情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

JAPAN-VISITとUS-VISIT統合へ~真相を解説するメールが届きました

2006-05-05 22:35:40 | 共謀罪
JAPAN-VISITとUS-VISITの「親密な」関係を解き明かすメールが届いたので次に引用します。

■■引用開始■■

共謀罪と一体の入管法改正の危険な中味
国境を超えて移動する者を潜在的犯罪者・テロリストとみなす国境管理
監視されているのは外国人だけでなく国境を超えて移動する市民全体である。
日本の入管システムの開発を受注したアクセンチュア社は
US-VISITを100億ドルで落札した会社である。

                            2006年5月5日

                               海渡 雄一

1 アクセンチュア社が日本の入管システムのソフトウェア開発を10万円で落札
 現在、衆議院で可決され、連休明けから参議院で議論されることとなっている入管法改正案は極めて重要な内容のものである。

 まず、保坂展人衆議院議員のブログから引用する。
 http://blog.goo.ne.jp/hosakanobuto/e/9ef564885df741578140e33449809c7b

 入管法審議で問題にした指紋情報・顔写真データなどの生体情報の「認証装置及び自動化ゲート」のソフトウェア開発と実験の業務を、わずか10万円(運営業務費用9万円・成果物作成費用1万円)でバミューダに本社を置くアクセンチュア株式会社が落札(平成17年9月12日)している事実が記されていた。あまりに低額なので、法務省大臣官房会計課入札室がヒアリングした記録が公表されている。よく読んでみよう。

「本件実証実験・試行運用の運営に当たって,契約業者は,
①海外機関での生体情報認証技術を利用したシステムの設計,開発,プロジェクト管理を行った際の成果及びノウハウを活用し,必要最小限のカスタマイズで作業を履行することが可能なこと,
②入国管理局の刷新可能性調査,最適化計画策定で蓄積した成果及びノウハウにより効率的に作業を実施することが可能なこと,
③アクセンチュア(株)は,会社全体の方針として,国土安全保障領域に力を入れているが,入国管理局向けのカスタマイズにより,成果及びノウハウの蓄積を行い,潜在顧客を開拓するための実行能力を強化することが可能であるので,経営戦略の一環として,入札価格により作業を行うことなどから,当該価格で履行可能と判断したため」とある。

この業務の海外での実績があると言ったら、どこなのか。昨日、入管局長に訊ねた。
「アクセンチュアは、アメリカでUS-VISITを手がけておりまして」という答弁だっ
た。日本が2番目に導入するわけだから、アメリカしか該当国はない。ところで、なぜ10万円なんだろう。いくら経験があるとは言っても、年間750万人の外国人の指紋・顔写真の採取とイミグレ版ETCのような「自動化ゲート」の実験となれば、どう考えても10万円はないだろう。その謎を解くヒントが次に記載されていた。

当該契約期間中における他の契約請負状況 「出入国管理業務」及び「外国人登録証明書調整業務」の業務・システムの最適化計画策定(法務省入国管理局)

 同社は現在、日立製作所が閉鎖系のレガシーシステムで構築してきた出入国管理局システムの「刷新可能性調査」(平成16年・5880万円)を受注して、平成17年1月に「出入国管理システム刷新可能性調査報告書」を発表している。さらに、アクセンチュア社は、同調査を土台にした「最適化計画」を(平成17年6月・9492万円)で受注している。「最適化計画の仕様書」には、「入国管理局出入国管理情報管理室ならびに、IC旅券など認証システム試行運用及び自動化ゲートシステム実証実験(仮称)の受託業者に対して、適宜助言を行う」と書かれている。この9492万円の契約を結んだアクセンチュア社が、3カ月後にたった10万円でこの業務に自分で名乗りをあげた。助言どころか、自社を指名したことになる。

さらに、アクセンチュア社は「 次期登記情報システム開発に係るプロジェクト統合管理支援業務(法務省民事局)」 「検察総合情報管理システムのシステムテスト,導入等作業(法務省刑事局)」も請け負っているということもわかった。バミューダに本社置くアクセンチュア社は、私たちが知らないうちに、法務省関係だけでも、「登記」「検察」「入管」のデータベースに深く関与し始めている。

2 国境管理における生体認証の導入の二つの側面
(1)日本人にはIC旅券、外国人には指紋採取
 このアクセンチュア社の落札にはどのような意味があるのであろうか。
 国境管理における生体認証の導入については二つの側面がある。一つは自国のパスポートの中に生体認証情報を組み込むことであり、もう一つは外国人の入国の際に顔写真と指紋を採取して入国審査や犯罪捜査などに活用することである。
 この二つのことは当局によって故意に区別され、別々に議論されているが、この二つのことは一体的に議論がなされるべきであり、世界中の法執行機関が共同して進めている人の国境を超える移動について、ITテクノロジーを利用した飛躍的な規制強化という文脈の中で統一的に捉えられるべきである。

