高い。
ライアンが小声で言う。
30分「・・・何だよ、デケエな・・・」
私「元力士だよ。下手なことしたら殺されるよ?」
守衛がニヤっと笑う。
力州海「ここで何かやったら殺すよ?」
守衛にライアンが言い返した「テメエ」は心なしか
弱かった。

」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

はい、まだまだ回り道です。




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GITANESの匂いが妄想に拍車をかける

それとは無関係に・・・。
」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
(※暴力的な表現があります)

父の顔は知らなかった。
物心がついた頃には父はおらず
アパートで母と二人暮らしだった。
小学校には行ったり行かなかったり。
友達も少ない。
団地に住むショータがほぼ唯一の
友達といってもよかった。

母親は夕方仕事に行って朝方帰って来る。
昼間はほとんど寝ているので、ショータと
自分の住むアパートで遊ぶことは
なかった。
母親とどうやら知人らしい男が
週に2,3回訪ねてきた。
嫌な男だった。
「パチンコに勝った」という日は
板チョコを一枚くれることもあったが
彼と母のアパートの一室を自分の
部屋であるかのようふるまうのが
嫌だった。
終始機嫌が悪く、母親に暴力をふるう
こともたびたびあった。
なぜかそういう時の母親は無表情
だった。
男がやってくるときは、男に
「おい、出てろ」と命令される。
風邪で熱があっても、大雨の日でも
部屋を追い出された。



ショータの家にはいつも酒に酔っている
ジジイがいて、よく大声を出すのを
ショータも嫌っていた。
ショータのところも父親がいなかった。
コンビニとかガラス工場などで働く
母がいた。ジジイはよくわからなかった。
彼がショータにジジイのことを尋ねても
言葉を濁したり黙ったりした。
ショータ自身もジジイが誰なのか
知らなかったのかもしれない。
とにかく二人ともあのジジイが
嫌いだったから、ショータの家で
二人が遊ぶこともなかった。
もっぱら学校の裏手にある資材置き場
や、神社の裏山が遊び場だった。
ゲームセンターにも行きたかったが
中学生にカツアゲされるし、そもそも
ほぼお金がなかった。

その代わり神社裏の山なら、どんな
ところでも知っていた。
あの木の後ろには秘密の通路があって
それを通ればショータの母が働く
ガラス工場への近道だ、とか、
一見行き止まりに見えている道も
大きい岩の横の低い木をかき
わけると、また道が続いている
とか、ちゃんと読めない石碑の
付近にはなぜかオトナの本が
散乱していてシワシワになっている
とか、とにかく毎日そこで
暗くなるまで遊んでいるから
二人は本当に自分の庭だと
思っていた。

ちょっと遅くなりすぎた日があった。
彼の母はもう仕事に行っているだろう。
ショータのところでは門限という
ほどではないにしても、あまり遅いと
一応叱られる。
叱られることがわかっているから
家に帰るのを嫌がったが、
いくら嫌がっても帰らない訳には
いかない。彼はショータに
「一緒に行ってやるよ。」と、
なぜか兄貴風に言った。
「なんで兄貴風なんだよ」と
ショータは言うがかなり嬉しそうだった。

いつもと様子が違った。
すすり泣くような声が玄関に聞こえて
来る。ショータの母親だ。
駆け込むショータの後に彼も続いた。
居間ではショータの母がすすり
泣いていた。顔が腫れて歪んでいた。
シャツが破れていた。
酒に酔ったジジイが真っ赤な顔で
子供二人を睨んできた。
「ジジイ!何やったんだ!」
叫んだショータの頬あたりを
ジジイはいきなりテレビのリモコン
で殴った。
「何すんだ!ジジイ!」
立ち上がったジジイはショータの
腹を思い切り蹴った。
唸ったショータは蹲り動けなくなった。
その光景を見て彼はまったく動けなかった。
怖い。他人が他人を殴るのも
至近距離で見せられると怖かった。
膝から下が外れそうに震えた。
「おいガキ!帰れ!」
ジジイが彼に向き直った。
「・・・」
言葉も出なかった。
ジジイがショータの母親をいきなり
蹴った。母親は後ろに倒れた。
うずくまったままのショータの
脇腹をつま先で蹴った。
「おいガキ!帰れ!」
黒電話の横にあった尖ったものを
咄嗟に手にした。
「帰れ!蹴られたいかおまえ、」
叫びながら彼はジジイの右脚に
飛びかかった。蹴られたくなかった。
膝でアゴあたりを蹴られたが
かすっただけだった。
後頭部をゴンゴン殴られたが
それほど痛くはなかった。ただ
ひたすら怖かった。
「放せコラ!」
酒臭い。黙れじじい。俺の友達に
何をしやがる。

太ももの裏側に尖ったモノを
突き刺した。先端が簡単に
皮膚に埋まった。
ジジイが悲鳴を上げた。
あと2回、突き刺した。
ジジイが倒れこんだ。

ジジイをやっつけたか?!
ショータの母親が彼に言った。
「帰って!とにかく帰って!」
ショータはまだ蹲り、うんうんと
唸っていた。
「ごめん、ショータ・・・」


アパートまで走って帰った。
もう母親は仕事に行ってしまった頃
だったが、アパートの部屋には灯り
がついていた。
嬉しかった。

部屋に飛び込んだ。
あの男がいた。
母親に馬乗りになり、何度も
殴っていた。
靴のまま部屋に上がった。
男を止めたかった。
それだけじゃなかった。
自分にとって母親とショータは
「世界の半分以上」なのだ。
それを壊そうとするヤツは、


ショータの家にあった尖ったモノを
まだ手にもったままだった。
突き刺した。
それほど力は入れてなかったが
男がバネ仕掛けのように飛び上がり
仰向けに倒れた。
突き刺したのは右目だったようだ。
男の上に乗った。
左目を狙った。
しかし男が暴れたため、無茶苦茶
に顔中を刺しただけになった。
狂ったように男が暴れたが、彼も
また狂っていた。

近所の人が数人入ってきて彼らを
取り押さえた。
ようやく手に持っていた尖ったもの・
ピンセットを放した。

彼の母親は仰向けに寝たまま茫然と
様子を眺めているだけだった。

彼が施設に入れられている間に
母親は失踪したということだった。
あの男のことは誰も教えて
くれなかった。

」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

占い師・狐晴信のところから
私はアパートに向かった。
30分のライアンもついてきたが
私「あんた、ウチの部屋に
泊るつまりか?」
30分「そんな訳あるか!」
私「俺はもう帰って寝るだけだぜ?
人探しって時間でもないし。」
30分「・・・」
私「一旦帰りなよ。監視なら
また明日来ればいい」
30分のライアンは無言で回れ右
して歩き去った。


