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the other side of SmokyGitanesCafe
それとは無関係に・・・。
 



GITANESの匂いが混沌を呼ぶ。
それとは無関係に・・・。

中央署の3F、蛍光灯を意図的に消しているという噂の
長い廊下の先に、ドアがいくつか並んでいる場所がある。
各部屋のドア上部には番号だけ書かれたプレートが
貼り付けられているが、これら1~4はすべて
取調室である。
そして「3取」第3取調室では目つきの悪い刑事・
木島正義と相棒の蓬莱一がうんざりしていた。
取り調べの相手は言うまでもなくT、つまり
怪奇堂喫茶アフタヌーンで刑事二人に引っ張られた
男、谷口洋一である。
上司からの指示に首を傾げながらも谷口を
引っ張ったところまではまだよかったが、
違法薬物云々ならばそもそも組織犯罪対策課
の案件だろうし、第一彼が扱う「ブツ」には
違法成分も含まれていなかった。

木島「だから捜査一課なんて関係なかっただろ?」
蓬莱「だって、上からの指示なんだから
仕方ないだろう?」
木島「なんで一課なんだよ?」
蓬莱「課長のウチの隣のじいさんからの
タレコミなんだってよ。」
木島「タレコミ?」
蓬莱「まタレコミっていうより、苦情。
『なんとかしてくれ』って。」
木島「地域課に丸投げすりゃよかったのに。」
蓬莱「課長はあの辺の自治会長だからさ。
断りにくかったんじゃない?」
木島「知らねえよ・・・。」
脱力した木島はネクタイを緩め始めた。
蓬莱「西の森公園あるだろ?」
木島「課長の家の近所だろ?」
蓬莱「そ。あそこの遊具用の土管にのぼって
この谷口がクスリの宣伝してたんだって。」
木島「そうなのか?」
谷口「そうだよう。それが罪になるのかよう?」
蓬莱「こいつが土管の上に乗って
『これは魔法のクスリ!膝の悪い人集合!』
って営業してたんだよ、大声で。」
木島「・・・」
蓬莱「で、『世田谷生まれのグルコサ〇ンは
口から飲むんですよ!それが膝まで
届くんでしょうか?!いや、ないない!』」
蓬莱は自分の目で見てきたような芝居で
谷口になりきっているらしい。
蓬莱「口から飲んで膝治療に期待しても
無理なんです!そこでコレ!私が持っているのが」
木島「・・・」
蓬莱「越谷生まれのグルコサシン!
グルコサシンは飲まないんです!
その代わり、膝に直接塗るんですよ!
膝が痛いんだから膝に塗るんです!
膝が痛いのに口から飲んでいては
効率が悪すぎる!」
木島は、ちょっと『そうかも・・・』と思った。
蓬莱の芝居は続く。
蓬莱「膝にこのグルコサシンを塗れば
即座にちょっとマシになるんです!
でもひざ痛はそう簡単に治りません。
医者にいくべきです!でも病院の予約
が取れるまではこのグルコサシンで
なんとか繋ぐんですよ!
てな感じで、土管に乗って叫びながら
売ろうとしてたらしい。」
木島「ジャイアンリサイタルかよ・・・」
非常に謙虚で消極的なインチキなんだろうか。
木島はちょっと興味が出てきた自分に
腹が立った。

木島「おい、この小瓶の中身って
結局ただの水なんだろ?」
谷口「何を!馬鹿にするなよ!」
木島「じゃあなんだよ?」
谷口「アンメルツだよぅ!」
木島「はぁ?アンメルツぅ?!」
谷口「だって効くだろうがよ。
膝痛いんだからよう」
木島「そりゃ効くんだろうけどよ・・・」
蓬莱「それをコイツはグルコサシンって
名前つけて、小瓶に小分けして
筆とセットで3000円で売ってたって。」
木島「筆?」
蓬莱「だって、塗るんだからよう。」
木島「あ、そうか」
蓬莱「なに納得してんだよ。」
木島「アンメルツっていくらするんだ?」
蓬莱「大体500円ぐらいのもんだろう」
木島「瓶は?」
谷口「ひとつ80円ぐらい。筆は100円。」
木島「ほう。」
谷口「アンメルツひとつで5本とれるから
中身が100円。瓶と筆で180円だから
合計280円。」
蓬莱「暴利だねえ~」
谷口「何言ってるの?喫茶店のアイスコーヒー
だっておんなじぐらい儲けるだろ?」
蓬莱「で、売れるのかよ?」
谷口「公園でふたつ、ネットでひとつ。」
木島「それだけ?」
谷口「悪いかよぅ?」
木島「悪いだろ?」
木島はこめかみを押さえている。
谷口「でも効くぜ?スッとするし。」

木島「まあ、何と言うか、」
蓬莱「詐欺にはなるんだろうから
犯罪なんだろうけどな。」

木島「谷口、もう帰れよ」
谷口「え、いいの?」
木島「別に逮捕した訳じゃねえし。
オマエが同行に同意しただけで。」
谷口「同意なんかしてねえけど、
まあ帰れるんならそれでいいや。」
蓬莱「ほんとに帰すの?」
木島「いいだろ?地域課に投げても
またいろいろ説明が面倒くさい。
もう頭痛い。」

谷口「じゃあ玄関まで見送ってくれよ」
木島「調子に乗るなよ」
谷口「へへ。」


蓬莱「クスリと半グレ絡みって線だと
おもったけどな。」
木島「それでも一課の仕事かどうか
わからんよ。」
蓬莱「そうだねえ。クスリが
 絡んでそうな行方不明案件も
あるから、てっきりつながるかと。」

蓬莱が小さいポーチから取り出した写真には
女性が一人写っていた。
三原幸(ゆき)。通称ミッチ。




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