(2)便利だけですまないIC旅券の導入
 外務省は2006年にIC旅券を導入しようとしている。この旅券の特徴はIC(集積回
路)を搭載し、国籍や名前、生年月日など旅券面の身分事項の他、所持人の顔写真を電磁的に記録することである。IC旅券もこれまでと同じように冊子型であるが、中央にICチップ及び通信を行うためのアンテナを格納したカードが組み込まれる。我が国が発行するIC旅券の生体情報としては、今のところ「顔画像」のみを記録することとされている。

(3)外国人には入国の際の個人識別情報の提供義務付け
 法務省は現在開会中の通常国会に、原則16歳以上の外国人が入国する際、指紋や写真などの個人識別情報の提供を義務づける出入国管理及び難民認定法の改正案を提出している。この法案は要注意人物のリストと照合し、犯罪者の上陸を水際で防ぐことを目的としている。同様の手法を導入しているのはアメリカだけとされる。
 現在法務省が準備中の法案においては、提供を義務づける個人識別情報を「指紋、写真その他の個人を識別することができる情報で、法務省令で定めるもの」と定義しており、その提供を拒んだ場合は、退去を命じられるとされている。
 また、法案では、退去強制の対象に「市民や国家を対象としたテロ行為を犯す恐れがあると法相が認定した者」が新たに付け加えられている。入国する航空機や船舶の長に、乗員・乗客名簿などの事前提出を義務づける規定も設けられる。
 まさに、外国人の多くを潜在的な犯罪者もしくはテロリストと見なして、指紋と顔写真の提供を義務づける世界に類を見ない異常に厳格な出入国管理体制が、アメリカに続いて我が国において世界に先駆けて構築されようとしている。

3 世界的な人の移動監視のシステムを構築しようと指向するUS-VISIT
(1)US-VISIT
 アメリカでは2004年9月以降、(1)14歳未満(2)80歳以上(3)公用ビザ所有者などを除く、原則としてすべての外国人渡航者から、入国時に指紋を採り、顔写真を撮影している。しかし、このような措置はヨーロッパ諸国はもとより、他の世界の地域においてもまだ実施されていない特異な制度である。
 我が国はこの極端な外国人敵視の個人情報収集制度をアメリカにならって、世界の中で、真っ先に追随して実施しようとしているのである。
 
(2)アメリカでも反対のあったアクセンチュア社との契約
 アクセンチュア社はこのUS-VISITシステムを2004年に100億ドルで落札している。しかし、このとき、アメリカ議会では、民主党議員のローザ・デラウロ氏がバミューダに籍を置く節税企業にこのような事業を委託することは妥当でないとして、論陣を張った。2004年6月9日には連邦下院歳出委員会において、外国会社と国土安全保障に関する契約を禁止するための改正案が35対17で可決されている。

(3)国際共通IC旅券
 2001年の米国同時多発テロ以降、テロリストによるパスポートの不正使用を防止する観点から国際会議でも活発に議論されてきた。また、米国がビザ免除継続の要件として各国にバイオメトリクスを採用したパスポートの導入を求めたことがこの動きに拍車をかけた。パスポートは自国のみでなく世界中の国々で使用されることから国際的な相互運用性が重要とされ、ICAO(国際民間航空機関)において国際標準化作業が進められた。そしてICAOは、2003年5月、記録媒体として非接触型ICチップを選択し、ICチップに記録する必須の生体情報として「顔画像」を採用(各国の判断で指紋、虹彩を追加的に採用することを認めている。)した。

(4)各国の法執行機関による情報の共有化
 従来から、入管と警察などの関係行政機関との協力は規定されていた(同法61条の8)が、2005年の改正によって新設された同法61条の9において、外国の入管当局に対して、「その職務(出入国管理及び難民認定法に規定する出入国の管理及び難民の認定の職務に相当するものに限る。次項において同じ。)の遂行に資すると認める情報を提供することができる。」とされた。
 しかし、政治犯罪、日本国内で犯罪とされていない場合、相手国が要請に応ずる保証のない時を除いて、提供された情報を「当該要請に係る外国の刑事事件の捜査又は審判(以下この項において「捜査等」という。)に使用することについて同意をすることができる。」とされている。
 ここでは、入管行政と刑事捜査を行う警察との垣根が、国境を超えて融合しつつある姿を確認することができる。
 つまり、日本の入管が集めたアメリカ人の顔写真と指紋はアメリカの警察に提供される可能性があるし、逆にアメリカの入管当局が集めた日本人の顔写真と指紋は日本の警察にも提供されるのである。データベースごと共有するところまで、行き着きかねないほど、各国の入管当局と捜査機関は一体化の方向を強めている。