翌日の8時。
ドアをノックされた。
スコープを覗くと、30分のライアンだった。
ため息をつきながらドアを開けた。
私「監視って、朝8時からやるの?」
30分「知らねえよ・・・」
私「監視って、ドアをノックする?
普通ちょっと離れて張り込みする
んじゃないの?」
30分「うるせえよ・・・」
私「ん?顔の傷増えてない?」
ライアンの顔は昨日より傷が
増えていた。
30分「うるせえよ!」
私「なんで8時にやってきた側が
怒鳴ってるんだよ・・・」
30分「監視するからな!」
私「宣言するのも珍しいな・・・」
30分「・・・」

私「なんで殴られた?」
30分「・・・」
私「兄貴分か?ピンセットの」
30分「うるせえ、テメエのせいだ」
私「知らねえよ」

ライアンの言うには、
あの後奴らの事務所に戻り
その日のことを細かく報告したらしい。
それを聞いていたピンセットのジョー
はいきなり
ピンセット「なんでオメエはちょっと
楽しそうなんだ!」
と激昂し、数発殴られたとのことだ。

私「ちょっと遅いだろうけど
これで冷やせよ」
濡れたタオルを渡すと、ヤツは素直
に受け取った。食卓専用の布巾だと
いうことは黙っておいた。

私「楽しそうって殴られるのか?
何報告したんだ?」
喫茶店でのこと、ミモザママとの
やりとり、揚げ物屋、寝具店との
やりとり、なんでも売っている店
のこと・・・
30分「それと、キツネの占い師
のこととかよう。報告したんだよ・・」
私「なんでそんな細かく・・・」
30分「報告が簡単だったら
簡単で、また殴られるんだよ」
私「・・・」
30分「だから詳しく話したら
『随分楽しそうじゃねえか』
って殴られるんだよ・・・」

かなり気の毒になってきた。
私「麦茶飲む?」
30分「うん・・・」
私「あ、でも『大家のところで
麦茶飲みました』とか報告するなよ?
また殴られ、」
30分「言わねえよ!」


」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
ピンセットのジョー・少年時代でした



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GITANESの煙のような妄想だ。
それとは無関係に・・・。

いきなり前触れなしに始まった
「写真の人物」。
一体これは何なのかと、以前からの
SGC読者の皆さんは思っているだろう。
奇遇ですね、私もちょうど同じこと
を思っておりました。

SGCというのは20年以上前から
あったこと、なかったこと・妄想
食べた、行った、見た、思った
感じた などを脈絡なく書き殴る
だけのブログである。
そして、日々の更新作業は難渋する。
はっきり言ってしまうと、20年
以上もやっていると書くことがない
に尽きる。
いや誰かにやらされている訳じゃなく
カネのためにやっていることでも
ないので、そんなに更新しなくても
と自分でも思うのだが、そこはSGC
のサービス精神の発露というか、
使命感の顕在化というか、「一人でも
楽しみにしている人がいるなら」
とか(それはウソだが)、の理由で
やっていること。
ある時点から「20年以上書く」
という目標を立てても達成は困難
だろうが、単に続いてきた結果が
20年を超えただけだから
なんと言うことはない。しかしネタ
は確実に減っていく。
で、これは特異なことかも知れんが
自分は「あったことを書くよりも、
妄想を出鱈目に書く方が」
圧倒的にラクな人間であるらしい。
つまり、楽をするために「写真の
人物」という妄想を書いている
のだ。
多くの人、例えばブログを日々
更新し続けている人は、毎日
あったことを書いている方が楽だ
というタイプの人の方が多いだろう。
私SGCはそうではなかったようだ。

すべて出鱈目なので人物名が途中
で変わってしまったり、書き始め
から現在まではまだ数日のこと
なのにどうも季節が変わって
いる気がしたり、第16話が
欠けていたり、そもそも結末が
まだ決まっていなかったり
という状態だ。

本当は写真の彼女の行方より
どんなキャラが主題とは関係ない
どんな日常を送っているとか
そっちの方面を書くことが目的
になっている感覚もある。
また、SGCはもう2700話以上も
続いているのだから、それらの
中からストーリーに登場させられる
ものをピックアップして出すように
している。そうするとネタはいくら
でもあるし、例えばクロケッツ讃歌
も理想のカフェの様子もそうだ。
書きすぎて埋もれてしまった記事
を掘り起こすという意味もある。
つまり「写真の人物」シリーズは
smokygitanescafeの遊び方ガイド
みたいなものと言える。
今思いついただけだけど。

だからこれからも
「今年の漢字はなぜいつも縁起が
悪いのだ?」とか
「あのコンビニ店員とのやりとり」
「フランス人はホントに服10着
で足りるんかい?」などの
エピソードがストーリーの中に
登場するだろう。
そしてそれらは「写真の人物」
探しという本筋からは明らかに
逸脱した「寄り道」だが、
そもそもSGC自体が大いなる
寄り道であって、往々にして
寄り道は本筋より愉しいものだ。
ここから筋は方向転換しSFに
向かって行き、登場人物が皆
猫に生まれ変わる可能性だって
ある訳だ。
そうするとセリフが「にゃー」
ばかりになるから、SGCとして
非常に楽なのだ。いやホントに
可能性はある。
だからあなたこの先
予断は許されないのだよ。

まあ、もうちょっと続くかしら。



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GITANESのおかげで暗いストーリーに
なるはずなのに。
それとは無関係に・・・。

」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
私「ちょっとさあ、占ってみてよ」
30分「え、このインチキに占って
もらうのかよ?」
占い師「こら、誰がインチキだ。
わしには『狐忠晴』という立派な
名前がある!」
30分「キツネタダハル?」
私「キツネ忠信パクった?」
狐「うるさい。何を占うんだ?」
私は占い師の前の椅子に、ケツ
半分だけ乗せて背筋を伸ばした。
もちろん椅子は30分のライアン
とシェアしている。

私「何を占うか、当ててみて?」
狐「お前、バカにしてるだろ?」
私「それで信用できるかどうか
試すんだからさ。やってみて?」
30分のライアンは殴られてひどい顔
をしながらも口元はニヤついている
ように見えた。
狐「お前さあ、どうせわかるまい
と思ってるよな。バカだねえ・・・」
私「じゃあ、当てて、」
狐「女だろ?」
私「!」

