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秘録 宇垣一成を読む

2016-02-20 08:30:15 | 日記
 宇垣一成といってもほとんどの人は聞いたことがないことと思います。日本の近現代史や陸軍について書かれた本には重要人物として登場しますが、歴史の教科書にはでてこないと思います。

 宇垣は大正から昭和にかけて陸軍大臣を長期にわたりつとめ、宇垣時代ともいえるほど権勢を誇った人物です。その後、首相に推挙されますが、出身母体の陸軍から陸軍大臣を出してもらえず、首相となることができませんでした。

 当日の陸軍を握っていた中堅将校にとって必要な首相は、自分たちの思いどうりになるロボットな首相で、宇垣ではロボットにはならないため陸軍大臣を出さないことにより首相になることを阻止したのだと思います。

 宇垣の行ったことで一番重要なことと思われるのが、宇垣軍縮といわれる四個師団を廃止したことです。しかしただ廃止して軍事費を削減したのではなく、四個師団を廃止したことにより浮いたお金を、戦車、重砲、航空など軍の近代化に向けたことです。後に太平洋戦争で米軍と戦うわけですが、米軍と比べると全く近代化できていなかった帝国陸軍ですが、宇垣がこの近代化を行っていなかったら、もっとひどいことになっていたことでしょう。

 それと四個師団も廃止すると将校があまってしまうわけで、軍を去ることとなった者もいたことと思いますが、その余った将校を活用するために、中学や高校、大学に配属将校として送りこみ軍事教練を必修化したことです。これによって多くの国民が陸軍の基礎を教えられたこととなり、後の太平洋戦争での徴兵に役立ったことと思います。

 しかし、この軍縮を行ったことが宇垣が首相に推挙されたにもかかわらず、陸軍大臣を得られなかった要因ともなったと言われています。それから、これは本には書かれていませんが、師団の本部や連隊があった地域では、多くの軍人がいなくなるわけで地域の経済に与えた影響は大きかったと思われます。

 もうひとつが三月事件で、陸軍の中堅将校がクーデターを計画し、クーデターの成功に伴って首相に宇垣を担ぎ出すという計画でした。クーデターの実行の前に計画が漏れて首謀者はつかまることとなりますが、一説によると宇垣がクーデターなど起こさずとも首相に推挙されそうと判断して、クーデター計画を中止させたとも言われています。

 宇垣がこの事件に本当にかかわっていたのかどうかは怪しいところではあるのですが、この事件にかかわったことが軍縮と同様、陸軍大臣を得られなかった要因のひとつとも言われています。

 ところで、現在の首相は衆議院で過半数を得た人が首相になりますが、当時は元老や重臣が首相にふさわしい人として選考し、その人に対して天皇が内閣をつくるようにと指示することによって内閣を組織しました。ですから、首相や閣僚は議員である必要はありませんでした。

 また内閣を組織するためには、陸海大臣を陸軍、海軍から得なければならなかったのですが、軍にとって気に入らない人物が首相に推挙されると大臣を出さないことによって内閣を組織させない。また、大臣を辞任させて後任を出さないことにより内閣をつぶすということを行いました。旧憲法の欠陥です。これによって陸軍が政治をぎゅうじって太平洋戦争に突き進むこととなります。


 ということで、宇垣一成は今では過去の人物となっていますが、当時の実力者であって、もし宇垣が首相になっていたら実行力を持った人物でしたし、永年陸軍大臣をつとめたことで政党や官僚にも顔がきいたはずで、その後の日本の歴史が変わっていたかもしれません。