情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

自立して生きるためには、死なねばならない矛盾~中野麻美弁護士の講演より

2007-10-24 06:52:27 | そのほか情報流通(ほかにこんな問題が)
「自立して生きるためには、死なねばならない矛盾」~この小見出しが目に入ったとき、どういう意味か分からなかったが、読み進めると非常に納得できたし、そもそも労働法がいかにあるべきか、そしてあるべき労働法を達成するにはいかに労働者が共闘しないといけないか、が分かりやすく説明してあったので、中野麻美弁護士の講演の一部を勝手に孫引きさせていただきます。中野先生、マスコミ市民の編集長、「関心を持たれた方は、マスコミ市民のバックナンバーを買っていただく」ということでよろしく!

■■マスコミ市民9月号掲載「労働の商品化と雇用の液状化」~労働現場から見た格差社会~引用開始■■

 本年の5月21日付で、規制改革会議の「再チャレンジワーキンググループ労働タスクフォース」というワーキンググループが、「労働法制の抜本的見直しを」という「報告書」( ※1)をだしました。

 この「報告書」は、OECDの『報告書』(※2「対日経済審査報告書」)が示す考えと、非常に共適する部分があります。「報告書」では、「一部に残存する神話のように、労働者の権利を強めれば、その労働者の保護がはかられるという考え方は誤っている。不用意に最低賃金を引上げることは、その賃金に見合う生産性を発揮できない労働者の失業をもたらし、そのような人びとの生活にかえって困窮をもたらす」「過度に女性労働者の権利を強化すると、かえって最初から雇用を手控えるような結果を招くなどの副作用を生じる可能性もある」「正規採用の解雇を厳しく規制することは、非正規雇用へのシフトを企業に誘発し、労働者の地位を、全体としてより脆弱なものとする結果を導く」「一定期間派遣労働を継続したら雇用の申し込みを使用者に義務付けることは、正規労働者を増やすどころか派遣労働者の期限前の派遣取り止めを誘発し、派遣労働者の地位を危うくする」「長時間労働に問題があるからと言って、画一的な労働時間上限規制を導入することは、脱法行為を誘発するのみならず、自由な意思で、適正で十分な対価給付を得て働く労働者の利益と・・・使用者の利益の双方を増進する機会を無理やりに放棄させる」「真の労働者の保護は権利の強化によるものではなく、むしろ望まない契約を押しつけられることがなく、知ることのできない隠された事情のない契約を自らの自由な意思で選び取れるようにする環境を整備すること・・・」などといっています。

 しかしながら、「労働者が望まない契約を押しつけられることがないような環境」など、あり得るでしょうか。フィラデルフィア宣言(※3)で掲げた「労働は商品ではない」という原則は、「労働は、商品よりもはるかに値崩れしやすいため、競争を抑制する原理を働かせなければ社会は破滅的な影響を及ぼされる」という、人類がえた歴史の教訓です。

 私は、「暖冬でたくさんできた白菜を土に埋め戻すのを『もったいない』と考えるかもしれないが、商品は自分の値が下落し始めると在庫や生産レベルで調整し、市場に放出する量をコントロールできるが、人間は自然人だから、自分の労働の値段が下がってきたときに、自分自身を冷凍庫に入れて冬眠するわけにはいかない。その日その日を食べていかなければいけないし、子どものためにミルクを買わねばならないときには、どんな不利な契約でも結ばなければならない」という話をよくします。労働者は、常に「望まない契約」を押しつけられているのであり、「知ることのできない隠された事情のない契約」などあり得ないと思います。

 規制緩和政策とは、国境を越えて瞬時に移動していく資本が、人間と自然とを収奪していく自由を、その国のレベルで与える政策です。「労働タスクフォース」の人たちは、規制緩和政策の中で生じたネガティブな影響を、「労働は商品ではない」という原点から出発することなく、それを無条件で受け入れています。「労働者の権利を強化すれば必ずしも労働者の望む方向にはならない」という考え方は、人間の自然人たる本質をなぎ倒していく暴力的な柔術です。 彼らは、どのくらい深刻な実体かを、まったく見ようとしません。「最低賃金を上げれば、それに見合うような生産性を上げられない労働者が職を失う」などと言っていますが、そもそも最低賃金の水準で生きていけると考えているのでしょうか。最低賃金水準で生活保護給付分の所得を得ようと思えば、たとえば複数の子どもを1人親で育てている家庭に給付される生活保護給付は300万円くらいですから、最低賃金の時給700円で稼ぐには4000数百時間働かないとなりません。「過労死のデッドライン」(※4)は3000時間から3100時間と言われていますので、"自立して生きていこうと思えば死ななければならない”という矛盾になるのです。

■■引用終了■■


※1:http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/publication/2007/0521/item070521_01.pdf

※2:2006年版http://www.oecdtokyo2.org/pdf/theme_pdf/macroeconomics_pdf/20060720japansurvey.pdf
   2005年版http://www.oecdtokyo2.org/pdf/theme_pdf/macroeconomics_pdf/20050120jpnsurvey.pdf

※3:http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/standards/constitution.htm#philadelphia
(1条)
総会は、この機関の基礎となっている根本原則、特に次のことを再確認する。
 (a) 労働は、商品ではない。
 (b) 表現及び結社の自由は、不断の進歩のために欠くことができない。
 (c) 一部の貧困は、全体の繁栄にとって危険である。
 (d) 欠乏に対する戦は、各国内における不屈の勇気をもって、且つ、労働者及び使用者の代表者が、政府の代表者と同等の地位において、一般の福祉を増進するために自由な討議及び民主的な決定にともに参加する継続的且つ協調的な国際的努力によって、遂行することを要する。

※4:http://homepage2.nifty.com/karousirenrakukai/15-24=ninteikijun7nenburikaiteie.htm








★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
★「News for the People in Japanを広めることこそ日本の民主化実現への有効な手段だ(笑)」(ヤメ蚊)
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