写真の人物について尋ねようと思って
いたから、女であることは確かだった。

私「まあ占いなんて人間関係が
ほとんどだろうし、男女比率が
半々なんだから、どっちか言って
おけば当たることに、」
狐「探し人だ。多分縁は薄い。」
なんとなく当たっているようだ。
狐「あんたの顔に深刻さがない
から別に本気で探している訳
でもないんだろ?でもまあ
探していると。多分知らない
女なんだよな?」
私「この女だけど」
ポケットから例の写真を取り出した。
30分「お前、コイツまだ
探すのかよ!テメエ!」
私「うるさいよ。椅子をシェア
する距離なんだぜ?大声出すなよ」
30分「ピンセットに言われた
だろ!探すなって!」
私「あ、そうか。そのための
見張りだもんな、あんたは」
30分「そうだよ!ふざけるな!」
私「まあでもライアンちゃん、
この占い師のことそんなに信用
してないだろ?」
30分「フン!」
私「じゃあ占い頼んでも
ヒントにもならないんじゃあ
占ってもらってもいいじゃん」
30分「屁理屈じゃねえか!」

狐忠晴は筮竹をガチャガチャ
やり始めた。
狐「お前さんがた、占いを
誤解しているな。」
私「?」
30分「お?!」
狐「占いってのはな、ほぼ人間
観察なんだよ。」
私「・・」
狐「女を探してるって言ったのは
完全に偶然、あてずっぽうだ。」
30分「ほら!」
狐「でもな、曰くつきの男と
同伴で、懸想中の女のことで
占ってもらうことはないだろう」
30分「・・・」
狐「ということは、だ。
茶柱はただ単純に人を探している
ということになる。表情には
悲壮感も怒り狂ってる様子もない
から、多分どうでもいい相手
なんだろう。そのうえ、その女
のことをほとんど知らないから
情報もない。だから説明も
できない。今時プリントした
写真で人探しってのは、誰かに
頼まれたんだろう。で、
探してる割にはどうでもいい
もんだから、慌ててもいない。
お前らのやり取りから、そっちの
兄さんは人探しをさせまいと
している。」
30分「・・・」
狐「見つかろうとどうしようと
茶柱には関係ないが、邪魔される
のが気に喰わないから単に探してる
だけ。違う?」
私「違わない。」
狐「だろ・占いってのは人間観察
なんだよ。科学だよ。」
30分「じゃあこの、竹の束とか
水晶玉は何なんだよ?」
狐「演出だよ。」
30分「それだけかよ?」
狐「左様。水晶玉は先月商店街の
何でも売ってる店で買った。
1個買ったらおまけでもう1個
もらえた。要る?」
30分「いらねえよ!」


狐「まあいいや。さてこの女性は」
私「ん?」
狐「生きているならどこかに自分の
意思で隠れてるんだろうな」
私「どうしてそう言える?」
狐「意思が強そう、気が強そう。
自分で心が折れるヤツじゃない。
そのうえ用心深い。生きてるなら
とっくに遠くへ去ったか・・・」
30分「・・・」
狐「この女は狙われてるとか?」
自分「いやそれも知らないんだ。
ライアン何か知ってるだろ?」
30分「俺も知らねえよ。知って
ても言わねえよ!お前、
ピンセットに脅されただろ!」
私「やるなって言われたら
やりたくなるタイプの人間も
いるんだよ。」
狐「そりゃそうだ。兄さんも
そうだろ多分?」
30分「俺は、あれだよ。うるさい!」
私「どの方角にいるんだろう?」
狐「そりゃあわからんね。うちは
人間観察が中心だから、方角までは
わからんな。」
占い師がしげしげと写真を観察する。
狐「なんか、結構二重の性格を
持ってそうだな。弱いのと強いの
とか、明るいのと暗いのとか
善と悪とか。」
30分「へっ!誰だってそうじゃ
ねえかよ!」
狐「お!兄さん言うねえ。」
狐が写真をスマホで撮った。
狐「よく映画であるだろ?占い師
とか靴磨き屋は町の情報屋だって。
よくしゃべる客が来ると、訊いても
ないことまでいろいろ喋るからな。
だから占いと靴磨きには昔から
ネタが集まりやすいって言うぞ」
30分「だから探すなって!」
私「いいじゃん、ライアンは
ピンセットにボコボコにされて
ちょっと腹立ってるんだろ?」
30分「そんなことねえよ!」
私「まあいいや。探さないよ。
でも勝手に情報がやってくる
んなら仕方ないしね」
30分「ケッ!」
私が勢いよく立ち上がったので
半分をシェアしていたライアンが
ひっくり返った。
狐「面白いね、この兄さん」
私「うん、結構面白い。」
臀部にもケガを負っていたのだろう。
そこに尻もちだから辛そうだった。

私「じゃあね、これギャラの代わり」
さっき買ったコロッケを渡す。
狐「あ、これ交雑牛コロッケ?」
私「いや、オーストラリア。
油揚げの代わりに。
美味いからって宙乗りしないように。」
狐「そこまでパクらねえよ。」



30分「よう、さっきの宙乗り
ってのは何の話だよ?」
私「狐忠信でググってみ?」

30分「キツネタダ・・・ノブ
どんな漢字だよ?」
私「さて、一旦帰るか・・・」
30分「漢字はどんなだよ!
教えろよ!おい!大家!」


」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
続かんと思うなあ。





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GITANESがなかなか登場しない。
それとは無関係に・・・。

事典がとうとう3になった。
このままでは本編を上回る量になるのは
必定である。

」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
「揚げ物屋」
湊下町商店街にある総菜屋。
トンカツとコロッケが人気商品。
特にコロッケは誰かが作った
「クロケッツ讃歌」がテーマ曲と
なっていて、一日中ラジカセから
鳴り響いている。
揚げ物屋主人はその曲に飽きているので
一日中耳栓をしているらしい。
この店のコロッケは標準サイズの
半分ほどのサイズで、値段も半分ほど。
これは、
「もうちょっと食べたいけど、ひとつ
じゃ多すぎる」という客の意見を汲んで
決めたサイズらしい。
火の通りがよくなるのも店にとっては
メリットだと言う。
「こんなに小さいと物足りない!」
と言う客に店主は
「じゃあ2個喰えばいいじゃねえか」
と即答する。
「和牛コロッケ」
「豪牛コロッケ」
「米牛コロッケ」
「交雑牛コロッケ」と、コロッケ
だけでも4種類あるが、多分すべて
同じものだろう。

「寝具店」
オーダーメイドの寝具を売り物に
する店。
枕だったらなんとなくわかるが、
普通の布団をオーダーする客が
いるのだろうかと皆不思議に思って
いるが、別に不思議なことはない。
売れていないのだ。

