GITANESではなくて、こういう場合はバンコランの
細ーい葉巻の方がいい。
それとは無関係に・・・。
外套を着込み制帽をかぶる。
必要があるかどうかは別にして、ホルスターに
拳銃が入っているかどうかを一応確認する。
軍の規程がそうなっているのだから仕方がない。
今日も冷え込むが職務と日課には逆らえない。
相棒のジャーマンシェパードはすでに戸外で
尻尾をユラユラ揺らし始めている。
手にピッタリと吸い付くような革の手袋をつけ
残りのコーヒーを飲み干した。
こっそり入れたブランデーがやや多すぎたようで、
うまい具合に喉がピリピリする。
巡回という名の、散歩の時間だ。
雪は止み、風もおさまってはきたがまだまだ鋭い
風の音は鳴りっぱなしである。
雪が積もった荒野の真ん中に延びる一条の道を進む。
哨戒所の建物を出てすぐに、監視者は露骨な尾行を始めた。
秘密にもなっていない秘密警察の監視者だ。
ご苦労なことだ。
一応の礼儀として、あるいは単に面倒くさいから
尾行者には気づいていないふりをしながら歩く。
慣れてしまったいつもの習慣だ。
もっとも、いつもは2人の尾行者が
今日は4人に増えているようだが。
吐く息がすぐに雪になって積もっていくような感覚にまけず、
なるべく背筋を伸ばして足早に歩く。
寄り添う犬は軽快に歩くが、尾行者はどうなんだろうか。
とんだことに巻き込まれたのは、もちろん自分自身のせいである。
手配中の潜伏者という人物がヤツだったことに加えて
脱出を手引きする女性があの、
お、尾行者が距離を詰めてきた。
それとなくホルスターの留め具を外す。
あの時まさか、自分が手配者の脱出を黙認するなど思いも寄らなかった。
銃殺ものだが仕方がない。
一瞬で覚悟を決めた上での愚行なのだ。
犬と拳銃一丁。
もしかしたらあの4人は倒せるかも知れない。
だが、そんなことでは終わりはしないのはわかり切っている・・・。
」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
というような、旧東ドイツでの秘められたエピソードを妄想をしながら、
犬の散歩をしてみた。
当然BGMは「哀しみのスパイ」だ。小林麻美だ。
この、「哀しみのスパイのスピンオフ」では、私は過去の失態のために
哨戒所に左遷された下士官で、
秘密警察の公然とした尾行に毎日辟易している。
その失態というのは、「潜伏者の摘発」という職務に就いていながら
誤って対象者を取り逃してしまったことだ。
そしてそれは「誤って」ではなかった。
潜伏者の正体がまさかあの、 だったからだ。
という設定になっている。
毎日その妄想は変わる。
先日は
「民を引き連れたモーゼが稲穂の海を割る」
という場面を想像しながら歩いていたところ感情が
盛り上がってきたので
「おお、ではもう一回りしてみようか」と考えたが、
付き従う民(柴犬のケンタロ)に心配そうな顔をされたので
仕方なく帰宅した。
明日は何になろうか?
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