(5) 第12回ARF閣僚会合声明
 2005年6月18日、カンボジアで開催された第10回ARF閣僚会合で採択されたテロ対策協力声明はテロ対策のために人の移動に関して厳しく制約を科していく方向を確認している。
 2005年7月29日(金曜日)、ラオス・ビエンチャンで開催された第12回ARF閣僚会合で採択された「テロリズム及び他の国境を越える犯罪に対する闘いにおける協力強化に当たっての情報の共有及びインテリジェンスの交換並びに身元証明書の安全性確保に関するARF声明」では、「これまで以上に関連情報及びインテリジェンスを交換すること、特にテロリスト及びその他の国境を越える犯罪活動に関する情報共有及び交換のための協力を強化すること。」「バイオメトリクス認証の機械読みとり式旅行文書の採用における協力を促進。」などが規定されている。

4 出入国管理業務のコンピュータシステムの統合が鍵
(1)目標はデータベースの統合的運用
 旅券に対するバイオメトリックスの導入と同時に進められているのが出入国管理に関するデータベースの統合的運用である。
 「入国管理局では,出入国審査総合管理システム等の既存システムのデータベースを外国人出入国情報システムに統合し,データベースの一元化等を図ってきたところ,平成16年度においてはシステム機器の更新,データベースとの接続により,単一の端末から複数のシステムのデータ検索が可能となり,外国人の入国から出国までの記録が一元化される等一層の業務の適正化,効率化が実現されることとなった。」
(入管白書より)

(2)アクセンチュア社の提案するデータベースの統合的運用
ここに、2005年1月に法務省に提出された一通の報告書がある。作成者はアクセンチュア社である。タイトルは「出入国管理システム刷新可能性調査報告書」である。
http://www.moj.go.jp/KANBOU/JOHOKA/SAITEKIKA-KOBETSU/ko-05.pdf
 この報告書こそ、この外国人から指紋を採取する入管法改正と日本人に対するIC旅券の導入を提案しているのである。
 コンピューター・システムの提案となっているが、その実態はUS-VISITと統合運用できるシステムの開発なのである。
 アクセンチュア社のシステムが完成すれば、アメリカの入管を通過する際に取得された指紋を、日本の入管と警察はデータベースの統合運用によって、即時に検索できるようになるだろう。
 他方で、日本の入管当局に蓄積された個人情報は、アメリカの入管当局だでなく、FBI,CIAからも即時検索可能となる可能性が高い。ここに存在するはずの技術的障壁を取り除くのが、アクセンチュア社の開発するシステムということになるのである。

5 テロ対策による国際人権保障システムの破壊
(1)人の移動の自由化という価値の否定
 人の移動の自由は、人の思想良心の自由や表現の自由などのさらに根底をなす基本的な自由である。グローバリゼーションは人と物の国際的な流れを促進するものであり、EU憲章などもその域内についてではあるが、人の移動の自由を大きな目標に掲げていた。 EU内における移動・居住の自由はマーストリヒト条約第18条によって保障されるEU法上のもっとも重要な基本権とされる。この権利を具体化した共通国境管理の漸進的撤廃に関する協定(85年シェンゲン協定)及び90年に締結されたシェンゲン実施条約はその適用範囲を拡大しており、1999年5月1日に発効したアムステルダム条約は、「シェンゲン・アキをEUの枠組みに統合する議定書」の採択により、シェンゲン協定及びその関連規則(総称「シェンゲン・アキ」)をEUの枠組みに取り込み、同条約発効後5年以内に履行措置を講ずることとした。しかし、世界経済のグローバル化は南北格差を拡大し、地域的な紛争とテロなどを続発させてきた。このような情勢の変化によって、人の移動そのものを敵視し、監視するシステムがアメリカを中心としてEU諸国も巻き込んで進められようとしているのである。テロとの闘いという動向の中で人権・自由が死滅しつつあるのである。

(2)テロ対策としての生体認証の有効性とその限界
 確かにテロリストによる犯罪や越境組織犯罪を防止するためには人の移動を監視
し、あらかじめ収集されているテロリスト・組織犯罪者データベースとの照合を行うことは有効な手段となりうる。
 しかし、このような規制を強めたとしても、憎しみの連鎖の中で国家暴力によって肉親を殺された者がその報復のために自爆テロの実行者となることを食い止めることはできない。あらかじめテロリスト・組織犯罪者としてデータベースに搭載されていない者による犯行を食い止めることはこのシステムでは原理的に不可能である。現に、最近の自爆テロ実行犯はあらかじめマークされていない女性や若者による犯行が増加している。