「なんでも売っている店」
なんでも売っている店だがもちろん
何でも売っている訳ではないが
「なんでこんなものが?」と
言いたくなるようなものを扱う。
左右で色もサイズも違うスリッパ、
怪しいスパイス、穴のないパイプ
など。
二人ともお雛様のひな人形セット
を売り出したときには
「先進的だ!」と過激メディアの
取材も来たが、主人は別に
そこまで何かを主張したかった
訳でもないようである。
店の奥の方では
「フォトショップ劣化コピー版」
も売っているようだが、噂の
域を出ない。

「薬店・大丈夫本舗」
あまりにも胃に優しすぎて
ほぼ効かない頭痛薬などを
扱う。
越谷生まれのグルコサシン製造
にも一枚嚙んでいるという情報
もあるが、この店なら
やりかねない。

「旭の事情」
ミモザママのオカマバー。
オカマバーなのに、スタッフは
普通の女性と普通に男性。
ママが小林旭のファンだから
この店名になった。
名物は「200時間カレー」。
商店街にある「カラチ」という
カレーショップが「100時間
カレー」を名物にしていて、
その上を行きたかっただけの
カレー。200時間も煮込む
意味はほぼないそうだ。
意地である。

「カレーショップカラチ」
パキスタンの都市カラチと
まったく関係がないカレー屋。
「どうせ辛い物好きなんて
味音痴だろう」という店主の
偏見で「辛い!」と「舌打ち」
を足した店名になった。
名物は100時間カレー。
でも近所の店で「200時間
カレー」を売り始めたので
次は「3分間カレー」を
売ろうとしている。
もうボンカレーじゃないか。

「カフェ・river」
商店街側に入口はないが、
商店街裏の川に面したカフェ。
あまりやる気はなさそうである。
 ↓

」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
事典ならいくらでも続くぞ。

※各記事にしばらく前から
第****話とタイトルにつけていたが
なんと50ばかり少なくカウントして
いたことが判明した。
この記事から正しい数字になります。
つまり2773回も更新したという
ことになるのか。
よくもまあ・・・。




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GITANESの匂いで幻覚が。
それとは無関係に・・・。

事典の続き

レジデンス茶柱の住人
「901号室」
管理人の住まい兼ライターとしての
事務所。

「902号室」
訳アリ30代女性
どんな訳があるのかこの時点で明らかに
なっていないが、作者も一体どんな訳
があるのかまだわかっていない。

「903号室」
市役所の防災部防災課防災班庶務係
細井明夫。
細くないが細井、明るくないのに明夫。
子供の頃は命名した親を恨んだというが
父・高雄は「そんなに身長は高くない」
というから、それよりいくらかマシ
だろうと自分を慰めている。
近所の人から「防災さん」と
呼ばれている。
正義感が強く誘惑に弱い。

「904号室」
怪しい西洋人ジャック・ハリスン。
しかし本名にはミドルネーム
「バルバロッサ」が入るので
これは「バンコラン少佐」と同じ。
幅広くビジネスを手掛けていると言い、
その顧客は多種多様らしいが、
実際は保険会社の調査員、つまり
オプである。
日本のコロッケを愛している。
「交雑牛」というフレーズをよく
使う。
ますます怪しい。

「1001号室」
怪しいマッサージ店「梅安」
経営者・鉄観音洋次郎
もう苗字が「鉄観音」という時点で
偽名だと丸わかりだが、それで
入居契約が通ったというのだから
如何に大家が適当かよくわかる。
ヘビースモーカー。
無許可マッサージ店ながら
近所のじいちゃんばあちゃんからの
熱い支持があり、予約はいつも
ほぼ埋まっているらしい。
防災さんとたまに駅前の居酒屋
に出没するらしい。

「1002号室」
ドジョウひげのリーチーツゥ。
中国か台湾かシンガポールか
どこかのヤツ。誰も国籍など
気にしていないのでそのことに
触れない。
佇まいは完全に中華料理屋で
よく鉄鍋を両手に持って歩いて
いるところを目撃されているが、
実は本当に中華料理屋らしい。
かなり喧嘩っ早く、涙もろい。

「1003号室」
山田八郎。
年中タキシードを着ている。
自称音楽家・声楽家。
商店街の揚げ物屋のコロッケが
好物で、食べるたびに
「コロッケ讃歌」を朗々と歌う。
ものすごくメカに弱い反面、
買い物の支払いはPayPay。
しかし揚げ物屋はPayPayを
取り扱っていないことに対し
不満を持っている。
ちなみに揚げ物屋がPayPayを
導入しなかったのは
「CMが嫌い」だからとのことである。

「1004号室」
ジョニー。
毎週土曜日には延々と「とんぼ」の
イントロ部分を弾き語る癖がある。
どう見ても「ジョニー顔」では
ないが、本人がそうだと言い切る
のだからもう仕方ない。
とんぼのイントロはなかなか上手い
のだが、アパートの住民は
「せめて月に一度ぐらいは曲を
変えてくれないか」と願っている。
愛車はブレーキが壊れたママチャリ。
アパートの前のゴミ箱にしばしば
追突するのは、よく酔っているから
だが、追突の旅に「Fu〇k!」と
悪態をつく。
でもどう見ても純和風顔。

レジデンス茶柱がどうして
2階建てなのに部屋が900番台
で始まっているかというと、
最初のオーナー(大家の叔父)が
せめて呼び名だけでも大きく見せた
かったから。
それが住民サービスにもなると
信じていた模様。


※「ミモザママ」の項に
「目薬フェチ」だと追記したい。

」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
出鱈目事典はホントに楽だ。










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GITANESは短くて臭くて
高くて不味くて素晴らしい。

それとは無関係に・・・。

突発的に始まった連載は、また
いつ突発的に終わってしまうかわからないが
もう書いてる人間にも何が何だか
わからなくなってきている。
いっそこの辺で「事典」でも。

」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
人物『レジデンス茶柱の大家』
「私」という目線で語る男。
40歳半ばで職業は大家と売文業。
母方の叔父から相続したアパートの
管理人。アパートの家賃とライター業
のギャラで生計を立てている。
地方情報誌やネットの記事書き代行など
雑多な仕事を請け負う。

人物『A』
今の段階では名前は明かされていない。
レジデンス茶柱大家の知人。
それほど「友達」という訳ではない。
大家と同じような年恰好。
特技は「激辛カレーを短時間で食う。」

モノ『・怪奇堂喫茶アフタヌーン』
ものすごく明るくて清潔な店なのに
店主のこだわりで致命的な名づけを
された喫茶店。
入って左がカウンター席。右が
ソファ席。
開業して2年経過。
「本日のコーヒー」は2年間ずっと
同じコーヒーである。

