情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

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NHKシリーズJAPANデビュー「アジアの“一等国”」は偏向しているのか

2009-04-19 10:59:29 | メディア(知るための手段のあり方)
 NHKが台湾統治について取り上げたシリーズJAPANデビュー第1回「アジアの“一等国”」に対して、偏向した番組だとの批判が相次いでいるようだが、加害国の市民が、加害状況について真摯に取り上げた番組に対して偏向しているなどと批判するのは、とてもおかしい。

 1973年に厚生省が発表した統計によれば、1937年から1945年までに台湾総督府が徴用した軍属は126,750名、1942年から1945年までに従軍した軍人は80,433名の合計207,083名が日本軍に従軍し、その内15%にあたる30,304名が戦死または戦病死している。(ウィキペディア)

 日本が中国に占領され、日本のインフラが整備される一方で、20万人の人が中国が行っている戦争に徴用され、3万人が死亡したとしよう。

 戦争後、中国が、「インフラ整備をしたのだから、加害者という一方的な自虐史観はおかしい。日本人は中国に感謝している」などと無責任なことを言ったとしよう。

 日本の遺族はどう感じるだろうか?

 日本の市民はどう感じるだろうか?

 そう考えれば、答えは明白ではないか?


 日本支配によって、台湾の中にも美味しい思いをした人もいるだろう。インフラ整備や食糧増産もあっただろう。しかし、結局は日本は日本の統治に役立つことをしただけであって、「台湾の市民によかれ」と思ってしたわけではない。

 日本の北朝鮮拉致被害者は、どのくらいの人数ですか?3万人の遺族の思いが残っている国に対して、誠意をもった反省もしないで、何が「自虐史観は改めるべきだ」だ。

 日本政府は、台湾出身の軍人・軍属を戦争被害の補償対象から除外し、元軍人・軍属やその遺族に対して障害年金、遺族年金、恩給、弔慰金、また戦争中の未払い給与、軍事郵便貯金等の支払いを一切行わなった。その後、批判されたため、一時金などが支払われたりしたが、「加害国」としての責任を全うしているとは到底言えない。

 台湾出身の犠牲者にきちんと補償もせず、「一方的に加害者として描くのは自虐史観だ」などとは、本当に腹立たしい言い方だ。

 自虐史観などと叫ぶ前に、「棄てられた皇軍兵士たち―台湾人元日本兵―」(http://kohnotoshihiko.com/weblog_ja03.htm)を真摯に読むべきだ。


 ちなみに、台湾出身の軍人軍属は、徴兵制になるまでは、志願制だった。しかし、その志願の実体は、強制的なものであった。

 「元台湾特別志願兵の戦時東ティモール体験-陳千武氏ヒアリング記録-」(http://dspace.wul.waseda.ac.jp/dspace/bitstream/2065/13075/1/AjiaTaiheiyo_07_00_004_Goto.pdf)に次のような聞き取り内容が記載されている。
 
 
 陳千武:このことについて,よく聞かれます。今の若い人,戦後日本植民地時代のことを知らない台湾の人も,皆が非常に不思議に思うんですね。どうして日本の兵隊に志願するのかと言うんですよ。当時,戦争が激しくなったとき,日本としては兵力が,いくらあっても足りないという頃でした。それで台湾特別志願兵制度が施行されたのは, 1942年4月,私が製麻会社の監督をやっていたときでした。しかし台湾の志願兵は特別志願兵で,普通の志願兵とは違うわけです。なぜ特別かというと,当時の村長(保正)と隣組の組長(甲長)がある朝,家にやってきまして, 「今日は,青年の集会があるから,町の廟に何時までに来てくれ」と言うわけです。それで,その廟に行ったのですが,青年がずらっと長い列をつくっていまして,私は後ろに並んで順番を待ち,廟の入り口においてある机の前で甲長や保正,そして警察が非常に厳重な状況で立っています。後ろからずっと並んで順番が来たとき,兵役係りが聞くんです。
「君,志願したか?」
「何をですか?」
「志願兵だよ。」
「志願していません。」
兵役係りは「そうか,それならいい。ここに君の志願書がある。ここへ栂印するように」というわけで,栂印を押したんです。 「君が兵を志願したことは,これで書類が整った」というわけで,これが特別という状況です。



★冒頭の写真は、横井昭一さん、小野田寛郎さんに続けて、発見された日本軍兵士中村輝夫さん。中村さんは、小野田さん発見から約10か月後の1974年12月にモロタイ島で発見された元日本兵だが、台湾出身だったため、日本ではその発見はほとんど報道されることがなかったし、少なくとも、横井、小野田両氏よりも圧倒的に知名度が低い。本来であれば、他国市民が日本のために戦争後も「戦って」いたのだから、大きく取り上げるべきだ。少なくとも、「自虐史観」のマスメディアなら、大きく取り上げたはずだが、不思議なことに、当時、ほとんど、取り上げられなかった。「自虐史観」反対論者、マスメディア(左)偏向論者の皆さん、これってどういうこと?




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