(3)国民的討論の不在
 外国人に対する指紋の採取という問題に関していえば、我が国では、在日韓国人の方々を中心として永住者に対する指紋押捺制度が外国人登録証の常時携帯制度と並んで人権侵害であることが繰り返し指摘され、これらは1992年6月入管法改正の結果廃止された。しかし、永住者は除かれているとはいえ、外国から日本に観光に来る一般市民からも指紋と顔写真を採取するという計画が大きな国民的討論も抜きに導入されようとしていることに日本国民が外国市民に対して民主主義的感受性を欠如しているのではないかと大きな危惧を抱かざるを得ない。そして、このことが振り返って日本国民の人権保障を決定的に後退させかねないことを指摘したい。

(4)少数者保護上の問題点と技術的な限界
 また、このシステムが広範に使用されるためには、ケガ・病気・先天性欠損などによって、生体認証が出来ない人々にどのように対応するのか、このシステムの広範な導入によって不当な差別を引き起こす可能性がないかを検討しなければならない。また、生体認証も万全ではなく、経年変化によって認証が出来なくなったり、複製によって破られたりする可能性がある。生体情報は生涯不変であるが故に、一度複製によって破られてしまうと一生安全性を回復できないという致命的な問題点を持っている。

(5)人権侵害の発生は不可避
大きな問題は、生体認証による国境管理が強化されることにより、様々な人権侵害が引き起こされることは不可避であるということである。この制度は技術的に精度を上げていくことは可能でも、精度は100パーセントではない。絶えず蓄積データとのミスマッチや誤認識の可能性を抱えている。この場合にテロリストと指示された個人が誤りを立証することは不可能に近い。テロリストと誤って判断された者は、生命の権利を含めて深刻な被害を被る可能性がある。このことは、2005年7月22日イギリスにおける地下鉄テロ事件の直後に発生した外国人誤射殺事件の例に端的に示されている。
 自国民の旅券に対するバイオメトリクスの導入の義務づけは、ごく例外的な犯罪の摘発のためにすべてのパスポート所有者のプライバシーの権利、自己情報コントロールの権利を犠牲にし、えん罪に類似した悲劇的な人権侵害を不可避的に生じさせるだろう。
 また、外国からの入国者からのバイオメトリクス採取制度の導入は、諸外国の人々への監視を強化する態度、あるいは非友好的な態度とみなされ、日本と諸外国との国際関係をより不安定なものとし、戦争やテロの潜在的な危険性を高めているといえる。

(6)制度の透明性の欠如
 また、プライバシー情報を最も濫用する可能性があり、その侵害性が顕著なものが警察と法務行政による濫用である。しかし、データベースの連結の禁止や個人情報の開示訂正の権利なども、捜査機関や入管の収集する情報では除外されている。犯罪予防目的、国際捜査共助、入管事務に関連する個人情報ファイルは個人情報ファイル簿の作成そのものが免除されている(行政機関個人情報保護法7条)。開示請求そのものが制度的に不可能なのである。このように、制度の根幹部分は市民から全く見えず、外側からチェックするシステムも皆無というのが現状である。

6 国の基幹的治安情報のすべてを外国に提供して、主権ある独立国家といえるのか
(1)政府は独立国家として矜持を持て
 このように、この外国人からの指紋採取とIC旅券という我が国の生体認証旅券システムはアメリカのUS-VISITと連結されている。むしろその一部と言っていいであろう。そして、世界中で、このシステムに最初に統合されようとしているのが、世界の中で日本であるということが、私たちの国家の国際社会における位置を示している。
 国の入管情報や、検察情報など基幹的治安情報データベースを、外国に売り渡し
て、日本は主権ある独立国家といえるのか。
 人権侵害の危険を論ずる前に、そのことの妥当性が問われなればならない。
 アクセンチュア社に入管システムのシステム開発を委ねることが、今後いかなる事態をもたらしうるかについて、日本政府は十分な調査と検討を行ったのか。国会で徹底して追及して欲しい。

(2)国境を超えた人の移動の全面的監視システムを許してよいのか
 この制度は、日本に来日する外国人に対して向けられているのではなく、日本人と外国人に等しく向けられた国境を超えた人の移動に対する全面的な監視システムなのである。監視されているのは、外国人ではなく、国際的な法執行機関の連結体から見た世界市民(国境を超えて移動しようとする個人)の全体である。生体認証旅券の問題は外国人の問題ではなく私たち市民全体の問題なのである。
 外国の入管当局から見れば我々も外国人であることを自覚し、自らの自己情報コントロール権の問題として、生体認証旅券問題に取り組む必要がある。
 
■■引用終了■■


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