人物『アフタヌーンの店主』
50歳華奢な男性。
他人から「怪奇堂さん」と呼ばれたいのに
「アフタヌーンの店長」と呼ばれること
に不満を抱いている。
全然繁盛していないのにそれだけで
暮らしていることから、周囲の人々は
彼が実は大富豪なのではないかという
噂も立っている。
または「ゴルゴ13」の取次店だとか
CIAの手先だという憶測もあるが
真実は今のところ不明である。

人物『T』
アフタヌーンの常連。「クスリ」売人。
グルコサシン販売主。
やってることは意外とマメ。
公園の土管に登り、越谷生まれの
グルコサシン!と連呼して
警察に連行される。後日解放。

人物『木島正義』
中央署刑事一課の刑事で巡査部長。
通称・目つき悪夫。
セキセイインコ5羽にすべて
名前を付けているが、物語には
出てこない。

人物『蓬莱一』
木島の相棒で同期。巡査長。
通称・目つき悪造。
徐福の子孫だと言い張る父が嫌で
「先祖は肉まん屋だ」と強硬に
主張している。

人物『ミモザママ』
オカマバー「旭の事情」の経営者。
180センチ、120キロ。
「何がママだよ!パパじゃねーか!」
と絡んだ酔っ払いを病院送りにした
ことがある。
西島秀俊のファンで愛読書は
日経トレンディ。

モノ『レジデンス茶柱』
ボロアパート。家賃が格安だが
全室ウォシュレット完備で
オール電化。
名前の由来は「竣工の日に
茶柱が立った」とか
「坂下を聞き間違えた」とか
みんなバラバラなことを言うが
「少なくともレジデンスではない」
という意見は全員一致している。
全8室。家賃6万円。

人物『タウン誌のP』
月刊「マチ(街)人」の編集長。
一応タウン誌なのに、町の情報が
まったく載っていない月もある。
先月の特集は
「究極に旨い無名中華10店」
だったが実際は8店舗しか
載っていなかったぐらい適当
である。

」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
事典は続く


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GITANESの煙の向こうに妄想が見える。
それとは無関係に・・・。

喫茶店に居続けても新たな情報はない。
何かわかったら連絡してくれるようマスター
に頼み、とりあえず店を出る。
しかし、「30分のライアン」も慌てて
飛び起きついてきた。監視役なんだから
仕方ない。しばらくどこへ行くのも
ライアンと一緒ということになりそうで
憂鬱だった。
私「やっぱりついて来るよね?」
30分「あたりめえだ。ピンセットに
殴られるのも嫌だからな。」
何時間か前までは「ピンセットのジョー」
のことを「兄貴」と呼んでいた筈だが、
今では「ピンセット」と呼び捨てだ。
いや別に「ピンセット」が名前じゃ
ないんだから呼び捨てでもないか。
とにかく「兄貴」と呼ぶ敬意が一時消滅
したか、まあ心境に変化はあったようだ。

私「アパートに帰るか、『旭の事情』に
行くかだけど、ついてくるよね?」
30分「なんだよその旭の事情ってのは?」
私「あのママの店。ゲイバー。」
30分「あいつ、あきらって名前か?」
私「いや、小林旭が好きなんだって。」
30分「・・・」
私「・・・」

ゲイバーに行ってもまだ何も事態は
進んでいないだろう。アパートに
帰ることにして、商店街を進んだ。
間隔を2mほど空けた状態で並んで歩く
我々を面白がるように、商店街の
店の連中は注目しているようだ。
揚げ物屋「よう大家さん、寄ってく?」
私「今日はいいや。」
寝具店「やあ大家さん、寄ってく?」
私「布団屋に寄ってもなあ・・・」
何でも売ってる店「よう、茶柱さん、
もっと面白いスリッパが、」
私「しばらくスリッパはいいや。」
少し進むだけでいろんな人から声がかかる。
みんな暇なのだ。

占い師「やあ大家さん、座っていけ。」
私「いやだよ、インチキ占い師。」
占い師「どこがインチキなんだよ?」
私「顔つきだよ。なんだよそのなまずヒゲ」
占い師「ドジョウひげよりマシだろうが」
ライアンが小声で言った。
30分「お前、ロクな知り合い居ねえな」
私「お前よりマシだろ?」
30分「・・・俺もそんな気がする」
何なのだ、弱気な30分のライアン。
占い師「お前、そっちのお前。
お前が座れ。タダで見てやろう」
30分「俺に構うなよ!」
占い師「まあ座れ。妹は元気か?」
30分「え?」
占い師「郷里に妹いるだろ?」
30分「なんでわかるんだよ!」
占い師「まあ座れ。大家さんも。」
私「俺も?椅子ひとつじゃん」
占い師「半ケツずつシェアしろ。」
私「いやだよ・・・」
占い師「探し人なんだろ?」
私「なんでわかるんだよ!」
占い師「俺は占い師だよ?わかるよ。」
30分「じゃあなんで暇なんだよ。
もっと客がくる場所を占ったら
よかったじゃねえか!」
占い師「お前、そういう本質を
抉るようなこと言うなよ。
自分のことはわからんのだよ。」

そうか、占い師という手があったか。
一応ミッチについて訊いてみるか。
なにしろ時間はたっぷりある。
暇だからな。

」」」」」」」」」」」
続かないと思う。


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GITANESの匂いでクラクラするような
ストーリー。
それとは無関係に・・・。

ストーリーここまでで、
写真の人物10ではライアンは30分なのに
写真の人物11では60分になっていること
に気づいたあなたはまったく素晴らしい。

気付かなかった人は注意力が散漫だ。
「国語力が散漫なお前に
言われたくはない」と言われたら
ご尤もである。


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GITANESの匂いが混沌を呼ぶ。
それとは無関係に・・・。

中央署の3F、蛍光灯を意図的に消しているという噂の
長い廊下の先に、ドアがいくつか並んでいる場所がある。
各部屋のドア上部には番号だけ書かれたプレートが
貼り付けられているが、これら1~4はすべて
取調室である。
そして「3取」第3取調室では目つきの悪い刑事・
木島正義と相棒の蓬莱一がうんざりしていた。
取り調べの相手は言うまでもなくT、つまり
怪奇堂喫茶アフタヌーンで刑事二人に引っ張られた
男、谷口洋一である。
上司からの指示に首を傾げながらも谷口を
引っ張ったところまではまだよかったが、
違法薬物云々ならばそもそも組織犯罪対策課
の案件だろうし、第一彼が扱う「ブツ」には
違法成分も含まれていなかった。

木島「だから捜査一課なんて関係なかっただろ?」
蓬莱「だって、上からの指示なんだから
仕方ないだろう?」
木島「なんで一課なんだよ?」
蓬莱「課長のウチの隣のじいさんからの
タレコミなんだってよ。」
木島「タレコミ?」
蓬莱「まタレコミっていうより、苦情。
『なんとかしてくれ』って。」
木島「地域課に丸投げすりゃよかったのに。」
蓬莱「課長はあの辺の自治会長だからさ。
断りにくかったんじゃない?」
木島「知らねえよ・・・。」
脱力した木島はネクタイを緩め始めた。
蓬莱「西の森公園あるだろ?」
木島「課長の家の近所だろ?」
蓬莱「そ。あそこの遊具用の土管にのぼって
この谷口がクスリの宣伝してたんだって。」
木島「そうなのか?」
谷口「そうだよう。それが罪になるのかよう?」
蓬莱「こいつが土管の上に乗って
『これは魔法のクスリ!膝の悪い人集合!』
って営業してたんだよ、大声で。」
木島「・・・」
蓬莱「で、『世田谷生まれのグルコサ〇ンは
口から飲むんですよ!それが膝まで
届くんでしょうか?!いや、ないない!』」
蓬莱は自分の目で見てきたような芝居で
谷口になりきっているらしい。
蓬莱「口から飲んで膝治療に期待しても
無理なんです!そこでコレ!私が持っているのが」
木島「・・・」
蓬莱「越谷生まれのグルコサシン!
グルコサシンは飲まないんです!
その代わり、膝に直接塗るんですよ!
膝が痛いんだから膝に塗るんです!
膝が痛いのに口から飲んでいては
効率が悪すぎる!」
木島は、ちょっと『そうかも・・・』と思った。
蓬莱の芝居は続く。
蓬莱「膝にこのグルコサシンを塗れば
即座にちょっとマシになるんです!
でもひざ痛はそう簡単に治りません。
医者にいくべきです!でも病院の予約
が取れるまではこのグルコサシンで
なんとか繋ぐんですよ!
てな感じで、土管に乗って叫びながら
売ろうとしてたらしい。」
木島「ジャイアンリサイタルかよ・・・」
非常に謙虚で消極的なインチキなんだろうか。
木島はちょっと興味が出てきた自分に
腹が立った。

木島「おい、この小瓶の中身って
結局ただの水なんだろ?」
谷口「何を!馬鹿にするなよ!」
木島「じゃあなんだよ?」
谷口「アンメルツだよぅ!」
木島「はぁ?アンメルツぅ?!」
谷口「だって効くだろうがよ。
膝痛いんだからよう」
木島「そりゃ効くんだろうけどよ・・・」
蓬莱「それをコイツはグルコサシンって
名前つけて、小瓶に小分けして
筆とセットで3000円で売ってたって。」
木島「筆?」
蓬莱「だって、塗るんだからよう。」
木島「あ、そうか」
蓬莱「なに納得してんだよ。」
木島「アンメルツっていくらするんだ?」
蓬莱「大体500円ぐらいのもんだろう」
木島「瓶は?」
谷口「ひとつ80円ぐらい。筆は100円。」
木島「ほう。」
谷口「アンメルツひとつで5本とれるから
中身が100円。瓶と筆で180円だから
合計280円。」
蓬莱「暴利だねえ~」
谷口「何言ってるの?喫茶店のアイスコーヒー
だっておんなじぐらい儲けるだろ?」
蓬莱「で、売れるのかよ?」
谷口「公園でふたつ、ネットでひとつ。」
木島「それだけ?」
谷口「悪いかよぅ?」
木島「悪いだろ?」
木島はこめかみを押さえている。
谷口「でも効くぜ?スッとするし。」

木島「まあ、何と言うか、」
蓬莱「詐欺にはなるんだろうから
犯罪なんだろうけどな。」

木島「谷口、もう帰れよ」
谷口「え、いいの?」
木島「別に逮捕した訳じゃねえし。
オマエが同行に同意しただけで。」
谷口「同意なんかしてねえけど、
まあ帰れるんならそれでいいや。」
蓬莱「ほんとに帰すの?」
木島「いいだろ?地域課に投げても
またいろいろ説明が面倒くさい。
もう頭痛い。」

谷口「じゃあ玄関まで見送ってくれよ」
木島「調子に乗るなよ」
谷口「へへ。」


蓬莱「クスリと半グレ絡みって線だと
おもったけどな。」
木島「それでも一課の仕事かどうか
わからんよ。」
蓬莱「そうだねえ。クスリが
 絡んでそうな行方不明案件も
あるから、てっきりつながるかと。」

蓬莱が小さいポーチから取り出した写真には
女性が一人写っていた。
三原幸(ゆき)。通称ミッチ。




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GITANESの煙で幻が次々と。
それとは無関係に・・・。

」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
身を乗り出してきたマスターとオカマバーのママは
騒ぎ自体に興味があるだけかと思ったが、実は
写真の人物について少々の情報も持っていた。
ママ「写真のオンナはミッチで間違いない。
サングラスで顔隠してるけど、これはミッチだわ。」
私「ミッチ?」
ママ「そう。私の店の前の喫茶店で働いてた子。
   話したことはないからそれ以上は知らない。」
マスター「そうそう、『カナリア』の女の子だね。
     ボクはカナリアに週3で行ってるから
     一応顔なじみだよ。あまり話したことは
     ないけどね。」
私「え?喫茶店のマスターも喫茶店に行くの?」
マスター「京急の駅員でもJR使うこともあるだろ?」
ママ「それは喩えとして間違ってない?」
マスター「喫茶店の休憩に喫茶店に行くだけだよ。
     いいじゃないですか。」
ママ「まあ、いいんだけどね。」
また放っておいたら話が脱線したままになる。
どうせ暇だからそれでもいいのだが、写真の人物の
件はもうちょっと進ませたい。
私「でその喫茶店を辞めたの?」
マスター「店主の話では、急に来なくなったって。
  なかなかよくできた子だったから痛手だって。」

彼女の行方までの情報は結局誰も持っていなかった。
ママ「で大家さん、彼女探すの?」
マスター「茶柱さんもそんなにかかわりのない人
     でしょ?じゃあ無理して探さなくても
     いいんじゃないの?変なのに脅されてまで・・」
私「そうなんだけどね。やめろって言われたらつい」
ママ「やっちゃうんだよねえ。」
私「暇だからねえ。それと脅されてそれで終わり
  ってのも気に喰わない。」
ママ「案外危ない性格してるのね。ぼんやり顔のくせに。」
私「顔は関係ないでしょ」


カランコロン
60分のライアンが入ってきた。
ママ「おっ、60分のライアンちゃん!さすが
   さっき出て行ってからキッカリ60分だわ!」
マスター「名前に律儀だねえ!って、ケガしてない?」
60分「・・・うるせえ・・・」
私「どうしたの?」
60分「どうもしねえよ・・・」
ママ「何よ、言ってみなさいよ。マキロン塗る?」
60分「こんなもん、ほっときゃ治るよ!」
60分のライアンはかなり喋りにくそうだった。
目のまわりが赤黒く腫れていて、どう見ても殴られた
様子だった。
ママ「アンタ、モノが見づらいでしょ?ホレ・・・
   充血してるし医者に行った方がいいよ」
60分「うるせぇ」
ママ「サンテドゥあるよ?使う?」
60分「Vロートじゃねえのかよ」
ママ「アタシは目薬フェチなのよ。各種あるわよ。」
60分「要らねえよ・・・」
ママ「充血だけでも抑えないと。ホレそこに
   横になれ」
60分「やだよ!」
ママ「騙されたと思って。ホレ。無理やり抑え込むぞ!」
60分「自分でやるよ!」
マスター(小声で)「目薬差すのかよ・・・」
ママ「アタシがやってやるから!」


60分「変なことしねえだろうな?!」
ママ「しないわよ。自分の店の中ならわからないけど。」
60分「なんだよソレ・・・」
どういう訳か、60分は素直にソファに寝転んだ。
ママ「ホレ差すよ・・・。はい、これでよし」
60分「・・・」
ママ「いつまで目つぶってんのよ。開けないと目薬の
   意味ないでしょ?」
60分「・・・苦手なんだよ・・・」
マスター「目薬が?」
60分「沁みるだろうがよ・・・」
ママ「アンタよくもまあそんな怖がりで反社のパシリ
   なんかつとまるのね」
60分「うるせえ・・・」

私「まだ目開けないの?」
ママが60分の喉を親指で突いた弾みで、やっと瞼を
開けたらしい。
60分「ギャーーーーーーーー!」
マスター「大袈裟だねえ・・・」
機械仕掛けのように跳ね起きた60分は、ママの手から
目薬をもぎ取った。
60分「テメエ!これVロートじゃネエじゃねえかよ!」
ママ「え?」
60分「オマエ!これ『キターーーーーー!』のヤツ
   じゃねえかよ!騙したな!」
ママ「ケガしてるから沁みるだけでしょ?」
マスター(小声で)「Vロートでもケガしてりゃ沁みるよな」


ママ「なんでケガしたの?」
大騒ぎしすぎたのとケガのダメージで60分の体力は
かなり消耗していたようだ。
60分「ヤキ入れられた・・・。ピンセットの兄貴に」
マスター「おやおや」
60分「見張りがソッコーで帰ってきてどうすんだ って。」
マスター「そりゃそうだわな。」
私「で、ここにもう一回戻ってきたと。」
マスター「ほれ、これで冷やしなよ」
冷えたおしぼりを受け取った60分は、それを自分の
顔にかけまたソファに横たわった。
ママ「アンタの業界も大変だねえ・・・」
60分はもう返事する気もないようだ。


ママ「アタシそろそろ店に戻るわ。開店準備。」
私「あ、そう。また教えてね。」
ママ(小声で)「うちの店で相談してもいいよ?」
私「ありがとう。」
ママ「じゃあね!ライアン!店に遊びにいらっしゃいよ!」
60分「・・・行かねえょ・・・」

]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]

ミッチだったらしい。
誰なんだそれ?




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GITANESの煙のように迷走している。
それとは無関係に・・・。

ピンセットのジョーなんてなんとも気味の悪い男まで登場し、
別に積極的になっている訳でもない「人探し」をやめろ
と脅迫された。私だって本当はそんなこと
そもそもやりたくないのだ、面倒くさい。
しかし何というか、「やめておけ」と言われるとやりたくなる
というのが生来の自分の性格だ。
大家業と短文書きのアルバイトだけの生活で、正直いうと
毎日に退屈していたのは事実である。
脅された・というのも癪にさわる。
果たして「ピンセットのジョー」はピンセットをどう
使うんだろうか。
両目に刺す、両鼻に刺す、ほかの部位に突っ込む、
歯をグリグリする、背筋にソヨソヨする・・・
いくつかを想像してみたが、やはり想像の域を出ない。
背筋にソヨソヨぐらいなら我慢してもいいが、
他の痛い痛い想像は中止して、早歩きで喫茶店へ向かった。
もちろん「怪奇堂喫茶アフタヌーン」である。
ものすごくわかりやすい、いやわざとそうしているのだろうが
尾行が一人ついている。ピンセットと一緒にアパートへ
来た男だ。ピンセットの手下なんだろう。
ものすごく若い。まだ10代かも知れない。

怪奇堂喫茶アフタヌーンには、ドアにあの「カランコロン」
と来客を告げるようなベルの類はついていない。
かわりに、ドアを開けるとき「ギギギギーーーー」と
異音が鳴る。クレ5-56があれば一発で直るのだろうが
マスターはそれをしない。
どうしてドアに油をささないかマスターに尋ねたことが
あったが、「そんなことするとお客が来たことに気がつかない
だろう?」と、なるほどと唸るような、なんか違うような
答えが返ってきた。
たしかにあの音は営業に貢献していると言えなくもない。
てっきり「怪奇堂」というんだからそれらしい音で演出
しているのかと思う人もいるだろうが、中へ入ると
かなり明るい内装と照明、BGMはものすごく軽く
POPな洋楽なのだ。
もう慣れたのでどうでもいい。

カウンター席に座って、2年間ずっと同じの「本日のコーヒー」
を頼んだ。
オカマバーのママもカウンター席に移動してくる。そして
ピンセットの手下も店内に入ってきた。露骨な監視役だ。

1席ずつ飛んでいるが、オカマバーのママとピンセットの
手下に挟まれることになってしまった。

手下「よう、茶柱の大家さんよ。おとなしくアパートで
寝てろよ。
私「コーヒーぐらい飲ませてくださいよ。」
手下「フン。」
ママ「あら茶柱サン、人探しどうなったの?」
私はアイコンタクトで『その話はやめて』と語りかけたが
ママ「何?目がかゆい?目薬要る?Vロートでいい?」
痛くもかゆくもなかったが、否定する術がないので
おとなしくVロートを借りて使った。
自分はおそろしく不器用なので、差した液の80%は
目から逸れた。

手下「なんだオマエ、オカマかよ。大家さんはな、
もう人探しはしねえんだよ」
ママ「あら男前!どう、同伴するか?どう?どう?」
マスター「オカマバーにも同伴システムあるの?」
ママ「あるわけないでしょ」
手下「オマエ、馬鹿にしてんのかよ?!」
ママ「何言ってるの?アンタが好みだから誘っただけでしょうに」
手下「気持ち悪いよ、あっち行け!」
ママ「お前が行けよ」
手下「なんだと?!」

私「あのう、兄貴分かな?ピンセットの・・・」
手下「何?おう、俺の兄貴分だよ。」
私「そうなんだやっぱり。で、あなたはなんて名前?
  かっこいい通り名、あるんだろ?二つ名って
  言うのかな?」
スツールから腰を上げかけていた彼はまた座り直した。
手下「そんなカッコイイんでもないけどよ。俺は
   『30分のライアン』てもんだ。」
ママ「何それ?実家がピザ屋?」
マスター「長湯?」
ママ「早漏とか・・・」
マスター「え?30分は早漏に分類するの?」
私「効き目が30分ぐらいとか」
30分「テメエら、なめてんのか?!」
30分のライアンは完全に立ち上がった。
30分「うちのボスがよ、名づけの天才なんだよ!
   それにケチつけるのかっての?!」
ママ「あらそんなことはないわよ。ちょっとびっくり
   しただけよ。」
30分「嘘つけ!」
ママ「ホントよ。だって通り名に時間の単位なんて
   世界中探したってほかにないわよ。珍しいわよ」
30分「おぅ」
マスター「そうだね、印象に残る名前だよ。きっと
     そのうちいい仕事するんだろうなあ」
30分「・・・まあ、俺は気に入ってるんだからよぅ」
ママ「ほかにはボスはどんな名前を付けてるの?」
30分「ああ、『甲羅割りの須藤』兄貴だろ?それと
    『100年殺しの雄三』さんだろ?それに
    『なぜかチンタオ』さん、『馬泥棒の・・・』」
ママ「チンタオって、シャンハイじゃなくて?」
マスター「100年殺しって、100年経ったら
     たいてい死ぬよな。」
私「馬泥棒って、何やったんだよ・・・」
30分「うるせー!」
ママ「いやいやいや、その中でもやっぱり『30分のライアン』
   は飛びぬけてカッコイイよ!」
マスター「ほんとほんと!」
私「うん、良い名前になるのもならないのもオニイサン
  の腕次第だよ」
30分「おぅ、そうかあ・・・」
ママ「そうよ!あ、アタシコーヒー奢っちゃう!」
30分「いや、要らねえよ!同伴もしないよ?!」
ママ「そう言わずに!」
30分「要らねえよ!」
30分のライアンは店を出て行った。まだ30分も
経っていなかった。
ともあれ、これで話やすくなった。

私「で、人探しのことなんだけど。」
ママとマスターはやや身を乗り出した。

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名前ばっかり挙げてるとラクです。



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GITANESの煙は幻想を呼んでいる。
それとは無関係に・・・。

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怪しいマッサージ屋「だって、あれは警察に通報しても
なーんにもしてくれないよ。」
怪しいマッサージ屋はいつもの涼しい顔でそんなことを言う。
どうして?
正しい一般市民・防災部防災課防災班庶務係の私は
その投げやりにも思える反応に納得できない。
「どうしてさ?だって怪しいだろ?」
マ「怪しいだけではねえ・・・。薬物でもなければダメだろ。」
「え?違うの?」
マ「だから違うって。あれは闇金の使い走り。」
「は?闇金?」
マ「そ。小口で貸している闇金。駅裏あたりの業者だよ」
意外な答えだった。

「取り立てにやってきたってこと?」
マ「いや違うよ。小口で借りてる奴らが何人もいるんだ。」
「うん」
マ「で、元金は給料日まで返せないけど利息は付くわな」
「そりゃそうだ」
マ「で、金利が一日数千円とか小銭で払える分は付くから
  借りてる奴らはそれだけ払いに来るの。」
「・・・?」
マ「クルマを止めてる日付と大体の時間を事前に知らせて、
  そこに借りてる奴らが返しに来る。
  さっと近づいてさっと金利分の銭を渡しさっと離れる。
  事務所に払いに行ったり、借主の家へ集金に行くとか
  ばっかりじゃないよ。」
「そんなことするんだ・・・」
マ「クルマの中の奴らは多分名簿でチェックしてるよ。
  何月何日某500円、とかね。」
なんだ、薬物の売買ではなかったのか。そういえばコソコソ
している様子だとは言え、薬物売買にしては目立ちやすい。
「でもさあでもさあ、でもさあ」
マ「うるさいよ。なんだよ。」
私は食い下がる。
「闇の金貸しなんだから違法でしょ?違法なら警察に、」
マッサージ屋はあくびしながら被せるように言う。
マ「闇金が集金してるから捕まえて!なんて通報しても
  警察は何にもしないよ。それだけならね。」
「そんなものなの?」
マ「そんなもんでしょ。世の中は。俺のマッサージ店だって
  何の届出もしてないし違法だよ。でも警察には相手に
  されてない。」
「そうなの?」
マ「そうだよ。届け出してないだけで内容は普通のマッサージ
  だし、近所のじいちゃんばあちゃんしか来ないし。
  騙したこともないしその辺の真っ当なマッサージより
  かなり安いし。だからクレームもないから通報されない」

そうなのか。世の中というのはそういう風になっているのか。
防災部防災課防災班に身を置く者としては釈然としないような
そうでもないような。

「どうして闇金に詳しいの?」
マ「たまに借りるしね。だから摘発されたら困るよ。
  防災さんがカネ貸してくれるんなら別だけど。」
「いやカネの貸し借りはしないよ。」
マッサージ屋は白衣のポケットから煙草を取り出し
火をつけた。
マ「まあ闇金の連中だからまともには見えないし、
  裏には当然あぶねえのがついてるけど、踏み倒さなきゃ
  どうってことない。一応借りる側が客だからね」

軽く手を振ってマッサージ屋と別れた。
防災部防災課防災班庶務係・細井明夫つまり私は不覚にも
そういった仕組みには疎かった。なんたる不覚か。

後日マッサージ屋と会ったときその話になって
『資本主義の裏側を見たような気分だ』と言うと
「大袈裟だよ防災さん」と呆れられた。

」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

写真の人物にまったく関係がないではないか。





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